2013 Fiscal Year Annual Research Report
三次元パターンによる高分子スキャフォールドの硬さ制御
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25560186
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
角南 寛 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 先端生命科学研究院研究員 (50374723)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 細胞接着 / 細胞遊走 / 弾性 / 医用高分子 / 細胞足場 / パターン基材 / 再生医療 / ソフトマテリアル |
Research Abstract |
カバーガラス上に作製された軟らかい高分子膜の厚さを、10 μmから0.5 μm の間で変化させたところ、細胞増殖速度に大きな差異が観察された。このことは高分子膜の“厚さ”を変化させたことによって“弾性”が変化したためではないかと推察している。高分子膜を硬くすれば、細胞増殖が速くなることが一般的に知られているからである。 また、3Dパターン上に貼りつけられた厚さ約50 μmの平坦な高分子膜(PCL)の上で細胞培養を行ったところ、細胞が3Dパターンの凸が埋まっている部分に集まることが確認された。この原因を明らかにするため、AFMによって膜の形状像と位相像が観察された。その結果、膜は平坦であるにも関わらず、パターンの凸と凹が埋まっている部分で、位相が大きく異なることが分かった。この位相の違いは、パターンの凸と凹が埋まっている部分で“弾性”が異なっていることを示している。すなわち、この膜上の細胞の局在は、細胞が十分な“弾性”を求めて、硬い部分に集まったためと考えられる。別の形状の3Dパターンでも、パターンの凸と凹が埋まっている部分で“弾性”が異なることが分かった。 当面、この技術は再生医療用ポリマーへの展開を目指したいと考えている。細胞機能は細胞の接着するソフトマテリアルの“弾性”に大きく影響を受けることが知られており、再生医療の分野ではその“弾性”の調節が大きな課題となっている。本手法を用いれば、材料を問わず、平坦な膜上で細胞を望む形に配置し人工生体組織を形成させることもできる。通常の技術では開発が困難な毛細血管や適度なサイズの凝集塊になって初めて安定した機能を出す人工肝臓や人工膵島の開発を目指す。将来的には、人工関節のような平滑性や柔軟性、摩耗耐性、機械的強度などが同時に要求される有機・無機ハイブリッドな人工生体組織の開発も目指したい。
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