2013 Fiscal Year Research-status Report
言語的・パラ言語的・非言語的視線の記述システムの開発
Project/Area Number |
25580094
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Japan College of Social Work |
Principal Investigator |
斉藤 くるみ 日本社会事業大学, 社会福祉学部, 教授 (30225700)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢内 賢二 立正大学, 文学部, 准教授 (00579328)
相原 朋枝 日本社会事業大学, 社会福祉学部, 講師 (60334562)
渡部 淳 日本大学, 文理学部, 教授 (80366541)
槻舘 尚武 国際基督教大学, 付置研究所, 研究員 (80512475)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 視線 / 言語 / パラ言語 / 日本手話 / 舞踊 / 演劇 / 表情 |
Research Abstract |
本研究では、手話・舞踊・日本の伝統的芸術の中の視線がどこまで言語的・パラ言語的な振る舞いをするか、それらを能率的に説明できる記述方法が開発できるかを研究するものである。 25年度は日本手話の視線の文法を解き明かすためにアイトラッカーやビデオ画像の解析を用いて測定をした。現時点でわかったこと三年に一度開催される国際会議(Theoretical Issues in Sign Language Research)で発表した。内容は以下の通りである。10人の手話者(日本手話を母語とするろう者5名、日本手話を日常的に使っている聴者)と10人非手話者に同じ手話表現をしてもらって、アイトラッカー(eye-mark- recorder)で視線を測定し、さらに手話表現を撮影した画像をPV Studioのauto-tracing deviceを使って、瞳の位置と動きを処理することで測定した。手話表現の記録には、日本手話の教材として高い評価を受けているものを見せて、被験者20名に同じ表現をしてもらった。結果として以下の視線があることがわかった。 1.単独で代名詞、副詞の機能を果たす視線 2.指さしと共起することで代名詞の役割を果たす視線 3. 指さしまたは手によるサインと共起することで場所または時間を表す副詞の役割を果たす視線 4. 仮想の動きを追うことにより人や者の動きを表す視線 5. CL (classifiers) を伴って動きや形を表す視線 6. 述語動詞の格を表す視線 7. 人が見ることそのものを表す視線 上記1は自由形態素 (free morpheme)である。さらにそれなくしては不自然である韻律的形態素(prosodic morpheme)とそれなくしては非文法的となるは拘束形態素(bound morpheme)もあることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度は日本手話を母語とする手話者(ネイティブサイナー)の演劇・手話語りの映像を利用して、手話表出の中の視線を取り出した。また、インド舞踊の視線の研究をするために南インドケーララ州クーリヤッタムのレクチャー・デモンストレーション(Gopal Venu & Kapila Venu)に参加し、クーリヤッタムの視線が54種類あり、視線は明らかに記号化されていることがわかった。言語と視覚の関係については先行研究がなかったが、早期失聴・早期手話習得と手話にともなう視線の関係は明らかになっている(Bavellier, D. et.al)ため、これと音声言語の習得の一致は、視線の言語性の証明のひとつと言えると思われた。 26年には手話を母語とする被験者と手話未習得の被験者の視線をアイトラッカーで測定し、その結果は国際学会で発表することができた。また視線の言語的な働きを把握するだけでなく、手話者は視線の上下移動が、非手話者よりも大きいという発見もあった。このことは動きが水平に偏っているとされるヒトの視線について、上下の移動に潜在的な可能性があったことを意味する。この点については新たな発展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
手話者の複数の種類の視線を言語性を基準に分類して、音声言語話者にも言語的視線に極めて近いものが存在していることを示し、視線の言語記号化までの段階的メカニズムを解明し、視線の言語化は人間の言語能力のひとつであることを証明するのが研究の目的であるので、手話から進めたが、今後は非言語的・パラ言語的視線を抽出することを推進したい。 ビデオ画像の瞳の動きをトレースする方法を開発したために、実際の演者が被験者として確保できなくても、視線測定ができる可能性が出てきた。インド舞踊や歌舞伎等の伝統的に型が定着している芸術の視線や、演劇の視線などについても、測定を推進したい。感情の視線や見るための視線と、どのように区別するかが難しいと思われるので、分析の方法を検討したいと考えている。 手話の研究で発見した物理的に「見る」という実際の動作と、言語的・パラ言語的な「見せる」ための視線の関係を他の分野の視線研究に取り入れていきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
アイトラッカーの解析ソフトが新たに発売されることがわかり、新しいものが発売されてから購入することにしたため。 アイトラッカーの解析ソフト購入。
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