2013 Fiscal Year Research-status Report
ヒトiPS細胞由来再生心筋細胞を用いた難治性不整脈の治療法の開発
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25505004
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
藤田 淳 慶應義塾大学, 医学部, 特任講師 (10306706)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | iPS細胞 / 再生心筋細胞 / HCN4 / 心筋細胞分化 / 不整脈 / 細胞移植療法 / CRISPR / TALEN |
Research Abstract |
本年度はヒトiPS細胞からの心筋細胞分化法を検討し、効率のよい分化法を確立した。また、今後心室への心筋細胞移植のためには梗塞巣の失われた組織を補填できるだけの大量の心筋細胞が必要となるため、スピナーフラスコを用いた浮遊培養系による心筋細胞の大量培養法を確立した。さらに、純化精製することで大量の純度の高い心筋細胞を安定的に作出することに成功した。 刺激伝導系細胞を純化精製するためにヒトのHCN4に蛍光タンパク質をノックインしてマーキングするために、TALENおよびCRISPR/Cas9システムを用いてiPS細胞の遺伝子組み替えを開始した。まずは心筋細胞のみが純化精製されていることを確認するために心筋細胞の特異的転写因子(NKX2-5)のプロモーター下に蛍光蛋白のDsRedをノックインしたヒトiPS細胞を作製し、心筋細胞への分化および蛍光タンパクの発現を確認した。HCN4のプロモーター領域はGCが多く、5'アームの作製のためのPCRに苦労したが、DMSOを用いることで解決した。また、3'アームのクローニングに成功し、ドナーベクターの作製はほぼ終了した。Knock-in遺伝子は必ずしもサイレンシング等の影響で計算通り遺伝子発現がおこらないことも想定されるため、HCN4の3'側に2A配列を用いて蛍光タンパクを発現する融合タンパクの作製も開始し、アームのクローニングにも成功し、蛍光タンパクおよび2A配列を挿入することでドナーベクターを完成させた。さらに、Cel1 assayによりTALENおよびCRISPRのヒトiPS細胞における活性を確認した。 大型動物への精製心筋細胞移植の基礎実験としてマイクロミニブタを用いて免疫抑制剤のプロトコール(タクロリムス、MMF、プレドニゾロンの三剤併用)を確立した。炎症細胞の浸潤をおさえ、異種移植におけるヒトiPS細胞由来心筋細胞の生着を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、TALENを用いてNKX 2-5のプロモーター下に蛍光タンパクのDsRedを相同組み替えによって挿入しヒトiPS細胞を用いたノックインシステムを確立した。この心筋細胞特異的な転写因子であるNKX2-5のプロモーター下でDsRedを発現させることにより、純化精製した心筋細胞のみを抽出することに成功し、心筋細胞の分化誘導、純化度を確認するシステムを確立した。この遺伝子改変技術を用いて、さらにHCN4に対するCRISPRのヒトiPS細胞での酵素活性のチェックおよびノックイン、2A配列を用いた融合タンパクのドナーベクターの作製に成功した。現在既にこのHCN4に対してCRISPRを用いてドナーベクターをエレクトロポレーションし、HCN4のプロモーター下に蛍光タンパクを発現するiPS細胞の作出に取り組んでいる。この刺激伝導系特異的細胞を用いてマイクロアレイ等の解析を行い、さらに乳酸法、FACSを組み合わせた純化精製法を用いて純化した刺激伝導系細胞を選択的に培養する予定である。さらにスピナーフラスコを用いた浮遊培養系で心筋細胞の大量培養に成功し、大量培養した心筋細胞を純化精製することにも成功した。これにより、心筋のリエントリー回路に移植するのに十分な心筋細胞を獲得することに成功した。異種移植での細胞の生着率は低いことが知られており、免疫不全ブタの報告はあるが、家畜ブタのために個体が大きくなるため感染によって死亡するため実験に利用することはできない。そこで本年度は免疫抑制剤の血中濃度(トラフ)を詳細にとることで適切な免疫抑制剤の投与量を確定し、マイクロミニブタを用いたヒトiPS細胞由来心筋細胞生着のための免疫抑制剤のプロトコールを確立した。これにより、次年度以降に確立したモデル動物へ細胞を移植する基礎条件は既に確立されており、実験計画はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
HCN4のプロモーター下に蛍光タンパクをノックインあるいは2A配列で蛍光タンパクを融合したiPS細胞を完成させる。HCN4を発現する細胞においてFACSでの蛍光タンパクの発現強度、タイムラプスイメージングを用いて分化段階における蛍光の発現パターン等を確認することで定量的RT-PCR等の遺伝子発現データと対比させることでHCN4の発現に特異的に蛍光が発生していることを確認する。 未分化iPS細胞から心筋細胞への分化において心房筋細胞、心室筋細胞、刺激伝導系細胞がどのような割合で分化してくるのか、また心筋細胞の成熟過程でどのような割合で変化するのかを観察する。NKX2-5, HCN4のそれぞれの細胞の各分化段階における遺伝子発現をマイクロアレイで確認し、心筋細胞、刺激伝導系細胞の分化に特異的な遺伝子発現を解析する。そのデータをもとにBMP4、Activin、Neureglin、FGF等の培養液への添加因子を調整し各細胞に特異的に分化させるプロトコールを確立する。さらに心筋細胞特異的な代謝機序を利用した乳酸法とFACSにより目的の細胞を特異的に選択培養する。 マイクロミニブタにアブレーションカテーテルを用いて洞不全症候群モデル、房室ブロックモデルを作製する。また心室にリエントリー回路を作製することで心室頻拍モデルを作製する。心嚢内視鏡を用いてHCN-4によって純化精製した刺激伝導系の細胞をそれぞれ洞房結節および房室結節に移植し、不整脈の改善効果を確認する。また、NKX2-5によって純化精製させた心筋細胞をリエントリー回路に移植することによって心室頻拍の治療効果を確認する。移植直後から2-3ヶ月の慢性期にかけてテレメトリーシステムを用いて不整脈の解析を行う。解析後はブタの安楽死後に心臓を摘出して免疫染色を行い移植細胞の生着や炎症性細胞の浸潤の有無等を詳細に解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年は、主に遺伝子挿入ノックインベクター等の解析ツールを作製することおよび細胞移植のための基礎実験を行うことに集中した。次年度以降は多額の支出が予想されている。必要となる細胞培養液および試薬代、マイクロアレイ解析費、大型動物(マイクロミニブタ)の購入および飼育費、学会発表のための参加費および論文発表のための英文構成費等を確保するために研究計画に支障が出ないように無駄な支出を削減して研究資金の出資を調整した。 細胞培養液および試薬代、マイクロアレイ解析費、大型動物(マイクロミニブタ)の購入および飼育費、学会発表のための参加費および論文発表のための英文構成費等に使用する予定である。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] A massive floating culture system with metabolic purification for human induced pluripotent stem cell-derived cardiomyocytes2014
Author(s)
Hemmi Natsuko, Tohyama Shugo, Nakajima Kazuaki, Hirano Akinori, Kanazawa Hideaki, Seki Tomohisa, Kishino Yoshikazu, Okada Marina, Tabei Ryota, Ohno Rei, Fujita Chihana, Yamaguchi Miho, Hattori Fumiyuki, Yuasa Shinsuke, Sano Motoaki, Fujita Jun, Fukuda Keiichi
Organizer
International society for stem cell research, 12th annual meeting
Place of Presentation
Vancouver
Year and Date
20140618-20140621
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