2016 Fiscal Year Annual Research Report
A Study of a New Trend in Cyberculture
Project/Area Number |
25511014
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
根村 直美 日本大学, 経済学部, 教授 (10251696)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 身体 / ポスト・ヒューマニズム / 『イノセンス』 / サイバー・カルチャー |
Outline of Annual Research Achievements |
成28年度は、これまで行ってきた、押井守監督の『Ghost in the Shell/攻殻機動隊』やデジタル・パフォーマンス作品の分析を受け、電子テクノロジー社会に生きることにより我々がうみだしつつある<身体>解釈の概念化をより一層進展させることを試みた。具体的には、『Ghost in the Shell/攻殻機動隊』の続編『イノセンス』が示す身体理解の分析を行なった。 『イノセンス』においては、<人工的に構築されたもの>としての<人形の身体>という表象が映画全体の基調をなしているのであるが、その<人形の身体>は実は<人間の身体>に他ならない。つまり、『イノセンス』では、<人間の身体>を<人工的に構築されたもの>と捉える身体図式・イメージが示されているのである。そして、その身体図式・イメージは、<有機体>としての<人間の身体>に付与された<神秘性>から我々を解き放つものとなっている。 また、『イノセンス』においては、構築される身体とは、自分ではないが自分の一部であるような<他者>と関わることにより立ち現れる具体的な状況において、画定された境界線をもつものである。即ち、その身体は、<他者>とのネットワークと相互作用がうみだす<偶発性>に基づいている。しかも、この身体図式・イメージには、<ヒューマニズム>の枠組みには回収されえない異質な<他者>が含まれうるのであり、その図式・イメージは、そうした<他者>への<敬意>とも結びつきうるものとなっている。 以上のごとく、本研究では、電子テクノロジー社会に生きる我々がうみだしつつある身体理解の概念化を推し進めることができた。今後は、更なるサイバー・カルチャーの分析を通じ、『イノセンス』に見られるような<ポスト・ヒューマニズム>、そして、身体図式・イメージに基づくとき、どのような世界や生の様式がうみだされうるかについての考察が必要である。
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