2013 Fiscal Year Research-status Report
原発震災後の人間の安全保障の再検討―北関東の被災者実態調査に基づく学際的考察
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25590030
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
重田 康博 宇都宮大学, 国際学部, 教授 (60330958)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原口 弥生 茨城大学, 人文学部, 准教授 (20375356)
清水 奈名子 宇都宮大学, 国際学部, 准教授 (40466678)
阪本 公美子 宇都宮大学, 国際学部, 准教授 (60333134)
西村 淑子 群馬大学, 社会情報学部, 教授 (80323327)
高橋 若菜 宇都宮大学, 国際学部, 准教授 (90360776)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 原発震災 / 福島第一原発事故 / 放射能汚染 / 北関東 / 被災者実態調査 / 避難者 / 人間の安全保障 / ガバナンス |
Research Abstract |
平成25年度の研究は、福島第一原発事故後の北関東地域の被災者がどのような問題に直面しているのかの実態調査に基づく分析、さらに当事者、地域社会、自治体、政府、国際機関、市民社会等の多様なアクターが問題にどのように対応しているのかのガバナンス研究を行い、「人間の安全保障」概念の検証と当事者のニーズを反映した政策提言を行った。具体的な研究実績については、以下の通りである。 1 被災者実態の調査については、(1)栃木県へ避難している方へのアンケート;2013年8月5日から8月30日発送協力:とちぎ暮らし応援会、1,017件発送107回収(回収10.5%)、(2)栃木県北地域乳幼児保護者アンケート調査:2013年8月から10月実施、那須塩原市38の保育園・幼稚園の園児保護者3,241世帯に配布、2,202世帯より回収(回収率68%)、 2 調査結果の報告会開催では、(1)アンケート報告会:①2013年11月24日アンケート回答者向け報告会(於:那須塩原市)、②2013年12月15日「原発事故による栃木県内への避難者、栃木県北の乳幼児保護者アンケート報告会―子ども被災者支援法のゆくえ―」(於:宇都宮大学)、③2014年2月8日「終わらない3.11原発震災の被害―北関東の被災者・福島県からの避難者調査から考える―」(於:明治学院大学) 3 研究会開催については(1)2013年4月30日全体会打合せ研究会、(2)2013年5月20日被災者・避難者アンケート打合せ研究会、(3)2013年10月6日人間の安全保障・ガバナンス研究会、(4)2014年2月20日ガバナンス・実態調査合同研究会 4 政策提言:(1)2013年4月3日作成・4月4日提出、復興庁・環境省宛「『原子力災害による被災者支援施策パッケージ』に関する再要望事項」、(2)県北市民団体、栃木県知事・県議会議長と面談「支援法」関連要望書提出
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1) 当初の計画以上に進展している。研究計画に照らし合わせ理由を述べる。1 人間の安全保障研究:先行研究の整理を開始し、“人間の安全保障”概念における隠された被災者、避難者の位置づけ、人間の安全保障問題とガバナンス問題との関連について、2013年10月6日「ガバナンス研究」「人間の安全保障研究」合同研究会にて検討。 2 ガバナンス研究:原発震災以降の被災者・避難者関連政策の推移、被災者・避難者の去就に影響を及ぼす関連分野の方法政策の推移、上記政策分野に関するアクターの抽出をし、市民社会・NGO・地域社会に焦点を当てて研究、上記合同研究、及び2014年4月2日「ガバナンス研究会」「実態調査研究会」にて考察した。 3 被災者の実態調査:研究代表者、分担者が実施した北関東(栃木・茨城・群馬県)避難者アンケート調査、関わってきた新潟調査内容を整理、公開報告会で報告、宇都宮大学国際学部附属多文化公共圏センター(CMPS)HPにおいて公開、実施されたことがなかった、北関東全三県の未就学児保護者を対象とした大規模なアンケート調査を実施、福島県を超える被災状況を明らかにした。栃木・茨城県に避難している避難者へは、昨年度に引き続き全戸にアンケート調査を行い、避難者の最新の状況を確認した。 4 研究会3回開催、研究成果は、公開報告会を宇都宮大学並びに明治学院大学にて2回開催(予定は1回)。上記アンケート結果・研究蓄積の整理は、公開報告会、HPにおいて広く社会に対して発表し、刊行・配布。別途、研究目的の提言も行った。この結果、マスメディアの注目を集め(新聞記事も22件)、関連学会からも論文寄稿の依頼もあった。日本平和学会、国際開発学会、国際学術会議などにおいても発表してきた。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は研究調書の計画通り、以下の方針で研究を進め成果を発表する予定である。 1 被災者実態調査は、25年度に行ったアンケート調査結果のクロス集計、クラスター分析、24年度調査結果との比較等を通して、同じ被災者の間でも直面する問題が多様化している実態を明らかにするために必要な、より詳細な分析を行う。またその分析結果は、今年度中に論文としてその成果を発表することを予定している。 2 ガバナンス研究は、1)の実態調査の結果として明らかになった被災者が抱える問題に対応する地域社会、市民社会・NGO、地方自治体、国、国際社会のアクターや、これらのアクターを取り巻く社会構造についての研究を進めるために、研究者、支援者、自治体の関係者等を話題提供者とする研究会を複数回開催する。同時に、これらの関係主体が震災後に展開してきた活動やその背景を記録するために、聞き取り調査とその記録化を進める。 3 人間の安全保障研究は、2014年6月に開催される日本平和学会で関連する部会を企画して、関係する研究者、市民団体関係者等との議論を深める機会を設ける。さらに、最終報告会の前に研究会を企画し、被災者を取り巻く問題の解決が進まない現状の理論的な分析を進めると同時に、その結果得られる理論的示唆を政策に反映させる方策を検討する。 4 最終報告会を年度内に開催し、上記の1)から3)の各研究活動のなかで明らかになった成果を発表する。同時に、被災者実態調査や理論的分析から明らかになった問題を、具体的な政策に関する要望としてまとめ、関連する自治体や省庁に伝えるとともに、CMPSホームページ上においても公表する。さらに本課題を研究した2年間の成果をまとめた報告書の刊行も予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度の未使用額は1,100,000円となったが、これは学内外の競争的資金に応募した結果、国立大学協会の「震災復興・日本再生支援事業」としても採択され、本課題のなかの一部の調査研究費や報告会経費等を当該事業予算として賄うことができたためである。 消耗品費(印刷用紙、ドラムカートリッジ、トナー等100,000円、旅費(研究会・報告会等の関係者旅費)500,000円、人件費・謝金(研究会話題提供者・アンケート分析作業委託者)200,000円、その他(論文抜刷印刷費・研究成果発表関連経費)300,000円
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