2013 Fiscal Year Research-status Report
身体を直截観測する投影型複合現実インタフェースでの擬似力触覚生起の研究
Project/Area Number |
25540083
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岩井 大輔 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (90504837)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 複合現実感 / 仮想現実感 / 擬似力触覚 / ユーザインタフェース / プロジェクタ |
Research Abstract |
本研究課題では、人に映像をプロジェクション重畳することで、あたかもその身体に外的な力が加えられたかのように感じさせる手法を構築する。言い換えれば、視触覚の感覚間相互作用を利用し、投影型複合現実インタフェースのユーザに視覚情報で擬似的な力触覚を与えることを目指す。 平成25年度は、本研究課題の根幹をなす二つの基礎的手法である、一様でない反射特性を持つ動的対象の投影反射色制御手法、および、ユーザ視点とプロジェクタ光学中心の一致による投影像の幾何学補正手法について理論検証を行う予定であったが、必要な実験装置が揃わず計画通りに進まなかったことから、以下のように計画を変更した。まず、投影に適した無色な平面を対象とする単純な環境下において、投影型複合現実感インタフェースに擬似力触覚が生起するかどうかを確認する基礎的な心理物理学実験を行った。この実験では、様々な曲率の側面をもつ平面を用意し、その側面を被験者になぞらせた。この際、プロジェクタから手先のテクスチャ像を投影し、あたかも実際になぞっている側面とは異なる曲率の側面をなぞっているかのような視覚情報を提示し、その時感じる側面の形状をスケッチさせて回答させた。その結果、実際の曲率よりも投影像によって提示された曲率に誘導された曲率を被験者が感じていたことが確認できた。このことから、投影型複合現実感インタフェースを用いて、ユーザに視覚情報のみで擬似的な力触覚を与えることが可能であることが確認できた。 なお、第18回日本バーチャルリアリティ学会大会に参加して情報収集を行った。現在、上記の成果をまとめて原著論文1編を投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験装置が揃わなかったことから、年度初めに建てた計画通りには進行しなかったものの、投影型複合現実感の環境で擬似力触覚が提示できることが確認できたため、研究の目的の達成度としてはおおむね順調に進展していると考えている。 投影型複合現実インタフェースでは、ユーザが操作対象と自分の身体を直接見ることになるため、従来、擬似力触覚の生起は困難とされてきた。一方、今年度の実験により、この想定に反して、ユーザが自分の身体を直接見ることができる場合でも、擬似力触覚は生起するということが明らかになった。また、実験では、従来のビデオシースルー型システムを用いて生起させた擬似力触覚との比較も行った。この結果、自分の身体を直接見ることのできないビデオシースルー型の方が、投影型に比べてより強力に擬似力触覚を生起させる傾向があることが確認できた。ただし、双方の結果に統計的有意な差はほとんど見られなかった。 手先のテクスチャを投影するだけでなく、被験者の手先に人工的なストライプパターンを投影する実験も行った。被験者が手先を机の上において一方向に動かす際に、ストライプパターンをその移動方向とは垂直な方向に動かしながら投影した。実験の結果、ストライプパターンの移動方向とは逆側に手先位置が誘導されるた。この結果から、投影型複合現実感インタフェースを用いて擬似的な力触覚を与える方法として、手先のテクスチャ像を用いる必要がないことも確認できた。 本実験では、暗所・視点固定・決められた方向から指先で触れて平面の側面をなぞる、という制約のある実験条件のもとに実験を行った。このため、本実験で得られた結果は他の様々な状況に適用できるものであると言い切ることはできない。より現実的な環境で同様に擬似力触覚が生起するかどうかについては、今後の検証が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度には、指先のタッチ操作により3次元物体の形状を変更するユーザインタフェースを構築する。指先タッチの検出には現有機材の光学式モーションキャプチャシステムを使用する。モーションキャプチャシステムを実験システムに組み込んで、ユーザが対象に触れたら、その部位を映像投影により視覚的に形状操作し、あたかも掘ったり盛り上げたりすることができるシステムを構築する。さらにその際、ユーザの指先にも映像を投影し、あたかも変形した形状に合わせて手指が動くよう視覚的に操作する手法を構築する。これには、研究代表者らの保有技術であるステレオ投影像による立体物の視覚的変形技術を応用する。これまで保有してきた、ユーザ視点および対象形状に合わせて適切な投影像を計算する技術に加えて、ユーザの指先の位置・姿勢も考慮して当映像を計算する技法を新規に開発する。構築した実験システムを用いて、被験者実験により擬似力触覚の生起の有無を確認する。生起することが確認された場合は、投影像の位置ズレ、時間遅れ等の各パラメータを変化させて、投影型複合現実インタフェースにおける擬似力触覚の生起条件を明らかにする。 年度中に、上記の実験の中間的な結果を国内の研究会および国際会議で報告し、当該研究領域の専門家からのフィードバックを得ることで、必要であれば、有効性の高い研究となるよう実験計画の修正を行う。さらに年度の最後には、実験結果をまとめて、原著論文1編を投稿する。
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Research Products
(1 results)