2013 Fiscal Year Research-status Report
細胞由来リポソームを用いたトランスポーター型膜タンパク質の機能解析技術
Project/Area Number |
25560204
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
安田 隆 九州工業大学, 生命体工学研究科(研究院), 教授 (80270883)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | リポソーム / 膜タンパク質 / トランスポーター / リンパ球細胞 / 界面活性剤 / 微小孔 / マイクロマシニング |
Research Abstract |
ヒトBリンパ球細胞の薬剤刺激により取得した細胞由来リポソームを、MEMS加工により製作した微小孔上に展開固定する技術を構築した。 まず、微小孔を有するダイアフラムを以下のようにして製作した。プラズマCVDによりシリコン基板の両面にSiN膜を形成した。次に、プラズマエッチングによりSiN膜を部分的に除去することで、片面に直径2 μmの微小孔を、他面にエッチング用の窓を形成した。そして、TMAH溶液を用いてシリコンの結晶異方性エッチングを行い、基板が貫通するまでエッチングを進め、微小孔を有するSiN製のダイアフラムを形成した。 次に、以下の手順でリポソーム膜を微小孔上に展開固定した。まず、微小孔を有するSiNダイアフラム表面にAPTESを反応させ、アミノ基を有する自己組織化単分子膜を形成した。次に、このアミノ基に細胞膜アンカーを結合させた後に、リポソームを播種し固定化した。そして、界面活性剤Triton X-100を作用させてリポソーム膜を部分的に溶解し、リポソーム膜の一部を細胞膜アンカーで保持した状態で微小孔上に取得した。その際に、リポソーム膜及び膜タンパク質の損傷を最小限に抑えるために、界面活性剤の濃度をできるだけ低く、作用時間をできるだけ短くする必要があることが分かった。この観点から、最適な界面活性剤の濃度及び処理時間を導出した。 さらに、リポソーム膜が溶解しその一部が微小孔上に残留したことをより明確化するために、リポソーム膜を蛍光色素DiIで染色し、リポソーム内部に蛍光色素Calceinを包含させた後に、このリポソームを固定化し、界面活性剤を作用させた。界面活性剤の作用後にCalceinの蛍光強度が低下したことから、リポソーム膜の溶解を確認した。一方、DiIの蛍光強度の低下は極めて小さく、このことからリポソーム膜が基板上に残留したことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の研究実施計画に記載した微小孔を有するSiN製ダイアフラムの構築、微小孔上へのリポソーム膜の展開固定法の構築などの計画内容を実施し、当初目標としていた成果を得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
グルコーストランスポータの一つであるGLUT1は、細胞内外のグルコース濃度に応じてグルコースの取り込みや放出を行う膜タンパク質であり、ほとんどの細胞の細胞膜に存在する。よって、ヒトリンパ球細胞から取得したリポソームの膜表面にもGLUT1が存在することが期待できる。そこで、リポソーム膜上のGLUT1により蛍光標識グルコース(2-NBDG)が輸送される様子を、微小孔上で蛍光観察することを試みる。ただし、本研究の実験系では透明なリポソーム膜及びSiNダイアフラムに垂直な方向から蛍光観察を行うことになるので、2-NBDGの蛍光を直接観察したのでは、GLUT1を通過する前の2-NBDGがバックグラウンドで蛍光を発するため、GLUT1を通過した後の2-NBDGのみを観察することは困難である。そこで、2-NBDGが発する蛍光によって励起し得る蛍光色素Dylight 680を選定し、以下に説明するように両分子間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET, Fluorescence resonance energy transfer)を利用する。 まず、リポソーム膜を保持したSiNダイアフラムの上下にPDMS製マイクロ流路を取り付ける。次に、上部流路をDylight 680溶液で満たす。そして、下部流路に2-NBDG溶液を導入すると、グルコースの濃度勾配によって2-NBDGがGLUT1を通過し、上部流路へ拡散する。このとき、励起光を照射して2-NBDG分子を励起すると、上部流路内では近接するDylight 680分子とFRET が起こり、励起されたDylight 680分子が蛍光を発する。このDylight 680の蛍光強度を測定することで、GLUT1を通過し上部流路に達した2-NBDGのみを検出する。
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