2013 Fiscal Year Research-status Report
難治性良性脳腫瘍に対するアクアポリン1を標的とした血管新生抑制の治療戦略
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25462248
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
林 康彦 金沢大学, 大学病院, 講師 (50324124)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 脳腫瘍 / 血管新生 / アクアポーリン / 解糖系 / 血管内皮細胞 |
Research Abstract |
血管新生は脳腫瘍の増大に関わる因子としては最も重要である。細胞膜に発現する選択的水チャンネルであるAquaporin (AQP) -1 を血管新生に関わる因子として着目して、脳腫瘍の外科的に摘出した標本に関して免疫染色を行った。良性脳腫瘍ではその血管内皮細胞において強い発現を認める一方で、悪性脳腫瘍においては全くその発現を認めないという結果を得た。これは良性脳腫瘍では髄膜腫、下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫などいずれもにその発現を認めるものの、悪性脳腫瘍では悪性グリオーマ、転移性脳腫瘍などいずれもにその発現は認められなかった。これは細胞分裂の指標であるKi-67の値とも負の相関を示した。以前のわれわれの実験データから脳内における唯一のエネルギー源であるグルコースを代謝する解糖系が活性化されることにより生じる細胞性浮腫を緩和するためにAQP-1が生じると考えられている。乳酸脱水素酵素などの解糖系酵素も血管内皮細胞には良性、悪性を問わずに発現しており、良性脳腫瘍で血管新生を維持するためにAQP-1を発現しているのは理解できるが、より増殖の盛んな悪性脳腫瘍で血管内皮細胞において敢えてAQP-1を発現していないことは予想に反する結果であった。血管内皮細胞のturnoverを活発にすることで血管新生をより活発にすることは、腫瘍の中心に大きな壊死組織を有し、周辺に向かって進展する悪性腫瘍の特徴を説明する事が可能と思われるものの、その詳細な機序に関してはまだ不明である。しかしながらこれらの結果はAQP-1を制御する因子が血管新生に大きく関わっている事を示しており、今後AQP-1さらにはそれに関与する因子の制御が血管新生を抑制することとなることが脳腫瘍の治療、とくに手術が困難な難治性腫瘍に対する新たな治療戦略として確立されるために更に研究を進めていくことになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今後の実験に用いる分子生物学的な手法の修得にやや手間取り研究遂行がやや困難となることがあった。 実験の最初の段階としての脳腫瘍標本の収集(当初の目的より多く施行したため)や免疫組織染色の条件設定においてもなかなか結果が一定せず遂行がやや遅れています。
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Strategy for Future Research Activity |
脳血管内皮細胞にAQP-1をtransfectして過剰発現させたものが実際にwild typeと比べて過剰に増殖するかをin vitro の系を用いてグルコースの量を調節して観察する。また逆にAQP-1をsiRNAを作成して十分に抑制した脳血管内皮細胞も同様な条件にて増殖がどのようになるかを観察する。さらにこれらの解糖系の程度も実際に細胞内の乳酸や乳酸脱水素酵素を測定して評価する。Matrigel Invasion Assayを用いた細胞浸潤や遊走に関する評価を行う。AQP-1遺伝子上流域に発現するE-boxやAP-1などを抑制することで、脳血管内皮細胞の増殖や遊走を抑制することができるか、また新規のAQP-1 blockerであるarylsulphonamide AqB013を用いて脳血管内皮細胞の増殖抑制を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験のために必要な培養細胞が、培養時の細胞接地面のコーテイング条件が安定しなかったために実際に使用できる目処が立つまでにやや時間を要した。それにより、培養に必要な物品の購入が遅れ、更にその培養細胞自体の購入費用が次年度にまわった。 他には購入予定であった実験用品(抗体などの消耗品)が業者の製造中止による代替えの在庫不足などにより一部の納入が著しく遅れており、そのために本年度使用予定分が次年度使用額にまわった。 細胞自体の要求性のために培地に加えるもの等が新たに必要となったことや、特殊コーテイングが必要となったために、それらの購入費用にあてることとする。また、今後それらの培養細胞を使用した、または手術材料を使用した実験のために申請してあった備品や消耗品を購入する予定である。
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Research Products
(10 results)