2014 Fiscal Year Research-status Report
骨髄幹細胞由来培養細胞上清を用いた放射線性皮膚炎治療法の研究
Project/Area Number |
25463080
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
西川 雅也 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (10635593)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 実 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00151803) [Withdrawn]
山本 憲幸 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60378156)
古江 浩樹 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (40567012)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 放射線性皮膚炎 / 培養上清 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在までにラット大腿部への放射線照射を35Gy行い、放射線性皮膚炎の動物モデルは完成している。病理組織標本では、既存の報告どおり上皮組織の肥厚が認められ、また、間質組織は結合組織が増加している像が認められた。さらに、トルイジンブルー染色にて肥満細胞が増加していることも明らかにした。 しかしながら実験結果は仮説と異なり、培養上清は放射線性皮膚炎に明らかな効果は認められなかった。そこで、平成26年度からは本疾患の病態解析を行っている。現在、放射線性皮膚炎の病理組織学的解析を行っている。放射線照射の効果には、細胞内の主に水に作用することにより遊離基(free radical)を発生させ,これが DNA を損傷する間接作用がある。しかしながら、これらは生体組織内に活性酸素を生じ、線維化を促進することが明らかにされている。そのため、放射線照射による皮膚組織の線維化を調べるために近年報告された線維化のマーカーであるxylosyltransferase-1免疫染色を行ったところ陰性であった。さらに、組織の線維化には、組織内に含まれるタンパク質の中で糖鎖構造を持つプロテオグリカンが増加する報告があり、クロマトグラフィー法にてプロテオグリカン量を定量したところ、放射線照射された皮膚は、プロテオグリカンの量が増加していることが明らかになった。そこで、プロテオグリカンの糖鎖をアミノ酸に付与するChondroitin 4-O-sulfotransferase 1とChondroitin 6-sulfotransferase-1の免疫染色を行ったところ、ともに陰性であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までにラット大腿部への放射線照射を35Gy行い、放射線性皮膚炎の動物モデルは完成している。病理組織標本では、既存の報告どおり上皮組織の肥厚が認められ、また、間質組織は結合組織が増加している像が認められた。さらに、トルイジンブルー染色にて肥満細胞が増加していることも明らかにした。 しかしながら実験結果は仮説と異なり、培養上清は放射線性皮膚炎に明らかな効果は認められなかった。このために,進捗状況としてはやや遅れているとした.
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Strategy for Future Research Activity |
放射線照射の研究は腫瘍に対する効果を調べる研究は多い反面、その副作用に関する研究は少ない。そこで、今後の研究の推進方策は、引き続き放射線性皮膚炎の分子マーカーの探索を行うこととする。 いままでは、放射線照射後の皮膚組織の線維化に関するマーカーを探索していたが、過去の報告と一致するものもあれば不一致のものもあった。この方法で研究を続けていくことは、時間的、資金的な損失と、人的資源が不足している。そこで、動物実験モデルにおける放射線性皮膚炎のタンパク質の発現を網羅的に探索することとする。方法は、二次元電気泳動と質量分析を組み合わせた、プロテオミクス解析によって行う。そして、放射線照射後の皮膚組織と正常皮膚組織を比較し、2つの実験群にてタンパク質の発現を比較する。さらに、RT-PCR法による遺伝子発現とウェスタンブロットによるタンパク質の発現を確認する。その後に、放射線性皮膚炎を発症に関与するタンパク質を抑制する薬剤の選択を行っていく。 頭頸部領域における悪性腫瘍の治療方法ではさまざまな理由で術前放射線治療が適応になる場合があり、その後に再建手術が行われるときもある。そして、放射線照射による組織の変化は皮弁移植などの再建手術に悪影響をおよぼすことは経験的に知られている。そこで、放射線性皮膚炎の分子マーカーを見つけることにより、放射線照射後の再建手術適応の可否を判断する材料の一つを見つけることができると考えられる。 本研究計画は、最終的には放射線性皮膚炎の治療を目指しているが、その病態に関しては明らかにされていない部分が多い。そこで、病態を明らかにし、その問題となっている点を改善することにより治療法を開発していくこととする。
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