2013 Fiscal Year Research-status Report
カーボンナノチューブによる骨芽細胞の石灰化促進メカニズムの解明
Project/Area Number |
25462365
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
羽二生 久夫 信州大学, 医学部, 講師 (30252050)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
薄井 雄企 信州大学, エキゾチック・ナノカーボンの創成と応用プロジェクト拠点, 准教授 (00467169)
塚原 完 金沢医科大学, 医学部, 講師 (00529943)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 骨・軟骨代謝学 / バイオマテリアル |
Research Abstract |
CNTの直接的作用;我々はCNTの細胞への直接的影響を見るためにこれまでの研究でCNTを取り込む細胞と取り込まない細胞とを区別できることを明らかにしてきた。この細胞差の違いを用いてプロテオミクスによる分析をしたところ、ある1つのタンパク質(A)が候補タンパク質としてリストアップされた。一方、MC3T3-E1細胞でも石灰化処理の前後でCNTの取り込みに差があることが明らかになったため、この石灰化処理前後のMC3T3-E1細胞と別の分化状態で取り込み差があったBEAS-2B細胞のマイクロアレイ解析を行い、共通する遺伝子として(B)がリストされた。 CNTの間接的作用;我々はまず、MC3T3-E1細胞のカルシウムセンシングレセプター(CaSR)の発現をmRNAとタンパク質レベルで調べた。その結果、量的には多くはないが発現が確認された。そこで、まず、CNTが入っていない状態でCa濃度を高くした培養液をCaSRのインヒビターで前処理したMC3T3-E1細胞に与え、CNTと同じ分化誘導促進の抑制を確認した。しかし、CaCl2で高濃度にした培養液では骨芽細胞への分化誘導は起こらず、その状態での阻害剤は何ら影響を与えなかった。このため、現時点ではCNTの骨芽細胞への分化誘導促進効果は少なくともCaSRを経由した経路ではないと判断している。 MC3T3-E1細胞の分化誘導;当初計画した研究を行っている中で骨芽細胞の培養で石灰化培地による分化誘導を行う過程でしばしば遺伝子発現が不安定であった。このため、その原因を検討したところ、石灰化培地で加えるアスコルビン酸がもともとαMEM培地に加えられているということが分かった。調べたところ、骨芽細胞のアスコルビン酸による細胞分化への影響はきちんと調べられていないままにアスコルビン酸の入っている培地と入っていない培地で石灰化の実験が行われている事がわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CNTによる骨芽細胞の分化促進の直接的作用については特許などの関係から特定のタンパク質名は現状において記載できないものの2つの新たなCNTの認識レセプターが候補として絞り込まれている。この膜レセプターが実際にCNTの取り込みに直接、関与しているかをsiRNA実験で確認段階となっており、その後、このレセプターを介する細胞の分化誘導促進効果を確認することとなっている。また、間接的な作用は一番の候補であったマイナスにチャージしたCNTによるCaイオンの局所的な濃度上昇による分化誘導メカニズムのキーとなると考えていたCaSRによる分化誘導の可能性は否定され、しかも、培養液中のCa濃度の上昇による骨芽細胞の分化誘導もMC3T3-E1細胞を使った実験では確認できなかった。このため、少なくともCNTのCaイオン濃度の局所的濃度上昇による間接的な分化誘導の可能性はかなり低いと判断できる。ただし、Caイオン以外の他のファクターの可能性は現状では残っているものの、ほぼ、計画通りのスケジュールで進んでいる。その上で骨芽細胞の細胞実験における基本的な条件検討にも着手しており、この部分は予定以上の成果と評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、スピンオフして出てきた研究テーマであるアスコルビン酸による骨芽細胞の分化誘導能を検証する。なぜなら、我々がCNTの骨芽細胞への分化誘導能を評価してきた培養条件のαMEM培地にはもともとアスコルビン酸が含まれている。MC3T3-E1細胞を日本で提供しているCell Bankもアスコルビン酸が入っているαMEM培地による培養を推奨している。しかし、アメリカでMC3T3-E1細胞を供給しているATCCは培養液をわざわざアスコルビン酸の入っていないαMEM培地(GIBCO)を指定している。石灰化処理にアスコルビン酸を加えるという現在の流れはこの培地の違いを無視しており、この基礎的条件を正しく設定しないことにはこれまでの分化誘導と何が同じで何が違うのかを評価することが出来ない。よって、アスコルビン酸が骨芽細胞の分化誘導研究にどのような影響を与えるか確認する(レターにして発表する予定)。その上でCNTの認識レセプターの特定を行い、このレセプターが分化誘導に直接関与しているかどうかを確認する。siRNA実験で検証する。その一方で細胞内での分化誘導遺伝子がどのように変化しているかはRT2 Profiler PCR Array(QIAGEN)でスクリーニングし、この遺伝子変化と前述したレセプターに接点があるかをパスウェイ解析で検証する。もし、既知の情報でこのレセプターと既知遺伝子の発現変化が結びつかない場合はそのミッシングリングを繋ぐ遺伝子の同定を行う予定である。一方、間接的影響として可能性が残っているCNT自体が石灰化の核になる可能性は石灰化を起こさない繊維芽細胞でCNTを長期に石灰化培地でインキュベートしてアリザリンレッド染色で染まることがないかを検討し、CNTが骨芽細胞の分化誘導を促進する場を作る役割の可否を明らかにする。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Culture medium type affects endocytosis of multi-walled carbon nanotubes in BEAS-2B cells and subsequent biological response.2013
Author(s)
Haniu H, Saito N, Matsuda Y, Tsukahara T, Maruyama K, Usui Y, Aoki K, Takanashi S, Kobayashi S, Nomura H, Okamoto M, Shimizu M, Kato H.
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Journal Title
Toxicol In Vitro.
Volume: 27
Pages: 1679-85
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Endocytosis of MWCNT in BEAS-2B cells are affected by the culture medium type.2013
Author(s)
Hisao Haniu, Naoto Saito, Yoshikazu Matsuda, Kayo Maruyama, Tamotsu Tsukahara, Yuki Usui, Kaoru Aoki, Seiji Takanashi, Shinsuke Kobayashi, Hiroki Nomura, Masanori Okamoto, Masayuki Shimizu, Hiroyuki Kato.
Organizer
6th International Symposium on Nanotechnology, Occupational and Environmental Health
Place of Presentation
愛知県名古屋市
Year and Date
20131029-20131030
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[Presentation] An innovative method to evaluate biodistribution and kinetics of carbon nanotubes using CNT peapods2013
Author(s)
Shinsuke Kobayashi, Shuji Tsuruoka, Yuki Usui, Hisao Haniu, Kaoru Aoki, Norio Ishigaki, Masayuki Shimizu, Seiji Takanashi, Masanori Okamoto, Hiroki Nomura, Hiroyuki Kato, Naoto Saito
Organizer
6th International Symposium on Nanotechnology, Occupational and Environmental Health
Place of Presentation
愛知県名古屋市
Year and Date
20131029-20131030
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