2015 Fiscal Year Annual Research Report
思春期・青年期のひきこもり等の問題行動の予後(治療転帰)に関する臨床的研究
Project/Area Number |
25510010
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
倉本 英彦 明治学院大学, 心理学部, 研究員 (10609647)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 予後(治療転帰) / 改善率 / 臨床的研究 / 思春期・青年期 / 精神障害 / 問題行動 / 後方視調査 / アンケート調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
思春期・青年期の精神障害や、不登校・ひきこもり、家庭内暴力、非行、いじめ、自傷・自殺、摂食障害などの問題行動に関する予後(治療転帰)を明らかにするために、二つの調査研究を実施した。一つは「申請者が直接治療に携わった事例の診療記録を用いた後方視的調査」(自験例調査)、もう一つは「全国の治療者・研究者に対する簡易なアンケート調査」(全国調査)である。まず、自験例調査では、都内の精神科クリニックにおいて申請者が主治医として関わった事例60名(男28名、女32名;初診時平均15.9歳)の初診時所見とGAF得点で評価した治療開始後の適応状態の推移との関連性をみた。その結果、初診1年後改善率を予後(治療転帰)の指標とみなせた。1年後改善率の高さと関連していた項目は、来院回数が多い、同胞数が少ない、発達障害・パーソナリティ障害がない、家庭内暴力がない、自傷行為や自殺企図がない、であった。次に、全国調査では、日本児童青年精神医学会の全会員3,454名(2014年10月15日現在)に質問紙を郵送して608名から回答を得た(回収率17.6%)。質問紙は年齢、性別、職種と経験年数を問う項目と、思春期・青年期の代表的な精神障害や問題行動を持つ初診時16歳事例の1年後GAF得点を予測する項目より構成された。1年後GAF予測得点は、性別、年齢、職種(精神科医、小児科医、心理士など)、経験年数などによる特徴的な差が認められた。その次に、各問題行動の1年後改善率について自験例調査と全国調査の結果を比較検討した。自験例調査の改善率が高かったのは統合失調症とひきこもりであった。全国調査の改善率が高かったのは心因反応(適応障害)、神経症・ストレス関連障害、うつ(気分障害)、いじめ被害、発達障害・パーソナリティ障害であった。両者の改善率がほぼ等しかったのは、不登校、自傷・自殺企図、家庭内暴力(子→親)であった。
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