2014 Fiscal Year Research-status Report
住民主体による団地リソース循環活用型ストック再生に資する意思決定支援システム
Project/Area Number |
25512003
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
鈴木 克彦 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (10115983)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阪田 弘一 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (30252597)
大坪 明 武庫川女子大学短期大学部, その他部局等, 教授 (70434933)
鈴木 あるの 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (20467442)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 住宅団地 / ストック再生 / 住民主体 / リソース循環活用 / 合意形成 / コミュニティ・マネジメント / 意思決定支援システム |
Outline of Annual Research Achievements |
再生期を迎えた住宅団地におけるリソ-ス循環活用型再生への誘導に資する意思決定支援システムの構築に向けて、本年度は次の成果を得た。1.団地リソ-スの循環活用型再生の意義と魅力を具体的に提示するために、実在する住宅団地(大阪府営瓜破東住宅)の空き家を活用して住戸改修実験を実施した。改修後には居住実験を行うと共に来場者アンケートを実施し、空き室をセルフリノベーションにより活用することの有効性を検証した。2.団地リソースとしての多種多様な地域コミュニティに着目し、京都御蔵山学区の「御蔵山ゆう輪蔵ぶ」の活動内容を調査し、郊外住宅地のコミュニティにおける「互助」の有用性について検証した。そして、住民を交えたワークショップやアンケート調査の結果から、シェアリング・エコノミーのような個人間の互助を根付かせることを最終目的とした地域住民主体の互助システムの有効性を明らかにした。3.建築資源としてのストック活用の取り組みについてアジア諸国(台湾、マカオ、タイ)の先進的事例を調査し、ストックの持続的活用を前提とした設計手法とサポートシステムについて検証した。また、仏のプレシ・ロバンソン団地の再生に関する調査研究を行い、建築内容の決定を関係者の協議に委ねる手段を採用してコミュニティ再生に成功した実態を把握した。4.住民主体による住環境マネジメントを持続的に展開している建築協定地区の活動実態を調査し、団地リソースの循環活用に資する意思決定の特徴を明らかにした。5.多文化共生を前提とした意思決定プロセスの可能性を検証するために、住宅団地における外国人居住の実態を知る管理者、住民参加を前提とした改修事業者、外国人のための住宅を斡旋する民間業者の経営者らに聞き取り調査を行い、高経年の団地が外国人居住を含む多文化共生社会の器として機能している実態、今後のさらなる活用の可能性を示唆する事例が知見された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実在する住宅団地の空き家を活用して団地の将来像を見据えた住戸改修実験を実施したことは、団地リソ-スの循環活用型再生の意義と魅力を具体的に提示し、団地住民の意思決定に有効に機能することが検証できた。また、団地住民の「互助」による地域コミュニティの活性化の実例調査や建築協定地区での持続的な住環境マネジメント、多文化共生を前提としたコミュニティ・マネジメントの実態を検証することにより、多様な住民要求を反映した意思決定支援システムの構築のためには、年齢、能力、性別、経済、居住環境、人種等の様々な社会的排除に対処するソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)という考えを前提としたデザイン手法の必要性が明らかになった。海外の先進的な事例調査については、限られた事例ではあるがストックの持続的活用を前提とした設計手法やサポートシステム、フレキシブルなコミュニティ・マネジメントの仕組みが重要であることが解明された。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる次年度は、これまでの研究成果を活用し、社会実験の実践をつうじて意思決定支援システムの検証を行い、その有効性を検討する。さらに、ストック改修を前提とした公的団地を対象に入居者募集の際の改修内容の意思決定を支援するシステムを検討すると共に、多文化共生を前提とした住民による意思決定プロセスにおいての団地リソースの活用可能性についても検証する。そして、持続型共助コミュニティの醸成と団地リソース循環活用型再生に向けて、団地の現状課題と住民意向に連動したストック再生に向けてのロードマップ(時系列の実行計画)の作成に取り組む。また、設計実務家や法律家などの協力を得て、都市計画法や建築基準法上の建築計画的課題、区分所有法や不動産登記上の課題などを明確化し、団地リソ-ス循環活用型ストック再生の汎用化に向けた意思決定支援システムの検討を行う。
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Causes of Carryover |
実在する住宅団地の住戸改修実験に伴う謝金が、予算計画よりも少額となった。また、海外の先進的事例調査がアジア中心だったため、海外旅費が予算計画を下回った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
先進的な海外の事例調査が十分でないため、海外事例調査のための経費として使用する。また、社会実験の検証のための経費に充足させる。
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Research Products
(17 results)