2014 Fiscal Year Research-status Report
フランス・セネガル文学における近代戦争とアフリカ―モダニティとしての「未開」
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25511012
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
吉澤 英樹 成城大学, 文芸学部, 非常勤講師 (30648415)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北山 研二 成城大学, 文芸学部, 教授 (90143130)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | モダニズム / アフリカ / 間大陸的黒人表象 / 国際研究者交流(セネガル) / 文化人類学 / 美学 / インターナショナリズム / 戦争表象 |
Outline of Annual Research Achievements |
第二年目にあたる26年度は研究会を4回、国際シンポジウムを1回開催した。当プロジェクト第4回研究会の枠内で5月31日に東京外国語大学名誉教授の小川了氏(セネガル地域研究・文化人類学)を招聘し、20世紀の初頭植民者の視点からアフリカがどのように表象されていたのか、またそのような「現場の知」がモダニズム期の文化表象にどのように影響を与えたのか明らかにすることが出来た。また7月25日には第5回研究会の枠内で分担者の北山研二と立花史氏がそれぞれ報告を行い、レーモン・ルーセルが20世紀初頭に伝統的なアフリカ表象とは断絶することによって開いた黒人表象におけるモダニティが、サンゴールを例に20世紀末にアフリカ人自身によってどのような形で定着したのか、広い視点で明らかにすることが出来た。また秋には2回の研究会(9月26日と11月28日)を開催し、報告者である美学研究の木水千里氏ならびに英文学研究者の山口哲央氏によって、それぞれ1930年代のアメリカのモダン・アートと英国モダニズム文学における黒人文化表象の果たした役割を報告することによって、よりグローバルな視点から両次大戦間の黒人表象とモダニティの関係が明らかになった。以上の研究成果を踏まえ、平成27年2月1日に海外研究協力者のラファエル・ランバル(セネガル・ジガンショール大学)を招聘し国際シンポジウムを開催した。そこでは、美学研究者の柳沢史明氏、英語圏文化研究の三宅美千代氏と代表者の吉澤の4人がフランス語ならびに英語で発表を行い、それぞれ専門の異なる立場から両次大戦間の黒人表象の持っていたモダニティにかんして有意義な議論を重ねることが出来た。 また代表者の吉澤は個人研究の枠内で、日本フランス語フランス文学会秋季全国大会(広島大学)において、両次大戦間におけるフランス語圏のコミュニスムと黒人表象の関係についての研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、両次大戦間におけるモダニズムを介した黒人表象の非同心円的な見取り図を作ること、ならびに理論的仮説を実証していく作業を目標としていたが、文化人類学・美学・英文学・フランス文学・思想など幅広い視点から問題を抽出し、整理することが出来た。この作業によって、当該主題を巡るそれぞれのディシプリン間の関心領域の濃淡が浮き彫りになる反面、共通傾向も明らかになった。その意味でプロジェクト参加者内である種の見取り図が共有され、それぞれが立てた理論的仮説が相互補完的に実証されることとなった。 ただし、一次資料の発掘による実証研究に関してはそれほどの収穫がなかった。代表者の吉澤はフランスのSHDのアーカイブで、また海外研究協力者のラファエル・ランバルはセネガルにおいて、一次資料の発掘を行ったがそれほど目覚しい発見はなく、これらの視点を当該プロジェクト研究の成果に取り入れられるかは今後の課題となった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年である平成27年度は、分担者に美学研究・芸術人類学を専門とするの柳沢史明と英米文化・文学を専門とする三宅美千代を加え、過去2年間において進めてきた研究を今一度それぞれの専門分野に基づき多角的な視点からお互いの成果を検討し、研究成果を取りまとめる作業に入る。今後は論集の出版を目標に、プロジェクトの参加者は、全体の方向性についての意見を調整しながら、各自の研究を深化させることになる。 その一方で、多岐にわたる専門分野間を横断して得られた共通見解を研究期間終了後にも更に発展させていく目的で、外部から研究者を招聘し、研究会を開催し、議論を深める予定である。
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Causes of Carryover |
夏から秋にかけて予定していたセネガルへの資料収集を目的とした海外出張は、西アフリカ地域全体へのエボラ出血熱の伝染が危惧されていた時期と重なってしまったため、断念をせざるを得なかった。そのため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年2月、海外研究協力者ラファエル・ランバルを国際シンポジウム開催の際にセネガルから日本に招聘し、研究会合や意見交換を十分に行うことができたため、今後西アフリカへの出張は行わない。今年度は研究成果の取りまとめのための編集代や出版費に充当することを予定している。
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Research Products
(5 results)