2014 Fiscal Year Research-status Report
文化・社会運動研究における「アイデンティティの政治」の再文脈化
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25511018
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
堀江 有里 立命館大学, 国際関係学部, 非常勤講師 (60535756)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金 友子 立命館大学, 言語教育センター, 嘱託講師 (20516421)
堀田 義太郎 東京理科大学, 理工学部, 講師 (70469097)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 差別論 / ヘイト・スピーチ / 文化運動 / 社会運動 / ジェンダー・セクシュアリティ / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究プロジェクトはマイノリティの権利を実現してきた「アイデンティティの政治」が日本のジェンダー・セクシュアリティ研究などの領域で否定的に評価されてきた経緯を踏まえた上で積極的な可能性や意義を明らかにすることを目的とする。2015年度はとくに近年広がりをみせている外国人差別や排外主義の文脈において問題の所在を明らかにし、具体的に起こっている差別問題を検討するため、公開講演会を開催することで、研究成果の還元を試みた。公開講演会は、師岡康子氏(弁護士/大阪経済法科大学客員研究員)を講師に「教育現場とヘイトスピーチ――師岡氏を招いて」をテーマとして開催した(2014年4月27日(日)、於・立命館大学(衣笠)創思館303・304教室、共催:立命館大学ヘイトスピーチ事件の解決を求める有志、立命館大学コリア研究センター)。約120名の参加者を得ることができた。 また、プロジェクト全体会議(定例研究会)を年10回開催し、各担当部門の進捗状況を確認するとともに相互コメントを実施し、適宜、学会や学術会議での報告を行った。 各担当部門における研究実績概要は以下のとおり。(1)性的少数者のアイデンティティ戦略と政治:性的少数者を排除する性別二元論と異性愛主義という性規範の諸現象を検討するため、音楽や宗教におけるフィールドワーク調査と文献調査を行った。(2)エスニシティ研究における在日朝鮮人女性の「アイデンティティの政治」:文献調査を軸に研究を進めた。とりわけ「微細な攻撃(microaggressions)」の概念に着目し、昨年度の課題(日本社会に蔓延するヘイト・スピーチ)とアイデンティティの政治との理論的架橋を図った。またインタビュー調査の項目作成、社会運動(民族運動)の資料の分析視角を得ることができた。(3)規範理論の差別研究における「差別」概念の検討:昨年度に引き続き英語圏での議論を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各担当部門における文献調査や理論的枠組についての検討は順調に進捗している。また、年間10回開催された全体会議(定例研究会)において、進捗状況の確認と相互コメントを行うことにより、共通課題である「アイデンティティの政治」の限界性と可能性についての意見交換を行なうと同時に、各自、学術会議や他プロジェクトの研究会などでの成果報告を行なうことができた。ただ、プロジェクト全体としてのアウトプットは予定していたものの開催することができなかったため、次年度に持ち越すこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度については、各部門担当者の研究成果をとりまとめ、領域横断的な「アイデンティティの政治」の積極的な意義についてあきらかにすることを進める。とくに理論的枠組を支柱にしつつ、在日朝鮮人と性的少数者への差別問題の異動について考察を深める予定である。 また、立命館大学生存学研究センター若手強化型プロジェクトであるフェミニズム研究会との連携のもと、研究成果物の刊行をめざす。
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Causes of Carryover |
当初は、当プロジェクトのメンバーによる国際学会もしくは研究会議でのパネルセッションを計画していたために、旅費・宿泊費および参加費を計上していた。しかし、共通テーマの設定に合致する国際学会もしくは研究会議を模索したところ、実現がかなわず、他プロジェクトのパネルセッションに、当プロジェクトのメンバーを派遣するかたちを選択することとなった。そのため、旅費・宿泊費および参加費については1名分のみの支出となり、次年度への計画繰越を行なうこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当プロジェクトのとりまとめの年度となるため、これまでの研究成果を国内および国際学会において公表するために、旅費・宿泊費および参加費として用いる。また、定例研究会への参加者の交通費、外部講師および研究協力者を招請する際の交通費・宿泊費、謝金として支出する使用する予定である。
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Research Products
(18 results)