2013 Fiscal Year Research-status Report
シームレスな緩和ケアを提供するための地域緩和ケア体制の構築に関する研究
Project/Area Number |
25463641
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagano College of Nursing |
Principal Investigator |
柄澤 邦江 長野県看護大学, 看護学部, 講師 (80531748)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大石 ふみ子 長野県看護大学, 看護学部, 教授 (10276876)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 緩和ケア / がん診療連携拠点病院 / 緩和ケアチーム / 訪問看護師 / 地域緩和ケア体制 |
Research Abstract |
平成25年度は、緩和ケアに携わる看護職の緩和ケアに関する取り組みと認識を把握することを目的に調査を実施した。対象者はAがん診療連携拠点病院に勤務し、日常的に緩和ケアに関わっている病棟看護師116名および外来看護師49名と、同じ二次医療圏の訪問看護師43名。調査は平成25年12月に実施した。調査の一部に「緩和ケアに関する医療者の態度評価尺度」(中澤,2008)を用いて、がん患者および家族に対して行っていることを尋ねた。その尺度については、全18項目を「常に行っている」5点~「行っていない」1点の5段階で尋ね、6ドメインの合計点で評価した。自由記述として、緩和ケアを実践する上で、患者さんおよび家族に対して大事にしていること、シームレスな地域緩和ケアが行われる為に訪問看護師(病院看護師)に希望すること、今後の課題について尋ねた。 病棟看護師45名、外来看護師24名、訪問看護師28名から回答を得た。回収率は48.6%。6つのドメインの平均点は、訪問看護師11.6点、病棟看護師11.1点、外来看護師8.8であった。Kruskal Wallisの検定で比較したところ、全18項目で有意な差が認められた。訪問看護師と外来看護師は「コミュニケーション」と「患者・家族のケア」のドメインが高く、病棟看護師は、「疼痛」が最も高かった。また、二次医療圏の緩和ケアについて「在宅療養するための訪問看護が地域で機能している」「在宅療養するためのがん診療連携拠点病院が地域で機能している」などの項目で有意な差がみられた。その他の項目からも、がん診療連携拠点病院の看護職と訪問看護師との認識の差や各業務の特徴など、シームレスな地域緩和ケアを提供するための方策を検討する上での重要な知見を得ることができた。平成26年度の患者調査に向けてさらにデータを分析し計画を慎重に進めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は当初の計画どおり、緩和ケアに携わる看護職の認識と取り組みの現状を把握するため、Aがん拠点病院に勤務する看護職への質問紙調査(調査I)とAがん診療連携拠点病院と同じ二次医療圏の訪問看護ステーションに勤務する訪問看護師への質問紙調査(調査II)を実施した。調査対象者、方法および調査内容等は、計画とおりに実施した。回収率は、病棟看護師40.5%、外来看護師53.1%、訪問看護師65.1%と約半数であったが、日頃緩和ケアに携わっている看護職の認識を捉えることができた。データの分析により、三者の緩和ケアの実施に関する認識や地域緩和ケアに関する課題が明らかになったことから、当年度の目的は到達したと評価できる。その一部を学会発表(示説)することが決定している。1題はがん診療連携拠点病院の病棟看護師と外来看護師の緩和ケアに関する認識を比較したものであり、もう1題は訪問看護師の認識をまとめたものである。三者の比較については、今後論文として公表する予定である。本研究は、シームレスな地域緩和ケアを提供するために、地域で緩和ケアに携わる看護職が今後どのように連携し活動していくことが望ましいかを検討することが必要である。その第一段階として、当年度の調査結果は重要な知見が得られた。 現在、26年度の患者調査(調査III)ための準備を進めており、研究者の打ち合わせも実施している。6月以降に倫理審査を受けたのち、調査を開始する予定である。以上のことから、ほぼ計画どおりに進んでいると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、がん拠点病院の緩和ケア外来に通院するがん患者の緩和ケアに関するニーズを明らかにするため、患者を対象とした無記名自記式質問紙調査(調査III)を実施する。本調査により、がん患者がどのような療養を望んでいるか、どのようなことに困っているのかを明らかにし、看護職の支援や療養環境などの地域緩和についての改善点を検討することが必要である。しかし、対象者が緩和ケア外来に通院しているがん患者であることから、 調査全般にわたり、調査によって不安や精神的な負担をかけないような配慮が必要である。特に調査票は、質問内容の吟味とともに、言葉の表現に十分に留意して作成する。調査の手順としては、研究者がAがん拠点病院の看護部長に調査目的と調査方法等を文書と口頭で説明し、調査協力を依頼する。緩和ケア認定看護師を通して緩和ケア外来の窓口で調査票と封筒を手渡ししてもらう。調査に協力できる場合には、病院の待合室あるいは自宅で記入し、記入後は封筒に入れて投函してもらう。調査内容は、通院している上での不安や困っていること、相談できる場の有無、自宅から病院までの移動時間・移動にかかる費用、かかりつけ医の有無、入院した経験の有無、入院中および退院する際に困ったことの有無、現在の主な疾患、今後どのようなケアを受けたいと望むか、などを尋ねる。また、平成25年度の看護職の調査結果をふまえ、地域緩和ケアについての認識を尋ねる。 調査終了後はデータを分析し、看護職および患者調査の結果をふまえ、シームレスな地域緩和ケアを提供するための方策を検討する。これらの質問紙による調査のみでは現状が捉えられない場合は、可能であれば患者および訪問看護師に対するインタビュー調査を実施し、より現状を把握して課題を明らかにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、調査の結果入力をするための専用のパソコンの購入を計画していたが、WindowsXPのサポート終了年と重なり、購入したいパソコンが入手困難な状況だった。そのため、次年度使用額が生じた。看護職のデータ処理については、既存のパソコンを使用し、データ管理はすべて専用のUSBで行っている。無記名ではあるが、すべて無作為の番号をつけてデータを処理している。 本年度は、無記名の患者調査であるが、疾患名や症状、居住地などにも触れるため、個人が特定されないようにデータの取り扱いには十分に注意する。そのためにも、専用のパソコンを購入し、データ管理したいと考えている。平成25年度でパソコンが購入できなかったことから、繰越した金額を使用したい。
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Research Products
(2 results)