2013 Fiscal Year Research-status Report
卵巣癌細胞の抗がん剤耐性における糖脂質の役割の解明
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25462610
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田中 京子 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (10286536)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩森 正男 近畿大学, 理工学部, 教授 (90110022)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 細胞膜 / 糖脂質 / 糖鎖特異的抗体 / 免疫検出 / ガングリオシド / ルイス抗原 / 抗がん剤 / ABC-トランスポーター |
Research Abstract |
4種類のヒト卵巣癌由来培養細胞を用い、抗がん剤感受性と抗がん剤排出に関わるABC-トランスポーター遺伝子および細胞膜脂質の関係を調べた。研究に用いた細胞は類内膜腺癌由来HNOA、明細胞腺癌由来RMG-1、漿液性腺癌由来KF28、粘膜性腺癌由来HMKOAの4種類である。ABC-トランスポーター遺伝子の内、MDR1はRMG-1のみに発現していたが、MRP1とMRP2はすべての細胞に発現していた。細胞膜脂質成分のうち、コレステロールとリン脂質については、4種類の細胞間で大きな違いは見られないが、糖脂質含有量に違いが見られた。特に、GM3はRMG-1の含有量が他の細胞の5倍以上であった。また、中性糖脂質LacCerとGb3Cerはすべての細胞に高濃度に含まれていたが、KF28における4糖以上の糖脂質の含有量は少なく、さらに、KF28のみ、ルイス血液型抗原は欠損していた。 続いて、6種類の抗がん剤、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、5-フルオロウラシル、イリノテカンの作用を4種類の細胞間で比較したところ、パクリタキセル、ドセタキセルの感受性に大きな違いが見られた。両抗がん剤に対し、KF28が最も感受性であり、RMG-1が最も耐性であった。RMG-1には、MDR1遺伝子が発現しており、GM3含有量が高いことから、細胞膜ラフトに分布するMDR1遺伝子産物、P-糖蛋白質の活性をGM3が高め、疎水性抗癌剤の排出促進により耐性化している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4種類の卵巣癌細胞株、類内膜腺癌、明細胞腺癌、漿液性腺癌、粘液性腺癌の内、漿液性腺癌由来細胞がドセタキセルとパクリタキセルに対する感受性が最も高かった。臨床においても漿液性腺癌患者の抗がん剤感受性が高く、今回用いられた培養細胞は患者の抗がん剤感受性を反映していると思われる。4種類の卵巣癌細胞のABC-トランスポーター遺伝子、細胞膜脂質を比較することにより、疎水性抗がん剤の感受性と耐性に関わる因子として、MDR1とGM3ガングリオシドの関与を予想した。細胞膜ラフトに分布するABC-トランスポーターの活性をGM3が高めることにより、抗がん剤の排出を促進している事が考えられる。研究は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
漿液性卵巣癌患者の抗がん剤感受性は、抗がん剤の複数回の投与により変化し、耐性化することが知られている。培養細胞においても、パクリタキセルをIC50濃度以下で培養することにより耐性化する。耐性化した細胞にはMDR1が発現していることから、遺伝子を誘導する仕組みについて調べるとともに、糖脂質の合成阻害剤、あるいは糖脂質の投与によるパクリタキセルに対する感受性の変化から糖脂質の役割を明らかにし、治療効果を高めるための方策を探りたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の実験計画を鑑みて、効率的に物品の調達を行ったため。 次年度の研究費と合わせて卵巣癌細胞の抗がん剤耐性における糖脂質の役割の解明のための細胞株、実験資材、消耗品の購入にあてる予定。
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