2015 Fiscal Year Research-status Report
海馬場所細胞の可塑性と樹状突起逆伝播スパイクの関係性の解析
Project/Area Number |
25560435
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
高橋 晋 同志社大学, 研究開発推進機構, 准教授 (20510960)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 場所細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ラットが新規な場所情報を獲得する過程で起こる海馬CA1野内の場所細胞の活動に着目し、その可塑的変化に関与する樹状突起逆伝播スパイクの役割について解明することを目指す挑戦的な試みである。 本年度は、昨年度に引き続き、マルチニューロン活動と脳波を同時に記録することで、場所細胞群の活動を解析した。そのために、複数の神経細胞活動と局所脳波を同時に記録するシステムを確立した。そして、そこから記録されたデータから、樹状突起逆伝播スパイクを推定する手法を確立した。そして、統計的解析法のベイズ推定を活用することによって、その計測されたデータから、脳内で表現されている情報を解読する手法を開発した。海馬において120Hz周波数帯に出現する特異的な脳波―鋭波―に着目し、場所細胞の活動パターンを解析した。その結果、動物が歩行している際の神経細胞の活動パターンが、立ち止まっている際には約10倍速の早送りモードで再現されていることを解明した。そして、その早送りモードで活動する神経細胞活動から、動物が将来に移動する軌跡を、動き出す数百ミリ秒前から解読することができた。加えて、鋭波中に発生する樹状突起逆伝播スパイクと将来の行動との関係性の解析を開始した。マイクロドライブ(電極留置装置)の改良も進まめることができ、本年度に登録した特許(第5771437号)「生体装着用電極」―脳波計測用の多点フレキシブル電極―を組み込むことで、樹状突起逆伝播スパイクと関連の深い脳波を同時記録することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経細胞活動の解析が順調に進展し、再活性中の場所細胞活動は、動物がこれまでに経験した移動に関する情報に加えて、動物がこれから行う状況に関する情報が含まれていることを解明することができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、スパイクの波形情報から細胞体、樹状突起の判別を行う。更に、相互相関法を活用して、細胞体から樹状突起へ逆伝播するスパイクを検出し、単一ニューロンの細胞体と樹状突起のペアを検出する。そして、ラットが樹状突起逆伝播スパイクの伝播確率と可塑性の関係性について、場所情報を中心として解析する。また同時に、樹状突起逆伝播スパイクを抑制し制御していることが示唆されている介在細胞活動についも解析する。
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Causes of Carryover |
本研究の目的である「海馬場所細胞の可塑性と樹状突起逆伝播スパイクの関係性の解明」をより精緻に達成するためには、光遺伝学を活用し、樹状突起だけを特異的に興奮あるいは抑制する追加実験が必要である。そのため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、光遺伝学を活用し、樹状突起だけを特異的に興奮あるいは抑制する追加実験を実施するために使用する。また、その成果を学会で発表し、本事業で実施したすべての研究成果を取り纏めた論文を投稿する。
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Research Products
(9 results)