2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25540006
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
平中 幸雄 山形大学, 理工学研究科, 教授 (40134465)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 逆方向シミュレーション / システム安全性検証 / 範囲信号 / 数値逆方向モデル / ケース分岐シミュレーション / ダイナミックプライシング |
Research Abstract |
システムの安全性を評価する確実な方法が必要である。研究者らは、異常出力を起点にシステムの動作を遡りながら異常の可能性を探る逆方向シミュレーションが、安全性評価の効果的な方法と考えている。しかし、逆方向シミュレーションで必要となる各システム要素の逆方向モデルは、一般的には作成が困難である。 そこで、本研究の逆方向シミュレーションでは、逆方向モデルに数値モデルを用いることで実現を容易にする。ただし、数値化のために異常可能性を逸失しないよう必要十分な数値範囲を逆方向情報として設定し、研究者らが汎用通信フォーマット(UCF)と呼ぶ文字列データ表現により、一般的なシミュレータとして、理論・アルゴリズム・分散処理などの検討が行える方式を採用する。さらに困難なのは、入力が複数ある要素の逆方向モデルの実現であるが、入力の相互依存関係を値範囲の組で表現し、その組を任意の精度に細分化することで精度の高いシミュレーションを行う方法の実現を目指している。 具体的な安全性検証対象として、電力需要制御方法として検討が進んでいるダイナミックプライシングをテーマとしている。電気ヒータ等の消費電力特性と、ユーザの室温と電気料金とに対する応答モデルから、数値表として順方向モデルを作成し、それを逆方向モデルに変換する。ひとつの消費電力値に対する室温と電気料金の可能性を複数の値範囲組に分割表現し、それぞれの組に対して逆方向シミュレーションを行えるようした。その結果、複数ユーザが各々の機器を独立に利用したときの制限電力超過の可能性評価図を作成できた。値範囲組の細分化による精度と計算時間に関する評価は、来年度の中心テーマである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の第一のテーマは、数式モデルの作成が困難なシミュレーション要素を、実測に基づき数値モデルとして作成し、次に逆変換して数値逆方向モデルを実現することである。実測値間の補間法、逆方向での範囲のとり方、複数入力での入力値範囲組の設定などに選択の自由度があった。 第二のテーマは、シミュレーション結果の精度を上げるため範囲信号の「範囲」を狭めていく必要があるが、それはシミュレーションを場合分けして行うことで実現し、その場合分けの処理を機械的かつ効率的に行う方法を検討した。シミュレータ内部で自動処理可能な仕組みを検討の結果、タスクスタックによるケース分岐と分岐終了判定による逐次処理を基本方式としてシミュレータを実現した。次に、シミュレータ要素間の制御通信を用意して多重分岐、分岐時のデータ記録・復元を実現することで、一般的なシミュレーションに対応できるようにした。 検証対象例としている電力供給のダイナミックプライシング方式について、電気ヒータモデル、室温と電気料金に対するユーザ反応モデルを作成し、小規模単純構成でのシステム異常可能性を逆方向シミュレーションで行った。具体的に、制限超過電力使用量を与えると2入力(室温、電気料金)の組で表現される範囲信号を複数生成しながら、使用電力超過の起きる可能性を範囲として求めた。使用機器とユーザ応答モデルによって超過使用が発生するのであるが、その範囲を室温に対して特定する結果が得られることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、過渡応答モデルへの対応と、計算精度・データ量・計算時間の関係を中心に実用性の評価を行う。 入出力応答として一般的な要素は、インパルス応答特性による過渡応答なので、その逆方向モデルを生成し組み込めば、一般的な逆方向シミュレーションが実現可能となる。しかし、インパルス応答をFIRフィルタとして近似すると、フィルタ段数に対応した内部状態を持つ逆方向モデルとなり、内部状態を逆方向ミュレーションで扱う必要がある。 その解決方法として、内部変数の外部化を考えている。構造が複雑になるが、不定要素を括り出し、範囲信号の場合分けシミュレーションによる解決を試みる。FIRフィルタの場合には入力側に合流点ができ、そこではすべての合流信号が一致しなければならない。したがって、範囲信号の絞り込みができる。また、過渡応答では、信号の時間処理も必要になるが、シミュレーション時間ステップを設定することで、機械的に処理する方法を考えている。 多段数、多次元のデータにも適用できるようにすることで、逆方向シミュレーションの実用性が高まると考えているが、計算量も含めて評価を行う。シミュレーション対象とするダイナミックプライシングにおいて、結果が出るまでの計算時間と精度との関係を求め、実用的なシミュレーションを行うのに必要な計算時間の見積もりを行い、逆方向シミュレーションの総合的な評価としたい。また、実測値に基づく数値逆演算では、誤差が原因で信頼性のある結果が得られないおそれもあるが、範囲信号の区分細分化による誤差の限定効果を確認したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
温度センサの購入を検討していたが、予算が不足したので、繰越して次年度購入予定とした。 繰越と合わせて次年度の予算の中で購入する予定である。
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Research Products
(1 results)