Outline of Annual Research Achievements |
わが国では高齢者が住み慣れた地域で健康的な日常生活を送っていくことが課題となっており,その資源としてソーシャル・キャピタル(以下SC)の活用が論じられている.本研究は,高齢者の健康及び生活状況とSCとの関連を明らかにすることを目的とした. 平成27年度は,26年度に実施した「高齢者の健康と生活及びSCの実態」のアンケート調査の分析を行った.その結果,主観的に健康である者80%,孤独感を訴える者10.4%,うつ状態の可能性がある者は35.4%であった.ネットワークが毎日ある者31.8%,互酬性がある者73.2%,信頼がある者は65.4%であった.ネットワークが毎日ある者は,主観的に健康であり,孤独感がなく,毎日外出しているが有意であった.また,うつ状態の可能性がある者は,後期高齢者,一人暮らし,介護認定あり,地域サポートあり,外出頻度が少ない,主観的に健康でない,ネットワークが少ない,信頼できない,互酬性を感じないが有意であった. 27年度は,「先進的なSC活動の実際」について国内4都市の視察を実施した.住民の集う場の設定,団地内のコミュニティビジネスの実施,見守り活動の体制づくり,地域を巻き込んだ徘徊模擬訓練について知ることができた. 本研究は,25年度にA市3地区の高齢者をサポートしている関係機関や住民を対象にグループインタビューを実施した.高齢者の生活を支えるサポートの実際は,〔関係機関と一緒に高齢者の相談体制を整える地域住民〕〔高齢者の見守り〕など6カテゴリーを抽出し,サポートの課題は,〔閉じこもりがちな住民〕〔認知症高齢者への対応〕〔サポートが必要な人の把握〕など7カテゴリーを抽出した. 以上の研究結果から,高齢者の生活支援には,家族,地域の人々,専門機関等からの継続したサポートと,高齢者本人の生きがいとネットワークが高まる社会活動への参加が重要であると示唆された.
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