2013 Fiscal Year Research-status Report
炎症性骨吸収に対する間葉系幹細胞由来破骨細胞分化抑制ペプチドの作用機序の解明
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25463224
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
高橋 典子 岩手医科大学, 歯学部, 研究員 (60405777)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
帖佐 直幸 岩手医科大学, 歯学部, 講師 (80326694)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 歯周組織再生 / 間葉系幹細胞 / 炎症性骨吸収 / 破骨細胞 / 分化 |
Research Abstract |
間葉系幹細胞(MSC)が骨芽細胞へと分化する過程で発現が減少する遺伝子をDNAマイクロアレイで解析し、分化能を維持する候補因子として機能未知のサイトカイン様ペプチドSCRG1を同定した。組換えヒトSCRG1ペプチド(rhSCRG1)を作製し、rhSCRG1を用いて受容体を検索するとともに、SCRG1誘導性の細胞内シグナル伝達経路について検討した。さらに、初代培養MSCにrhSCRG1を添加して長期培養し、培養後の自己複製能、遊走能ならびに骨分化能を調査した。SCRG1は脊椎動物において高度に保存された遺伝子であるが、その性状や機能は明らかになっていない。SCRG1の性状を詳細に検討した結果、細胞外に分泌されることが示された。すなわち、SCRG1の受容体は細胞膜に存在することが示唆された。IP-Westernで受容体を検索したところ、GPI-anchorを有する膜タンパクBST1を受容体として、integrin β1と複合体を形成することが確認された。BST1/integrin β1複合体はFAK/PI3K経路を活性化し、単球の遊走を促進することが報告されている。そこでMSCにおける遊走能への影響を検討した結果、FAK/PI3K経路を活性化して遊走能を促進するとともに、骨分化をも抑制することが示された。一方、rhSCRG1を添加して長期培養された初代培養MSCはMSCマーカーCD271の発現、自己複製、さらには骨分化能をも長期培養前と比較して遜色なく維持された。CD271陽性のMSCは高い自己複製能と多分化能を有することが報告されている。興味深いことに、rhSCRG1添加によってES細胞や、より未分化なMSCで発現するとされるOct-4の発現も維持された。以上の結果より、SCRG1は受容体BST1を介してMSCの自己複製・遊走・骨分化能といった潜在的な能力を維持することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に従いSCRG1の受容体を検索した結果、BST1を同定することができた。さらにSCRG1が受容体BST1を介して間葉系幹細胞(MSC)の未分化能維持に関与することが明らかとなった。この結果は本年度の研究計画の最大の目的であり、今後の研究を遂行する上で重要である。したがって本年度の達成度は順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は破骨細胞前駆細胞へのSCRG1の影響を探索する。間葉系幹細胞(MSC)で同定されたSCRG1の受容体BST1は破骨細胞前駆細胞様細胞Raw264.7で発現していること、さらにはSCRG1がRaw264.7細胞のRANKLによって誘導される破骨細胞分化を濃度依存的に抑制する事実は既に確認している。したがって、この破骨細胞分化抑制に関与するシグナル伝達系を詳細に検討する。具体的にはMSCで同定されたBST1/integrin/FAK/PI3Kシグナル経路を重点的に解析する。さらに、SCRG1によって誘導されるこれらのシグナル経路がRaw264.7細胞の炎症性サイトカインの発現・分泌にどのように影響するのかを検討する。
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[Journal Article] Novel SCRG1/BST1 axis regulates self-renewal, migration, and osteogenic differentiation potential in mesenchymal stem cells2014
Author(s)
Aomatsu E., Takahashi N., Sawada S., Okubo N., Hasegawa T., Taira M., Miura H., Ishisaki A., Chosa N.
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 4
Pages: 3652
DOI
Peer Reviewed
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