2013 Fiscal Year Research-status Report
再生医療による人工腸管の開発-iPS細胞を用いた人工腸管作成のための基礎研究
Project/Area Number |
25462782
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
吉田 篤史 川崎医科大学, 医学部, 講師 (10363219)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植村 貞繁 川崎医科大学, 医学部, 教授 (40160220)
久山 寿子 川崎医科大学, 医学部, 助教 (90548645)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | iPS cell / tissue engineering / short bowel syndrome / smooth muscle / activin A |
Research Abstract |
まず、最初のステップとして、1)未分化なiPS細胞の単離方法の確立を目指した。iPS細胞は、代謝活性が高く、容易に予定外の細胞へ分化してしまう特徴を持つ。未分化で分化多能性を保ったiPS細胞の継代培養方法を確立することは、分化誘導の前段階として極めて重要なポイントである。その継代方法は、フィーダー細胞と共培養することが一般的である。フィーダー細胞の分泌する数種類の成長因子の違いによりiPS細胞の状態が変わるので、フィーダー細胞として、マウス胎仔線維芽細胞とSNL細胞を使用することでiPS細胞の増殖能の違いを得た。 フィーダー細胞と共培養した場合、次のステップでの胚様体形成時に、フィーダー細胞が邪魔になるため、未分化で均一なiPS細胞の細胞集団を作るため必要がある。共培養後、フィーダー細胞のない環境でiPS細胞を継代培養するが、フィーダー細胞がなくなると増殖能が落ちるため、良好なフィーダー細胞の無い環境下の継代も重要である。BIO [(2'Z,3'E)-6-Bromoindirubin-3'-oxime]あるいはpuromycinを添加して、より純度の高い未分化なiPS細胞の単離を行った。 次のステップとして、2)腸管分化に有効な胚様体の作製を調査した。これはES細胞あるいはiPS細胞から作製される球状の構造物であり、一見どれでも同じようにみえるが、その作製条件により、最終的に分化していく組織が異なるため、腸管への分化の至適条件を探索する必要があるが、胚様体の環境を変化させる因子として、1)細胞数、2)培養容器、3)培養液、成長因子など、多岐にわたる。これまで、Hanging Drop法、丸底あるいはV字型の低接着性96ウェルプレート、マイクロアレイなどを使用し、細胞数を変化させながら、胚様体の形成を行ったが、現時点では腸管様構造物へ分化誘導に有効な条件は得られていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
未分化で分化多能性を保ったiPS細胞だけを多量に作る必要があるが、良好な細胞環境を作成することが難しく、少ない細胞数では増殖能が落ち、多い細胞数では容易に分化するため、至適細胞数で毎日培地の交換、2,3日で継代する必要がある。また、購入するiPS細胞のロットにより、増殖する能力にも差がある。フィーダー細胞のない環境では、さらに細胞増殖が悪くなる、あるいは分化してしっていることがあり、良好な環境のコントロールが難しい。 良好なiPS細胞コロニーでも、その中心を辺縁では細胞環境が違うことは明らかであるが、細胞一つ一つが完全に均一な環境できないことが、その後の分化に影響を与えている可能性もある。腸管は三胚葉成分があることから、ある程度異なる分化段階でもよい可能性もあり、iPSの継代条件だけでも難しい点は多くある。 さらに、2ステップでの胚様体の環境を変化させる因子として、1)細胞数、2)培養容器、3)培養液、成長因子など、多岐にわたるため、至適環境を1つに絞り込むことは大変難しい。 上記のようにiPS細胞培養を用いた方法でも多くの克服すべき問題があるが、その他の方法を含めても、人工腸管は世界でだれも成功しておらず、それだけ難しいといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床的に使用できる人工腸管はこれまで誰も成功してない大変難しい分野であるが、奈良県立医大のグループと我々は、iPS細胞を用いて、蠕動する組織の作製に成功しており、各ステップの方法、使用する細胞、培地、培養液、成長因子などを細かく吟味してきたので、これまでに一定の進歩ができた。 iPS細胞を用いた研究では、心臓、神経、網膜、膵臓β細胞などが、、一歩進んだ研究成果をえており、これらの方法からヒントを得て、打開策を見出すことで対応する。具体的には、近い分野では、同じ内胚葉系由来の膵臓β細胞では、一番有益な情報が得られる可能性が高いと考えている。 今年度はステップ2の胚様体形成時に添加する成長因子の量、タイミングを変えて調べていきたいと思う。 以前はヒトiPS細胞の継代はマウスのものより難しかったため、われわれはマウスのiPS細胞を使用しているが、現在、iPS研究施設の多くがヒトのiPSを使用している。臨床使用のため、研究の中心がヒトのIPS細胞となっており、継代方法について進歩が著しい。以上より、われわれもヒトIPS細胞の導入も検討したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年は初年度であり、iPS細胞の培養の初期準備のものを詳細に吟味して購入物をしぼったことと、研究の最終時期には、生成物の評価として、抗体、試薬など高価なものを多数必要とすることの2点から、初年度は使用額を減らして、次年度へ繰り越すことにした。 細胞、培地、成長因子、培養容器の購入を中心とするが、研究の進行により、細胞評価として、蛍光抗体法のための試薬、抗体などを順次取り揃えていく予定である。
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Research Products
(2 results)