2013 Fiscal Year Research-status Report
二重遺伝子導入システムを利用した特定神経路の機能解析
Project/Area Number |
25560436
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
小林 憲太 生理学研究所, 脳機能計測・支援センター, 准教授 (70315662)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Rhoファミリー / レンチウイルスベクター / アデノ随伴ウイルスベクター / Cre-loxP / 大脳基底核 |
Research Abstract |
複雑な神経回路網によって制御される脳機能を理解するためには、この回路網を構成する特定の神経路が持つ役割を分子レベルで解明する必要がある。低分子量GTP 結合タンパク質Rho ファミリーとその関連分子は、種々の重要な細胞応答を制御するが、脳機能における役割は未だ不明な点が多い。本研究は、我々が独自に開発した新しいタイプのレンチウイルスベクター(高頻度逆行性遺伝子導入ベクター)とアデノ随伴ウイルスベクター(AAV ベクター)を駆使して、特定神経路におけるRho ファミリーシグナル伝達系の役割を解明することを目的としている。 平成25年度は、まず、(1)各種Rho ファミリー(Rho, Rac, Cdc42)のドミナントネガティブ変異体、(2)Rhoの活性を抑制するp190RhoGAPのGAPドメインやC3ボツリヌス毒素、(3)Rhoの標的タンパク質であるRho-kinaseのドミナントネガティブ変異体、をそれぞれ搭載するAAV-Flex ベクターの作製を行った。続いて、Cre 遺伝子を搭載する高頻度逆行性遺伝子導入ベクターをマウスの線条体に注入し、大脳皮質や黒質緻密部などに逆行性に発現誘導した。そして、各種AAV-Flexベクターを大脳皮質と黒質緻密部に注入して、大脳皮質―線条体路と黒質―線条体路それぞれにおいて特異的に搭載遺伝子が発現誘導されるマウスを作製した。遺伝子発現を観察した結果、大脳皮質ニューロンでは発現が認められたが、黒質ドーパミンニューロンでは殆ど認められなかった。黒質―線条体路においては、逆行性の遺伝子導入効率が低い可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各種AAV-Flexベクターの作製は、概ね研究計画通りに遂行出来た。Cre遺伝子を搭載する高頻度逆行性遺伝子導入ベクターをマウスの線条体に注入し、大脳皮質や黒質緻密部に逆行性に発現誘導した。AAV-Flexベクターを大脳皮質と黒質緻密部に注入して、大脳皮質―線条体路と黒質―線条体路それぞれにおいて特異的に搭載遺伝子が発現誘導されるマウスを作製した。このマウスを用いて遺伝子発現を観察した結果、大脳皮質―線条体路では発現が認められたが、黒質―線条体路では殆ど認められなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、以下のような研究推進方策を予定している。 (1)大脳皮質―線条体路でRho ファミリーシグナル伝達系の活性が抑制されたマウスを利用した研究。大脳皮質―線条体路の機能異常は統合失調症と深く関与しており、統合失調症ではワーキングメモリの障害が認められることから、これらのマウスでワーキングメモリの障害が認められるか否かを解析し、新しい統合失調症モデル動物となりうるかどうかを検討する。 (2)黒質―線条体路でRho ファミリーシグナル伝達系の活性が抑制されたマウスを利用した研究。黒質ドーパミンニューロンにおいて、各種搭載遺伝子の発現が殆ど認められなかったことから、黒質―線条体路においては、逆行性の遺伝子導入効率が低い可能性が考えられる。従って、さらに力価の高い高頻度逆行性遺伝子導入ベクターを利用する、線条体に注入するベクター量を増やす、などの対策を行い、黒質ドーパミンニューロンにおける搭載遺伝子の発現誘導を検討する。 一方、大脳皮質―線条体路や黒質―線条体路といった限局した神経路でRho ファミリーシグナル伝達系の活性を抑制しても表現型が認められない可能性が考えられる。この場合は、AAVベクターを用いて各種搭載遺伝子を直接線条体や大脳皮質に発現誘導する。これらの神経領域は、大脳基底核ループを構成する主要なエレメントであり、運動や認知など様々な神経機能を調節している。これら特定の神経領域に焦点を当てて、Rho ファミリー関連分子の役割を解析する。
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