2013 Fiscal Year Research-status Report
スマートゲルを利用した完全合成型の”人工膵臓”の創製
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25560220
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
松元 亮 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 准教授 (70436541)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 高分子ゲル / ボロン酸 |
Research Abstract |
本提案は、インスリン依存型(I型)糖尿病を対象とし、静注針または挿入チューブの先端微小領域にゲルを配するのみの極めて単純な構造としたインテリジェント型のインスリン供給デバイスの開発とその機能実証を目的としている。最近我々は、タンパクを用いない完全合成系の水溶性高分子ゲルからなる自律型のインスリン投与システムの開発に成功した。これを用い、使用形態としては既存のインスリンポンプ方式に準じながらも、電源、モーター、マイコン、アルゴリズムなどをいずれも不要とし、材料自体の“連続的なフィードバック機能”によって、治療効果と安全性のうえでも既存技術を凌駕するものを目指している。25年度は、in vitroでの機能実証に取り組んだ。この目的のため、インスリン依存型のグルコーストランスポーターであるGlut-4を比較的多く有するマウス脂肪細胞を用いた。細胞は既存のプロコールによりマウス繊維芽細胞(3T3-L1)から分化させたものを使用し、インスリンには当該細胞に対して既に評価実績のあるヒト用の即効性製剤(ヒューマリンR注)を用いた。インスリンを内包したゲルを(デバイス形態とせず生身で)培養細胞中に様々なグルコース濃度下でインキュベートした際の系中グルコース濃度変化を観測した。その結果、(ゲルを介さない)直接投与の系と比較して、実質的に差のない系中グルコース濃度の低下が観測された。また、ウェスタンブロッティング法により、Glut-4の細胞膜表面へのトランスロケーションとの強い相関が知られるAktのリン酸化も同時に観測されたことから、我々の開発したゲルを介して放出されるインスリンの生理活性が健全に保持されることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り概ね順調に伸展している。デバイス形態の検討については引き続き検討が必要であるが、26年度に行うin vivo実験には一定の目処がついている。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度より、健常(野生型:WT)マウスならびに糖尿病(STZ)マウスを使用したin vivoでの機能検証を実施する。マウスの皮下や腹腔にゲル(デバイス)を外科手術で埋め込んだのち、中長期的な血糖値ならびにインスリン量のモニタリング、また、糖負荷(大量グルコースの経口投与)を与えた際の急性的な応答についても詳細なデータを蓄積する。インスリンの定量は市販のエライザキットを用いて行う。これまでの検討から、ゲルのインスリン放出挙動には若干の温度依存性が認められるため、デバイス先端部(または予備段階で使用する生身のゲル)の留置場所としては、皮下に比べて体温が安定している腹腔内を優先する。一方で、低侵襲性の観点からは、皮下での制御が望ましいため、これについても順次検討する。埋め込み試験の第一段階としては、正常マウスにゲルまたはデバイスを埋め込んで一週間程度モニタリングし、低血糖を引き起こさないことをまずは確認する。必要に応じてインスリン用量や基礎分泌量設定の最適化を行う。糖負荷による急性応答試験に際しては、あらかじめ正常マウスにおいて、評価/比較しやすい血糖値回復プロファイルを呈するプロトコールを確立しておく(例えば、30分後に600mg/dLまで上昇した後120分後までに緩やかに100mg/dLまで回復するパターンなど)。インスリンの定量については、可能であれば、自家(マウスインスリン)とデバイスを通じて投与されるヒューマリン(ヒト用)とを区別して行う。これにより体内動態のより定量的な解析が可能となるため、デバイスの機能実証のうえでは重要な評価となる。これらの検討結果を踏まえ、最終的には、in vivoイメージング装置を活用して、デバイスから放出される(蛍光修飾)インスリンのリアルタイム観測も行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
デバイス構造の最適化に多少の時間を要し、25年度中の大量製造に至らなかったため、研究費の投入時期としてはやや後ろ倒しとなった。 「デバイス材料費」、「有機試薬費」および「実験動物購入費」として必要十分と思われる額を割り当てる。また、知的財産権の確保、研究成果の社会還元、国民への開示のため、国内外の学会発表を積極的に行う。このため学術誌投稿費用、国内および外国渡航旅費を必要十分と考えられる規模で計上する。
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Research Products
(14 results)