2013 Fiscal Year Research-status Report
急性感音難聴の病態と治療のプロテオーム解析 -質量分析計を用いた解析-
Project/Area Number |
25462640
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
前田 幸英 岡山大学, 大学病院, 助教 (00423327)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片岡 祐子 岡山大学, 大学病院, 助教 (10362972)
福島 邦博 岡山大学, 大学病院, 講師 (50284112)
假谷 伸 岡山大学, 大学病院, 講師 (10274226)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | デキサメタゾン / 急性感音難聴 / 鼓室内投与 / iTRAQ / 質量分析計 / プロテオーム / 急性音響障害モデルマウス / ウエスタンブロット |
Research Abstract |
当初計画では初年度には難聴発症させたモデルマウスでのプロテオーム解析から検討を始める方針であったが、検討の結果デキサメタゾンをより高濃度に、局所に限局して投与するには鼓室内局所投与がより適していることが判ったので、マウス鼓室内へデキサメタゾンを局所投与して、発現量が増減する蛋白質を質量分析計をもちいて検索した。6週齢雌C57/BL6マウスの鼓室内へデキサメタゾン(24mg/ml,n=15)またはコントロール生食(n=16)を投与した。12時間後に蝸牛組織を剖出して、総蛋白を抽出してトリプシン処理した後、isobaric Tag for Relative and Absolute Quantitation 試薬で標識した。質量分析計で、内耳組織で発現する蛋白質の質量スペクトラムを検出し、ProteinPilot 4.0 softwareを用いてSwissprot databaseにもとづいて網羅的に検討した。その結果3065の質量スペクトラムから247種類の蛋白質が同定された。デキサメタゾン投与によって有意(p<0.01)に発現量が増加する蛋白質としてはmyelin protein zero (Mpz), neurofilament medium polypeptide (Nefm), Ras-related protein Rab-1A, prostaglandin-D2 synthase, N(G),N(G)-dimethylarginine dimethylaminohydrolase 1, Lamin-B1, mitochondrial ATP synthase subunit beta, mitochondrial cytochrome c oxidase subunit 5A, mitochondrial elongation factor Tuの9種類が同定され、有意に発現量が低下する蛋白質としてはheat shock 70 kDa protein 5,apolipoprotein A-Iの2種類が同定された。Mpz,Nefmは遺伝性難聴に関連する蛋白質であるがこれらについてはデキサメタゾン投与で内耳で発現増加することが、ウエスタンブロットでも確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画書では、平成25年度、26年度の目標はデキサメタゾン鼓室内投与か、急性音響障害モデルマウスへの腹腔内投与によって、発現量が変化する蛋白質を質量分析計による解析によって同定することであった。平成25年度中にデキサメタゾン鼓室内投与によってmyelin protein zero (Mpz), neurofilament medium polypeptide (Nefm), Ras-related protein Rab-1A, prostaglandin-D2 synthase, N(G),N(G)-dimethylarginine dimethylaminohydrolase 1, Lamin-B1, mitochondrial ATP synthase subunit beta, mitochondrial cytochrome c oxidase subunit 5A, mitochondrial elongation factor Tuといった蛋白質が増加し、heat shock 70 kDa protein 5,apolipoprotein A-Iといった蛋白質が減少することを具体的に解明できた。同定された蛋白質にはMpz,Nefmといった、難聴と深く関連することが報告されている蛋白質もふくまれており、これらについてはウエスタンブロットによる確認実験を行うことができた。また、in vivo内耳からの蛋白質の質量分析計の網羅的検出を実行し、247種類の蛋白質が検出されたことにより、質量分析計によりin vivo内耳組織から検出される蛋白質の全体的傾向があきらかになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度以降には、平成25年度にデキサメタゾン鼓質内投与により内耳で発現変化することが質量分析計で明らかになった11種類の蛋白質から、内耳の聴覚機能との関連が深く示唆されるものを選定して、急性音響障害モデルマウスにおいてもデキサメタゾン投与により発現が変化することをウエスタンブロット法で確認する。またこれらの蛋白質については免疫染色法で、内耳での局在を明らかにして聴覚機能との関連を考察する。一方、急性音響障害モデルマウスへデキサメタゾン腹腔内投与においても、質量分析計による蛋白質網羅的検出を行うことを計画する。また平成25年度の段階で、デキサメタゾン鼓質内投与により内耳で発現変化する蛋白質を具体的に同定することに成功したので、これらの蛋白質等の発現の解析結果を、遺伝子発現レベルでの解析結果により補強してゆくことも有効と考えられる。平成26年度には、当初の研究計画書に含まれていた内容に沿って、質量分析計による解析で、デキサメタゾン投与により増減すると同定された蛋白質のデータを確認するためのウエスタンブロットの実験に必要な経費を予定している。また、マウス内耳組織における免疫染色法に必要な経費も含まれる。また平成25年度の段階ですでにある程度のデータが得られ、ウエスタンブロット、免疫染色についても予備実験では確認がとれつつあるので、平成26年度中に英文論文を執筆、校正、掲載するための経費が含まれる。平成26年度中の研究の進展状況に応じて情報収集、発表の為の国内外での学会発表旅費を考慮する。また、デキサメタゾン投与により内耳で発現が増減する蛋白質を同定すること自体には既に成功しているので、これらのデータをcDNAマイクロアレイ、リアルタイムPCRといった遺伝子発現レベルでのデータで補強してゆくことも考慮している。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
岡山大学臨床研究棟の耐震工事にともなう実験室移転のため、計画した実験の一部を変更する必要が生じたため、平成25年度の全予算をすべて消化せず次年度に繰り越すことが必要となった。 平成25年度から26年度への繰り越し金額は、平成26年度の計画に挙げたウエスタンブロット、免疫染色の試薬代として使用する。
|