2014 Fiscal Year Research-status Report
細胞由来リポソームを用いたトランスポーター型膜タンパク質の機能解析技術
Project/Area Number |
25560204
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
安田 隆 九州工業大学, 生命体工学研究科, 教授 (80270883)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | リポソーム / 膜タンパク質 / トランスポーター / リンパ球細胞 / 微小孔 / マイクロ流路 / FRET |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトBリンパ球細胞の薬剤刺激により取得した細胞由来リポソームをSiN製ダイアフラムに形成した微小孔上に展開固定し、リポソーム膜上に存在するGLUT1(グルコーストランスポータの一つ)により輸送される2-NBDG(蛍光標識グルコース)を検出する技術を構築した。本研究の実験系では透明なリポソーム膜に垂直な方向から蛍光観察を行うことになるので、2-NBDGの蛍光を直接観察したのでは、GLUT1を通過する前の2-NBDGがバックグラウンドで蛍光を発するため、GLUT1を通過した後の2-NBDGのみを観察することが困難であると予想された。そこで、2-NBDGが発する蛍光によって励起し得る蛍光色素Dylight 680を選定し、両分子間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を利用することで、GLUT1を通過した後の2-NBDGのみを観察した。 まず、リポソーム膜を保持したSiNダイアフラムの上下にPDMS製マイクロ流路を取り付けた。次に、上部流路をDylight 680/PBS溶液で満たし、下部流路に2-NBDG/PBS溶液を導入した。励起光を照射して2-NBDG分子を励起すると、上部流路内ではGLUT1を通過した2-NBDGとDylight 680分子との間でFRETが起き、励起されたDylight 680分子が蛍光を発した。このDylight 680の蛍光強度を測定することで、GLUT1を通過し上部流路に達した2-NBDGのみを検出することに成功した。下部流路に導入する2-NBDGの濃度と蛍光強度の関係を定量的に評価した。さらに、GLUT1の直接阻害剤であるフロレチンを2-NBDG/PBS溶液中に添加したところDylight 680の蛍光強度の減少が見られ、すなわちGLUT1のグルコース輸送能の低下を本計測系により確認することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞由来リポソーム上に存在するトランスポーター型膜タンパク質により輸送される生体分子を計測する技術の構築に成功し、当初目標としていた成果を得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
リポソーム膜を微小孔上に展開固定する技術の再現性と確実性を向上させるとともに、展開固定したリポソーム膜をより直接的に観察する手法を構築する。現状のデバイスには多数の微小孔が形成され、この全ての微小孔をリポソーム膜で覆うことが困難であるため、微小孔から漏れ出た蛍光標識グルコースが観察に影響を及ぼす問題が生じている。また、より高精度の計測を行うためには100倍油浸レンズなどの高倍率レンズで観察する必要があるが、現状では下部流路が深いため焦点深度の浅い高倍率レンズを使用することができない。今後、デバイスの構造や製作法を改善することでこれらの問題点を解決し、計測の高精度化を目指す。 前年度までにグルコース濃度が高い場合のグルコーストランスポーターの輸送能を評価することに成功したが、今後は上述した計測の高精度化により低濃度領域におけるグルコース輸送能を評価することが可能になると思われる。よって、今後はより広範な濃度における輸送能を評価することで、トランスポーターによるグルコース輸送が促進拡散により行われ、その輸送速度がミカエリス・メンテン式に従うことを実証する。さらに、グルコーストランスポーターの直接阻害剤であるフロレチンを作用させる実験を継続して実施し、その濃度や輸送能変化などとの関係を導き、本手法がトランスポーター阻害薬の薬効評価等に応用可能であることを示す。 さらに、蛍光測定法以外の手法として、電気化学計測法などの可能性を探る。具体的には、リポソーム膜を固定化した微小孔近傍に微小電極を構築し、グルコース酸化酵素による酵素反応で発生する過酸化水素を電気化学的に計測することを試みる。
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