2013 Fiscal Year Research-status Report
アジア地域におけるモバイル・メディアの文化的受容に関する比較文化的研究
Project/Area Number |
25511002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金 キョンファ 東京大学, 大学院情報学環, 助教 (90646481)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | モバイル・メディア / メディア人類学 |
Research Abstract |
当該研究課題の初年度として、理論的検討を進めつつ、複数の地域においての研究協力体制を作ることに重点をおいた。具体的な内容は下記の通りである。 ① 本研究課題の基盤理論であるパフォーマンス・エスノグラフィーをメディアの研究法として検証した博士学位申請論文を提出(「ケータイのかくれた次元ー副題:モバイル・メディアをめぐる解釈的メディア論」2013年度東京大学大学院学際情報学府博士学位申請論文)した。さらに、韓国での書籍出版および受賞(『世相を変えたメディア』ダルン出版(韓国出版文化産業振興院、2013年優秀著作)に加えて、イギリスでの共著出版("The 'insider's view' in media studies: A case study of the performance ethnography of mobile media", in R. Rinehart & K. Barbour & C. Pope. (2013) (eds.) Ethnographic worldviews: Transformation and social justice. Springer. pp. 205-215)など、研究課題について理論的検討の成果が出された。 ② 海外との協力調査体制を作るため、積極的に海外での研究成果の発表に行った。モバイル研究の最も権威のある研究会での発表("Mobile phone as a cultural thing: Reflexive approach towards mobile technology", ICA Mobile pre-conference, June 2013, London, UK)に加えて、アジア地域のカルチュラル・スタディーズの学会での発表("Mobile literature and creativity: From a landscape of keitai shosetsu in Japan", Inter-Asia Cultural Studies Society Conference 2013, July 2013, Singapore, Singapore.)、韓国のカルチュラル・スタディーズ学会での発表(「メディア実践としての大字報:オンライン空間での政治参与の系譜学」韓国言論情報学会2013年秋季学術大会、2013年11月、太田、韓国)を通じて共同研究ができる人的ネットワークを築いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度は、本格的な海外調査研究を進めるための基盤を作ることを目的にしていた。より具体的には、①理論的な検討を進める、②海外調査に備えて現地での調査体制を構築する、という二通りの目標を持って活動を進めていた。それぞれの目標の達成度は下記のように評価できる。 ① 理論的な検討:本研究は、パフォーマンス・エスノグラフィーという新しいアプローチに基づいてモバイル・メディアに取り組むという、新しい方法論を用いる。クリエイティブで革新的な方法論であるだけに、理論的な検討をしっかり進める必要があった。25年度は、パフォーマンス・エスノグラフィーをメディア研究の方法論として検証する博士学位申請論文を提出する一方、同アプローチの効用を事例を示して論じた論文を英語で出版するという可視的成果が出された。これらの成果は、単なる研究実績ではなく、本研究課題を進めていくための理論的基盤を築いたこととして評価することができる。 ② 海外調査に備えて現地での調査体制を築く:次年度からの海外調査活動のため、現地での協力体制を築くことが25年度の目標の一つであった。海外学会で発表に積極的に臨んだことは、①で述べた理論的検討のための研究活動であると同時に、パフォーマンス・エスノグラフィーという新しいアプローチの問題意識に共感する海外の人的ネットワークを作り、現地調査での協力体制を築くという狙いもあった。結果的に、上海(中国、復旦大学 李双龍教授)、ヘルシンキー(フィンランド、Aalto大学 Media lab)、ソウル(韓国、光雲大学 金イェラン教授など)という、世界で最もモバイル・メディアの普及が進んでいる都市での研究協力体制が作れた。それぞれの都市での本格的な調査活動のため、具体的な計画を立てる段階に来ている。 以上の評価に基づいて、25年度に研究目的はすべて達成でき、次年度に順調に移行できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は、本格的に現地調査を行うことに主力を注ぐ。初年度に築いた研究協力体制を十分活用して現地での実践研究を実際に進める。実際に、ヘルシンキー(フィンランド)のAalto 大学 Media Lab, 上海(中国)の復旦大学、ソウル(韓国)のモバイル研究者の数名と協力しながら具体的な渡航調査計画を立てている。調査内容は、各都市でのモバイル利用現況、実際の利用者のインタビュー、およびパフォーマンス・エスノグラフィー技法を用いたワークショップの実施である。 現在、ヘルシンキーと上海で現地調査については日程調整を含め、具体的な渡航計画を検討している。パフォーマンス・エスノグラフィーという新しいアプローチを導入したワークショップを現地で行うためには、研究協力者の理解が必須である。それぞれの国の学風と問題意識が違うため、実践研究についての評価が異なる場合があるので、相互理解に基づいた学術交流が必要だと考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度末(3月)に上海(研究協力者:復旦大学 李双龍教授)へ渡航し、共同セミナーおよび予備調査を計画していた。ところが、相手の事情により、セミナーの開催が4月以降に延期されたため、旅費と謝礼が一部消化されずに残っている。 26年度前期に上海で共同セミナーおよび調査を進めることで日程を再調整中である。
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Research Products
(6 results)