2014 Fiscal Year Research-status Report
思春期・青年期のひきこもり等の問題行動の予後(治療転帰)に関する臨床的研究
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25510010
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Research Institution | Teikyo Heisei University |
Principal Investigator |
倉本 英彦 帝京平成大学, 臨床心理学研究科, 教授 (10609647)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 思春期・青年期 / 精神障害 / 問題行動 / 予後(治療転帰)予測 / アンケート調査(郵送法) |
Outline of Annual Research Achievements |
研究2年度目にあたる平成26年度は、「2.全国の治療者・研究者に対するアンケート調査」を実施した。日本児童青年精神医学会の全会員(2014年10月15日現在、精神科医1,633名、小児科医312名、その他の医師34名、心理職942名、教員181名、保育士23名、その他看護師・福祉士・指導員など329名;計3,454名)に、2015年1月下旬に質問紙を郵送して回答をまとめた。質問紙は、年齢、性別、主な職業とその経験年数を問う属性項目と、16歳の想定事例の初診時GAF尺度[1-100](=Global Assessment of Functioning; DSM-Ⅳ-R)を40点と仮定して、治療的に関わって1年後のおおまかなGAF予測得点を記入する項目より成る。後者の項目は、不登校、ひきこもり、家庭内暴力(子どもから親への暴力)、いじめ被害、自傷行為、自殺企図、摂食障害、非行(反社会行為)、薬物アルコール乱用、心因反応(適応障害)、神経症ストレス関連障害、うつ病(気分障害)、統合失調症、発達障害、の14行動をあげた。なお、想定事例年齢を16歳、初診時GAF得点を40としたのは、本研究の前半部である「1.申請者が直接治療に携わった事例の診療記録を用いた後方視的調査」において、初診時の平均年齢15.9歳、GAF得点42.3だったので、同様の初期条件に設定したためである。その結果、604回答を分析の対象とした。回収率は17.5%で、職種、性別による大きな差はなかった。平均年齢47.7±11.8歳[23~83]、平均経験年数19.4±11.7年目[1~60]であった。また、各種問題行動の1年後GAF得点は、すべて40以上で、心因反応(適応障害)64.2から薬物アルコール乱用47.6まで幅があった。この結果を自験例調査と照合し、日本児童青年精神医学会(横浜、9月)等で発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、前半部「1.申請者が直接治療に携わった事例の診療記録を用いた後方視調査」と後半部「2.全国の治療者・研究者に対するアンケートによる調査」の二部で構成されている。平成25年度に前半部、平成26年度に後半部がほぼ終了した。前半部は当初予定した事例数100例より少ない60例にとどまり、後半部は日本児童青年精神医学会の全面的な協力を得て会員全員へ郵送法によるアンケート調査を実施したが、回収率の低さ(17.5%)から、分析対象者は予定の1,000例に満たない約600名にとどまった。奇しくも、前半部、後半部とも予定の六割程度の達成数であったが、本研究の物理的、時間的かつ予算的規模からして、その程度でも善戦と言えるのではないだろうか。この二年間の研究によって、自験例調査というミクロの視点と、全国レベルの治療者・研究者への大規模な調査といういわばマクロの視点を照合して、思春期・青年期の精神障害や問題行動の予後(治療転帰)に関する一般的知見を得るための最低限の資料はそろった、と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
この二年間の調査研究によって得られたデータを、過去の発表や諸文献を参考にして比較検討し、統計的分析を加えることにより、思春期・青年期の精神障害や問題行動の予後(治療転帰)に関する一般的知見やその改善因子などを導き出す。そのため、いくつかのテーマに分け、今年度内に国内外の数カ所の学会において発表し、専門家同士の議論を経て、できるだけ早めに数編の論文に仕上げて専門の学会誌に投稿する予定である。また、データのまとまった分析結果が出そろった時点で、研究報告書を作成して関係者に配布する予定である。
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