2015 Fiscal Year Research-status Report
文化創成コーディネーター育成のためのカリキュラム開発に関する研究
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25511009
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Research Institution | Yamaguchi Prefectural University |
Principal Investigator |
斉藤 理 山口県立大学, 国際文化学部, 准教授 (50610408)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木原 誠 佐賀大学, 文化教育学部, 教授 (00295031)
小笠原 伸 白鴎大学, 経営学部, 教授 (10298036)
岩野 雅子 山口県立大学, 国際文化学部, 教授 (70264968)
高橋 良輔 青山学院大学, 公私立大学の部局等, 教授 (70457456)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 人材育成 / コーディネーター / 文化創成 / 地域振興 / カリキュラム / インターカルチュラル / コミュニティサービスラーニング / 市民活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、近年、持続可能な地域社会形成にとって重要なテーマとなっている「地域コーディネーター育成」に関する教育プログラムの現状を把握し、とりわけ「地域文化資源の利活用」を促進する上で有効な「文化創成コーディネーター」育成カリキュラムの開発について検討しようとするものである。昨年度までの成果を踏まえ、本年度は主に以下の点で進展があった。 1) 研究グループメンバー5名が各自の研究成果を持ち寄りつつ研究会を開催し、a)文化創成の社会的意義を再検証する:木原誠(佐賀大学)、高橋良輔(青山学院大学)がそれぞれ、「周縁学」、「コスモポリタニアン」をキーワードとしつつ、同人材の主体性とその周りに拡がる領域の問題に言及しつつ、同人材が他者との関係性を構築しつついわば文化的結節点として活躍すべきことを明快に分析した。b)文化創成コーディネーター人材の育成手法について:岩野雅子(山口県立大学)が「英国におけるソーシャル・サービスラーニング」を題材に具体的な学習手法を提示し、教育環境を地域社会に拡張させる可能性を示唆した。c)同人材の社会貢献のあり方について:小笠原伸(白鴎大学)、斉藤理(山口県立大学)が、「ソーシャル・ビジネス」、「コモンズ・モデル」を挙げながら、社会の受け皿としての態勢が未だ十分ではなく、これを並行して考えていくことが、人材の活躍機会を広げる上で不可欠である点を例証した。2)上の研究会での指摘も踏まえ、一連の人材育成プランが具体的なフェーズに至った際に顕在化するであろう諸問題について考察した。とりわけ同人材と社会(共同体)との距離感の取り方について、既存のコーディネーター像に絡め取られることなく、むしろ文化学を基軸とした新たな領域横断的なフィールドを自ら創出し得る「領域設定」のあり方について重点的に検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)カリキュラムに関する事例調査の点で:昨年度までの事例研究をベースに、今年度は、より具体的で実効性が高い文化振興の事例モデル分析へと深化させることができた。とりわけa)「テーマ特定型の国際研修プログラム」:フィンランドにおける「木」をテーマとした文化研修プログラムを通じ、大学・企業が協働したコーディネーター育成事業に関する分析、b)「文化事業への『参加』を主軸にしたPBLプログラム」:ドイツにおける「文化研修プロセスのプロトタイプ化」を進め、各種の市民「参加」を促進し、多文化交流の創成に成功している事例分析等を通じ、本研究の調査上の重点項目をより掘り下げることができた。 2)教材作成と実践:昨年度に引き続き、文化ないし個々人の教養(culture)、地域ニーズ(community)、文化振興(promotion)の3要素をバランスよく包含する学習プログラム「CCPモデル」と仮定しつつ、学習プログラムの案出を進め、部分的に一地方都市において市民―大学生の共同参加の形で試行した。これをひとつのプロトタイプに位置づけつつ、総合的な人材育成カリキュラムの構築に展開させていくことが可能であると考えている。この項目に関してなお精度を上げるため、次年度、とくに時間を掛けて総括する。 3)ピアレビュー:国内外の文化機関関係者計10名と意見交換を行ったほか、継続的に実施した日本国際文化学会での公開研究会を通じ、20名強の研究者と本研究課題について学術的な議論を深め、相互に評価・コメントを得ることができ、有益な成果をもたらした。とりわけ、今年度精力的に実施した、大学におけるプログラム担当者、行政(海外)の文化担当者との学術的交流により、今日の社会的課題についてより精密に分析することができ、昨年度に引き続き「高度で実効性の高い実践を通して学びを深める仕組みづくり」について大きな進展をみることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)昨年度までに類型化を試みた「コーディネーター像(目標像)」と、部分的に試行してきたカリキュラム・モデル並びにワークシート・学習教材のプロトタイプとの乖離点を整理・解消し、一つの体系的な人材育成カリキュラムとしてまとめる。 2)その際、単一的な人材像に固定化するのではなく、文化学の視座に立って、多様な文化創成ができる人材を育成し得るよう配慮する。とくにこれまで手がけてきた国内外におけるシチズンシップ教育、ボランティア学習、サービスラーニング等、レンジの広いカリキュラムモデルの事例分析結果を参考に、文化の継承・遺伝(ミーム)論も援用しつつ、より専門的な活動内容を伴った文化振興の事例モデル分析へと深化させていく。 3)これまでの調査成果を総括し、文化創成コーディネーター育成カリキュラムを他の教育機関、文化機関において幅広く活用できるようオープンリソース化していく。とくに以下の4要素を複合してカリキュラム案出する。a)基礎的なカリキュラム体系(デューイを軸とした経験学習の意義、シチズンシップ教育と社会的包摂、文化政策の構造的理解・事例研究、ダイバーシティ・コミュニケーション等のテーマ別モデュールで構成)、b)応用編のカリキュラムとして、具体的な文化創成プログラム立案に向けた「ステークホルダーの整理とプロジェクト構想書の作成法」等の習得、c)さらにこれらの実現に向けた組織体制案(コーディネーターの位置づけと研修プログラム計画、他機関との協働体制整備の可能性)、d)同カリキュラムの評価方法・評価軸の設定(文化創成コーディネートの企画・運営に対する評価指標、評価の妥当性、評価にかかる時間等)、以上を案出・統合し、本研究の成果物の一つとする。 4)ピアレビュー:アメリカで文化創成プログラムを長年精力的に展開されてこられたアダム・セリグマン・ボストン大学教授(次年度来日予定)から評価を受け、成果をまとめる。
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Causes of Carryover |
補助事業の目的をより精緻に達成するための追加研究を実施する予定であるため、今年度予定していた旅費(成果報告のための学会参加)、その他・印刷費(成果報告印刷)等は、次年度以降の使用に回したい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
旅費については、学会報告(研究者間のピアレビュー)、物品費およびその他・印刷費については、最終的なカリキュラムツールの整備、最終報告書作成に充てる。
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Research Products
(12 results)