2013 Fiscal Year Research-status Report
運動時の脳グリコゲン利用は持久性パフォマンスに関与するか?
Project/Area Number |
25560334
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
征矢 英昭 筑波大学, 体育系, 教授 (50221346)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脳グリコゲン / 長時間運動 / 持久性パフォーマンス / 脳内乳酸 / アストロサイト / 中枢疲労 / 糖代謝 |
Research Abstract |
脳は血糖のみならず,貯蔵糖質であるグリコゲン(Gly)由来の乳酸もエネルギー源として利用している.脳Glyは脳内のアストロサイトに局在し,神経活動時に乳酸へと分解される.私どもは,この脳Glyが長時間運動による疲労困憊時に減少することから,脳Glyの利用が持久性パフォーマンスの発揮に寄与すると想定した.そこで,本研究では脳室へのGly分解酵素阻害薬(DAB)投与による脳Gly分解の阻害が持久性パフォーマンスに及ぼす影響を明らかにすることを目的として実験を行った.成熟したWistar系雄性ラットの側脳室と外頸静脈にカニューレを留置し,Control群とDAB群に分けた.事前に生食,あるいはDABを脳室内に投与したラットに,疲労困憊に至る分速20 mのトレッドミル運動を課した.その間の運動持続時間を測定し,マイクロ波照射法を用いて屠殺した.マイクロ波照射による屠殺後,脳を5部位に分けてGlyと乳酸濃度を定量した.併せて,血糖,血中乳酸,筋・肝Gly濃度も定量した.DAB投与は,走行時間を20.6 %低下させ (p < 0.05),運動時の血糖値低下と血中乳酸値上昇のタイミングを早めた.このとき,運動誘発性の脳Glyの減少や脳内乳酸値の上昇はDABにより抑制されたが,筋・肝Glyは両運動群で枯渇しており,DABの影響は見られなかった.脳室内へのDAB投与により,脳内のGly分解や乳酸生成が抑制され,疲労困憊に至る長時間運動時の持久性パフォーマンスを低下させることが初めて示された.その際,末梢の疲労要因(筋・肝Glyの減少に伴う血糖値低下や血中乳酸値上昇)の出現を早めたことから,脳のGly代謝は末梢の糖利用を抑えながら持久性パフォーマンスを維持する機構を担う可能性が示唆された.今後.この作用機構を解明していく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、1年目に脳グリコゲンの利用阻害が持久性パフォーマンスを低下させることを明らかにすることができた。さらに、2年目に行う予定であった、高脳グリコゲンラットモデルの作成にも既に一部成功していることから、当初の計画以上に研究が進展したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目に見出した上述の減少のメカニズムを解明していくと同時に、高脳グリコゲンラットの持久性パフォーマンスを検討していく。
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