2015 Fiscal Year Research-status Report
放牧牛および舎飼牛における畜産物への放射性セシウムの移行阻止と回収技術の確立
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25517006
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Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
井上 達志 宮城大学, 食産業学部, 教授 (20264351)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 光晴 宮城大学, 食産業学部, 教授 (40151386)
須田 義人 宮城大学, 食産業学部, 准教授 (90404847)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 放射性セシウム / プルシアンブルー / 除染 / 畜産物 / 牛乳 |
Outline of Annual Research Achievements |
チェルノブイリ原子力発電所の事故以降、EU諸国では強力なCs吸着力を持つプルシアンブルー(PB)を家畜に投与、あるいは飼料へ散布することによる除染技術がマニュアル化されているが、我が国においては、現在のところ、家畜の飼料添加物及び治療薬としては認められていない。 本研究では、Cs137を指標とし、低線量の放射性Csに汚染された乾草をヤギへ給与し、同時に投与した磁性体化したPBによる除染効果を検討した。 実験1では、低線量の放射性Csを含む飼料をヤギへ給与し、Cs137の排泄率を測定した。摂取したCs137のうち、磁性体PBを投与により平均94.1%が糞中に排泄された。磁性体PBを投与した期間と投与していない期間のCs137の糞中への排泄率を比べると、磁性体PBを投与した期間で有意に高かった(P<0.01)。 実験2では、実験1における磁性体PBを投与した期間中に採取した糞から10000Gの磁力を持つ磁石を用いて磁性体PBを回収し、それに結合した放射性Csの回収率を求めた。磁石によって回収された磁性体PBのCs137の濃度は、乾燥糞の17.4倍に濃縮され、平均75.3%回収することができると推定された。 本実験の結果より、磁性体PBを家畜に投与することは、放射性Csの体内への吸収を抑制し、畜産物の安全性を高めることが期待できる。また、排泄された糞中から磁石により選択的に磁性体PBを回収することにより、汚染物質の減量化及び家畜の排泄物の除染の効果も期待できる。実際の畜産の現場においても、本実験と同様の除染効果が求められている。今後は、泌乳期の乳牛へ磁性体PBを投与し、放射性Csの排泄、磁石による回収の効果を調査すると同時に、採取する乳中の放射性Cs濃度も測定し、畜産物への放射性Cs移行の程度を検討することが必要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は、泌乳牛に磁性化したPBを投与し放射性セシウムの吸収阻害効果の評価および糞からのセシウムの回収の実証試験を行う予定であった。これに向けて、宮城県内の一般財団法人に、法人の所有する農場における試験の実施の協力を取り付けた。しかし、放射性セシウムに汚染された飼料を取り扱うことから、試験に使用する施設、乳牛、生乳および排泄物等を、他の生産施設に対する汚染防止のためそれぞれ別に準備する必要があり、協力農場におけるこれらの施設や供試牛の調整を行った結果、試験実施可能な時期が極めて限られた時期となった。結果として、これに向けての事務手続きが間に合わず、来年度に向けて再度調整する運びとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
シバヤギに放射性セシウムに汚染された飼料を給与し、磁性体PBを同時投与した本年度試験では良好な結果が得られ、牛を用いた実証実験を実施するにあたっての科学的な障害は予想されない。今後は、実証試験協力施設との連携を深めた上で試験実施に向けて再度調整し、これに関わる事務処理を迅速化を図りながら試験を遂行する。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、放射性セシウム汚染飼料と磁性体PBを同時給与して放射性セシウムの吸収阻害効果の評価および糞からのセシウム回収の実証試験を牛で実施することができず、同様の試験をシバヤギを用いて行った。そのため、泌乳牛およびそれらを供試して行う試験に充当する予定であった助成金の使用がなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は本研究の最終年度であり、泌乳牛を用いた実証試験を協力施設と連携を密にして確実に実施する。その際に、当初の計画通り、泌乳牛およびそれらを供試して行う試験に充当する。
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