2013 Fiscal Year Research-status Report
経済及び水資源を考慮したライフサイクルアセスメント手法と農業生産の評価
Project/Area Number |
25550045
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
内田 晋 茨城大学, 農学部, 准教授 (30631014)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ウォーターフットプリント / 水資源 / 灌漑 / 水田作 / サトウキビ / 農業用水 / 香川用水 |
Research Abstract |
水資源消費による環境負荷について新たに開発した指標である拡張ウォーターフットプリント(微分型ウォーターフットプリント)および占有ウォーターフットプリント(積分型ウォーターフットプリント)に関して、農業生産の評価のための現地調査を行った。調査地としては広大な霞ヶ浦流域に属する茨城県、水資源の比較的潤沢な新潟県および水資源の枯渇問題に長年対峙してきた香川県を選び、主に県庁の該当部署を中心に、水利用の詳細についてヒアリング調査を実施した。香川県では讃岐平野の水資源に重要な役割を果たしている香川用水についても調査を行った。それらの結果をもとに、調査地での水田作における水利用モデルを構築するとともに、モデルから上記の2つの指標をグリーンウォーター(降雨の直接利用)とブルーウォーター(灌漑水の利用)を区別しつつ算出する手法の具体的な部分について検討した。畑作については、過去に調べた徳之島のサトウキビ栽培のデータをもとに、灌漑を想定したサトウキビ栽培の水資源への負荷を評価し、日本LCA学会誌に原著論文を投稿し掲載されたほか、国際学会(The 23rd Pacific Conference of the Regional Science Association International)での成果発表を行った。またこれらの成果について、ウェブで公開するためのコンテンツの基本的な部分について作成した。 経済システムの変化を考慮した予測型のライフサイクルアセスメント(LCA)手法の開発については、一般均衡モデル・投入産出最適化モデルについてシミュレーションモデルの構築に向けての予察的な検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の大きな2つの柱は、経済システムの変化を考慮した予測型のライフサイクルアセスメント(LCA)手法の開発、および水資源消費の環境負荷に関する新しい指標の算出方法の確立とその応用である。後者について、新しい指標である拡張ウォーターフットプリントと占有ウォーターフットプリントを環境影響領域として確立させるための計算方法の検討や、天水であるグリーンウォーターと灌漑水であるブルーウォーターを区別した計算方法の検討はほぼ計画通りに進んでいる。しかしその検討に多くの時間を費やしたため、その応用に向けての現地調査や統計情報の収集については計画内容と比較して一部が未達成となった。具体的には、国内数か所について農業、特に水田稲作の水利用に関する現地調査を行う予定であったが、実施したのは茨城、新潟、香川の3か所にとどまった。一方、予測型のLCA手法の開発については、ある産業部門の生産量の変化に対する他部門への影響を推定するため、一般均衡モデルや投入産出最適化モデルの構築とともに、それらを用いたシミュレーションを行う計画であったが、モデルの構築を進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に計画通り遂行できなかった予測型LCA手法の開発について、産業部門の生産量の変化に対する他部門への影響を推定するためのシミュレーションモデルを構築するとともに、それぞれのモデルについてシミュレーションを行い、産業部門ごとに生産量変化の原単位を求める。そして、その結果をライフサイクルインベントリ分析に適用する。その過程で一般均衡ベースのモデルと投入産出最適化ベースのモデルを比較評価する。以上の結果を環境影響評価手法として確立し、事例として農業生産の環境影響評価を行う。 水資源消費についてはこれまで調査により収集したデータおよび検討した解析方法を用いて、国内の異なる地域の水田作についての水利用状況を解析し、その地域による持続可能性の違いを評価する。以上の解析を通じて、農業生産の持続可能性を総合的に論じるとともに、本研究で開発した手法についても、特徴を明らかにした上で手法としての適切性、操作性、汎用性などの評価を行う。またこれらの結果から農業の問題を摘出し、国内の農業政策あるいは経済政策・環境政策についての提言を行う。成果の発信については、学会発表、学術論文誌への投稿、ウェブサイトでの公開を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
データ整理や数値解析が予定より遅れたため、現地調査の回数が少なくなり、また調査地も茨城、新潟、香川と遠距離の場所がなかったため、全体として出張旅費の支出が少なくなった。そのことにより、データ整理に必要となる人件費の支出も2(人月)と、予定より少なくなった。 次年度使用額の主な内訳としては、主に本年度に行わなかった遠距離(北海道または九州)での現地調査およびデータ整理のための人件費を予定している。次年度は現地調査よりも成果発表を中心にする予定であったが、解析が遅れているため、本年度に予定していた調査の一部を次年度に繰り越す。その他には成果発表として、英文誌に投稿するための校閲の費用などに配分する予定である。
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Research Products
(3 results)