2013 Fiscal Year Research-status Report
社会的養護における健康教育を基盤とした自立支援方法の開発
Project/Area Number |
25463482
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
桑名 佳代子 宮城大学, 看護学部, 教授 (70154531)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山岸 利次 宮城大学, 看護学部, 准教授 (50352373)
桑名 行雄 東北文化学園大学, 医療福祉学部, 教授 (90258848)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 社会的養護 / 要保護児童 / 家庭養護 / 里親 / 親役割獲得 |
Research Abstract |
「要保護児童の家庭養護における親役割獲得と支援に関する研究」の分析を行った。全国里親大会に参加した両親295組を対象とし、2012年10月に質問紙調査を行い、回収は父親40名、母親38名(回収率:13.6%、12.9%)、そのうちペアは24組(8.1%)であった。本調査は回収率が低く、家庭養護における総合的な実態を明らかにはできなかったが、里親委託を推進するうえで支援が必要な課題が示された。里親志望の動機として「社会的意義」が3割を超え、里親は社会的養護の1つとしての認識が広がりつつあり、実子をもつ親への啓蒙も重要である。ペアで動機をみると、24組中11組が不妊であり、治療を断念して、あるいは治療を選択せず里親を志望した理由が一致していた。不妊治療断念への支援とともに、特別養子縁組か養育里親を望むかのニーズを明確にし、乳幼児期早期の委託が望まれる。委託後の「試し行動」が「大変だった」もの父親43.3%、母親54.8%であり、「試し行動」の意味と対応への支援が個々の家族状況に合わせて必要であり、実子への配慮も重要と示された。「親である」と感じられたのは、母親が「すぐ」~11年、父親は「委託前」~6年と幅があり、実感したエピソードも多様であった。関係性がつくられていないとする親も8名であった。里子に発達上の問題があると回答したものは父親34.5%、母親53.6%であり、里親に養育される子どもの多くが深刻な行動・情緒的問題を抱えていることが示された。里親役割の自己評価は概ね高い評価であったが、SRS-18(心理的ストレス反応尺度)が高いものには、里子に健康上の問題や問題行動を抱えていることが明らかであった。両親のSRS-18合計得点には中等度の正の相関が認められた(r=.44,p<.05)。 25カ国が参加したIFCO 2013 大阪世界大会で得た知見は、今後の研究に活かしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「児童養護施設退所者における社会的自立の支援に関する調査研究」の報告書(平成23年9月)の要望が多く、加筆して増刷した。さらに、社会的養護のあり方を里親・行政・社会的養護経験者が連携して考える「こどもの夢ネットワーク」では、年2回の研修会を継続しており、平成25年度も10月5日と3月2日に所属大学を会場に実施した。研究分担者とともに研修の企画・運営を担当しており、10月は筆者の研究報告(基調講演)をもとにディスカッションした。これらに多くの時間を割いたことから、新たな研究を推進することが遅れている。とくに、「初めて委託を受ける養育里親の親役割獲得と親子関係形成過程の縦断的研究」を進めるに当たっては、複数の里親会会長の理解を得て、十分な倫理的配慮を行う必要がある。これら研究協力者を確保するための手続きと倫理委員会申請に向けて準備を進めているが、対象者を確保するのが困難な状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
「初めて委託を受ける養育里親の親役割獲得と親子関係形成過程の縦断的研究」を推進するには、倫理的に対象者の確保が困難である。そこで、研究計画を変更し、実子をもたない初めて委託を受けた養育里親の両親を対象として、親役割獲得および親子関係形成の過程における戸惑い・困難・喜び・対処の工夫等について、半構成的面接法により記述的に明らかにすることを検討している。早急に倫理委員会に申請し、研究を進めたい。 研究IIとして予定していた「社会的養護における養育体験と社会的自立に関するインタビュー・質問紙調査」については、すでに実施した「児童養護施設退所者における社会的自立の支援に関する調査研究」を詳細に分析することにより実施を見送り、研究IIIの「児童養護施設における社会的自立を目指した健康教育プログラムの検討」の準備に取りかかりたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究協力謝金として120,000円を予定していたが、対象者の確保が困難であったことから使用しなかった。また、IFCO大阪大会参加費として3名分計上していたが、仕事の都合により、2名の参加となったことにより参加費5万円を使用しなかったこと、印刷費は部数を抑えたことにより予定の半額(約5万円)となったことにより、合わせて約20万円の次年度使用額が生じた。 研究協力費は、研究計画を変更することにより、研究協力謝金はそのまま繰り越して使用する。また、対象者の依頼を周辺県に広げることにより、研究協力打合せ、調査旅費として繰り越して使用したい。
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Research Products
(1 results)