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2014 Fiscal Year Research-status Report

現代イギリス移民系女性アーティストの視覚的表象文化に関する研究

Research Project

Project/Area Number 25511008
Research InstitutionOsaka Prefecture University

Principal Investigator

萩原 弘子  大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (90159088)

Project Period (FY) 2013-04-01 – 2016-03-31
Keywordsブラック・アート / 移民論 / 視覚表象 / ジェンダー
Outline of Annual Research Achievements

平成26年度に行なうとした研究計画に沿って、次の2点にわたる研究を遂行した。1)1990年代半ばから現在に至るまでに視覚表象の領域で作品を発表するようになった新世代の移民系女性アーティストの創作に関する資料収集と分析、2)1990年代半ばに設立された関連の美術機構の活動についての資料収集と分析。
加えて、平成25年度の研究実績を踏まえて、1980年代~90年代半ばにおけるアフロ・カリビアン系、アジア系、アフリカ系英国移民であるブラック・アーティストに対する地方行政、文化行政に見る人種とジェンダーの政治学の分析を、1980年から約15年間、全3期中の第2期に焦点を絞って行なった。この3期にわたる時期設定は前年度に行なったもので、そのうちの第1期を論じた論考の続きとして、平成26年度には第2期を論じる3本の論考を発表した。この時期の特徴的な動きであった地方行政と主流美術館のマイノリティ文化政策をとりあげ、第1期では移民系アーティストたちの内発的言挙げであった「ブラック・アート」の概念が、第2期に周縁的な意味を付与され、固定化されたことを明らかにした。第1期、2期について把握した当時の移民、人種とジェンダーに関わる諸関係の考察は、女性アーティストの創作、展示の活動をとりまく社会文脈を明らかにするうえで重要であることも確認した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

中東ないしはパキスタンに出自をもつムスリム系女性アーティストに注目するというのが当初の年度計画であったが、「ムスリム系」という、宗教信条を軸にした括り方は再考を要すると考えるようになった。再考の結論をどう出すにせよ、一括的分類のイデオロギー性には批判的距離を保つべきであろう。
1994年に創設の美術機構InIVA(Institute of International Visual Arts, London)に関する資料は、ほぼすべて収集した。InIVAが、1980年代半ばには早くも地方行政や主流美術館に横領された観のある「ブラック・アート」の概念を掲げず、「国際主義」を謳ったことの意味は両義的である。つまり、英国という枠組を越えて、世界文脈で移民の作品を見る視線を構築する可能性がある一方で、国内のアーティストは専門的美術機構が出来たことの恩典を感じないままであった。それがわかったのは収穫であるが、その現実がもつ文化史的、思想史的意味を明らかにするには至らなかった。
また、閉鎖されたと思っていたWomen Artists Slide Libraryは、Women’s Art Library と名称を変えて、ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジに寄贈されていると判明した。女性アーティストの作品スライドのコレクションは、人種横断的なものとなっていたが、その意義の仔細を検討するまでは調査が及ばなかった。
3期に分けた時代区分のうちの第2期について、学会発表し、論考3本を刊行し、ブラック・アート制度化を諸局面にわたって論じた。ただし第2期の最後の論点である1987年~89年に開催の5つの展覧会については、課題として残った。また第3期の考察は、資料取集して一定程度分析も進めたInIVAの機能を論じることも含み、それも次年度の課題として残った。

Strategy for Future Research Activity

3期に分けた時代区分のうち、第2期(1980年代後半)のなかでも1987年~89年を考察する論考を仕上げ、つづく第3期(1990年代前半)ではInIVAを含む美術機構についてその機能を分析し、全期にわたる研究のまとめを行なう。1980年代から90年代半ばの約15年間で、「ブラック・アート」の概念が、どのように使われ、その含意を変えていったか、変えられていったかを明らかにするなかで、移民系で女性という位置を生きるアーティストたちの創作とその展示が新しくつくりだした視点があることも明らかになるものと思う。

  • Research Products

    (4 results)

All 2015 2014

All Journal Article (3 results) (of which Acknowledgement Compliant: 3 results,  Peer Reviewed: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] 1980年代GLCの文化政策と「ブラック・アート」2015

    • Author(s)
      萩原弘子
    • Journal Title

      人間科学

      Volume: 10 Pages: 3-29

    • Acknowledgement Compliant
  • [Journal Article] 主流美術館によるブラック・アーティスト総覧展2015

    • Author(s)
      萩原弘子
    • Journal Title

      人文学論集

      Volume: 33 Pages: 83-109

    • Acknowledgement Compliant
  • [Journal Article] スチュアート・ホールと1980年代英国ブラック・アート運動2015

    • Author(s)
      萩原弘子
    • Journal Title

      黒人研究

      Volume: 84 Pages: 25-34

    • Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
  • [Presentation] 1980-90年代英国ブラック・アート運動とスチュアート・ホール2014

    • Author(s)
      萩原弘子
    • Organizer
      黒人研究の会
    • Place of Presentation
      キャンパス・プラザ京都
    • Year and Date
      2014-06-28

URL: 

Published: 2016-05-27  

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