2013 Fiscal Year Research-status Report
歯根膜の初期破壊に関わる非コラーゲン性構造タンパク質について
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25463231
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
深江 允 鶴見大学, 歯学部, 名誉教授 (40064373)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | グリコプロテイン / 段階的分離法 / 質量分析 |
Research Abstract |
今まで、歯周組織の初期破壊は、炎症性刺激によって集積されてきた好中球から分泌される好中球エラスターゼが、コラーゲン線維間に存在する非コラーゲン性タンパク質(NCP)を分解することで起こることを示した。また、市販の好中球エラスターゼによる分解実験で、それらのNCPの中で、Stains-all色素陽性のグリコプロテインと思われる110 kDaの タンパク質が分解されることがわかっている。 このグリコプロテインをブタ正常歯根膜から変性剤下で分離精製することを試みたが、歯根膜NCPは会合しやすく、不溶化が起こり、ことごとく失敗した。そこで、NCPを組織から分離するのに、生理的食塩水で血清由来のタンパク質を最初に分離、除去し、残った歯根膜固有の組織から塩濃度の高い溶液、次に0.5モルEDTA溶液、さらにpH10 のアンモニア溶液でと段階的に抽出した。目的の110kDaのStains-all陽性タンパク質は最後の抽出画分に存在し、このたんぱく質がコラーゲン線維に強固に結合していることを示唆された。この画分の電気泳動後のタンパクバンドを質量分析にかけると、デコリンであることが示唆され、市販のデコリンの抗体を使用して、それを同定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ブタ歯根膜の非コラーゲン性構造タンパク質(NCP)の分離・精製で、歯根膜に含まれる血液成分が多量に含まれ、それらのタンパク質が歯根膜NCPの分離を困難にしていることがわかったので、まず構造タンパク質でイオン結合していると思われるタンパク群を、塩濃度の高い溶液で分離し、その後Caイオンを介して結合していると思われるタンパク群をEDTA溶液で抽出した。 目的の110kDaのタンパク質の収量が少ないように思えたので、さらにアルカリ性溶液を使って抽出することで、確実に目的のタンパク質を他のNCP をあまり含まない状態で抽出分離することができた。 そのタンパク質はデコリンであることが免疫科学的に証明されたが、そのデコリンのコラーゲン線維に対する結合の仕方が他のNCPより強固に結合していることが段階的分離法から示唆された。 質量分析で歯根膜組織からNCPの構造タンパクを抽出するのに、血清蛋白質ばかりでなく、多数の細胞成分が混入し、それがより一層の分離精製を困難にしていることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに分離している歯根膜デコリン画分には、コラーゲン由来と思われる分解産物が依然として含まれるので、さらに各種クロマトグラフィーで精製する。デコリンの分子量が既知であるので、コラーゲンとの分離にはゲル濾過法よりもイオン交換クロマトグラフィー、あるいはアフィニテイークロマトグラフィーが適当と思われる。 またブタ歯根膜組織から好中球エラスターゼを分離精製し、精製したデコリンに対しての分解過程を調べる。 本研究では、110kDaのStains-all陽性のタンパク質がデコリンであることを証明したが、今後の研究ではデコリンを最初に分解するのが、炎症組織中にある3種のプロテアーゼのうちの好中球エラスターゼであることを確認することを目的とする。 そのほかに歯根膜にはTGF-ベータのような生理活性物質が含まれるが、それが、組織内ではデコリンに結合している可能性が示唆されたので、歯根膜中のデコリンの機能についても注目していくつもりである。
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