2013 Fiscal Year Research-status Report
フランス・セネガル文学における近代戦争とアフリカ―モダニティとしての「未開」
Project/Area Number |
25511012
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
吉澤 英樹 成城大学, 文芸学部, 非常勤講師 (30648415)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北山 研二 成城大学, 文芸学部, 教授 (90143130)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 第一次世界大戦 / モダニズム芸術 / セネガル狙撃兵 / 黒人表象 / 植民地行政 / 間メディア / 文化人類学 / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
初年度にあたる平成25年度は研究会を3回開催した。6月には第一回研究会に代え、成城大学フランス語フランス文化研究会第14回大会の枠内で、研究代表者(吉澤)が「プレ・ネグリチュード期におけるセネガル狙撃兵の自己表象― バカリ・ジャロ『善意の力』(1926)をめぐって ―」という報告を行った。そこで、セネガル文学の側からの「セネガル狙撃兵」の表象の収集およびリスト化という初年度の研究計画に従い、コーパスの策定と主題の整理を行うと共に、研究プロジェクトの周知に努めた。10月には、「セネガル狙撃兵」の表象の帰属と歴史主体の形成を巡る錯綜について議論するため、センベーヌ・ウスマン監督『キャンプ・チャーロイ』の上映と三宅美千代(英文学)による「『キャンプ・チャーロイ』における汎アフリカ主義的展望」という研究発表を行った。その後の議論を通して、英語圏文学・文化研究とフランス語圏文学・文化研究のアプローチ統合の可能性を模索した。12月には柳沢史明(美学)が「リズム」というアフリカの黒人に付随するステレオタイプの属性を間メディア的黒人表象という視点から論じた「受肉したリズム―黒人表象と「芸術」の交点」という報告を行い、発表後の議論を通して両大戦間モダニズム芸術運動における黒人表象の受容と黒人側からの主体形成の複雑な関係性が浮き彫りとなった。研究代表者の個人的作業としては、1920年代文学作品に表れる「セネガル狙撃兵」に関する表象の収集分析を行い、その成果の一端を上記の発表の他に、日本フランス語フランス文学会秋季大会において発表した。研究分担者および海外研究協力者は、今年度は資料収集・理論的仮説作りを行い、26年度に開催予定のシンポジウムに向けての準備を進めている。今後は、引き続き研究会における議論等を通して、研究分担者・研究協力者間で各アプローチの整合性の検証作業を詰めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標であったコーパス確定と資料収集、また研究会の開催など予定通りに進み、経過を研究発表やHPを通して公開することが出来た。ただ、当時のアフリカにおけるフランス語の識字率にかんする状況などから予想されたように、1920年代におけるセネガル文学側の資料の発掘は、それほど目覚しい発見に至ってない。
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Strategy for Future Research Activity |
26年は前年度の予備調査に基づき、そこで提示した理論的仮説を検証していくために具体的な手順に沿って資料を分析していく。戦後モダニズム芸術における「未開」観を批判的に検証し、戦争を介在した「未開」と「モダン」を主題とした作品群の非同心円的な見取り図を作り上げることを目標に、研究班メンバーそれぞれの専門分野から、理論的研究の深化・拡大を行う。研究会における議論等を通して各研究者間のアプローチおよび理論の整合性を検証しながら、実証的研究の諸成果に合致すると共に今後の調査対象になりうるような諸事象に適応可能な理論的モデルの構築を行う。そして26年度末シンポジウム開催を目標に上記の作業を詰めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外通貨レート等の要因により、旅費および海外研究協力者の招聘費用の試算額が申請時の計算に比べて増大したため、初年度はセネガルへの渡航は控え、研究旅費や物品費を節約したことによる。 生じた次年度使用額分は、年度末に予定している国際シンポジウムの開催費用、海外研究協力者招聘費、通訳費などに充てる予定である。
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Research Products
(4 results)