2013 Fiscal Year Research-status Report
内部競争の導入による地域伝統芸能の継承・発展のマーケティングに関する研究
Project/Area Number |
25590094
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
藤村 和宏 香川大学, 経済学部, 教授 (60229036)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 祭りのマーケティング / 変容の許容性と競争 |
Research Abstract |
平成25年度は、高知県の「よさこい祭り」と富山市八尾町の「おわら風の盆」を主な対象として、関係者へのインタビュー調査と祭りの観察調査を実施した。 よさこい祭りは昭和29年に、徳島の阿波踊りに対抗する形で、高知商工会議所有志により第1回が開催され、フランスで踊ったことを契機として衣装や音楽、振り付けの改革が次々と行われ、現在では、「鳴子を持ち鳴らしながら前進する踊り」、「よさこい節のフレーズを必ず入れる」、「チーム人数は150人まで」という三つのルールを守れば、その他のことは創意工夫をこらしてチームごとに自由に創作できるようになっている。また、大会として踊りや音楽等を評価しての順位付けも行われており、チーム間での競争を生みだす仕掛けが多く準備されている。さらに、平成4年に北海道札幌市で「YOSAKOIソーラン祭り」が開催されたことを皮切りに、「よさこい祭り」は全国各地に広がり、また全国各地のチームも高知のよさこい祭りに参加できるようになっている。この結果路して、よさこい祭りは高校野球における地方大会と全国大会という階層構造のようになっており、高知県は甲子園球場と同様に“聖地化”し、参加者および見物客を増やしていることが明らかになった。 一方、おわら風の盆のルーツは江戸時代にあるとされるが、大正時代に誕生した「おわら節研究会」の影響を受け、唄や踊りの改良が行われている。さらに昭和4年に、東京三越での富山県物産展における公演を契機に改良がなされ、画家の小杉放庵、舞踊の若柳吉三郎が創った「四季の踊り」は大人気となっている。このときのおわらが「女踊り」「男踊り」として継承され今日のおわら風の盆になっているが、旧町内間で唄や踊りは異なったものになっており、それぞれに魅力あるものが形成されている。これら結果として、見物客が増加していることが明になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、祭りやエンターテイメント・マーケティングなどに関する文献レビューを行うとともに、「よさこい祭り」と「おわらの風の盆」の関係者にインタビュー調査を行い、各祭りの歴史とその過程における変容についての資料を収集できた。さらに、二つの祭りの観察調査も実施でき、申請書で仮定した要因が祭りの発展に強くかかわっていることが確認できたので、研究はおおむね順調に進んでいると評価できるであろう。 また、この二つの祭りの観察調査を通じて、両者では観客の楽しませ方が異なることも明らかになった。おわらの風の盆では、観客の方から積極的に情報を集め、旧町間での踊りの違いを理解したり、踊りが行われる場所・時間を把握しなければ楽しむことができないが(交通整理をしている警察官や関係者でもどのタイミングで、町内のどのエリアで踊りが始まるのかを把握していないだけでなく、楽器が雨に弱いために、雨天の場合には中止になったり、時間変更が行われるので)、よさこい祭りは踊る場所と時間があらかじめ決めれているので、その場所で待っていれば楽しむことができるようになっている。すなわち、よさこい祭りは提供される祭り(受け身で楽しむことができる祭り)であるのに対して、おわらの風の盆は顧客の方から追い求めなければばらない祭り(能動的に楽しむ祭り)であるという違いがあることが明らかになった。したがって、おわらの風の盆には、ディズニーランドでミッキーを探し当てたときの喜びのように、望む旧町の踊りに出会い、見ることができたという喜びもあるようである。このようなことから、祭りの魅力は多様な次元から構成される可能性があることが新たに明らかになったので、研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、平成25年度に収集した資料を整理し、祭りの発展モデルの構築を行うとともに、他の祭りについてもインタビュー調査と観察調査を行い、それらの比較を行うことでモデルの精緻化を行っていく予定である。 さらに、海外の祭りについてもインタビュー調査や観察調査などを通じて資料収集を行うことにより、日本の祭り発展モデルがそのまま適用できるのかを検討していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予算執行ができる期間まで祭りの関係者に対するインタビュー調査を実施できなかったことに加え、祭りは全国各地で同じような時期に開催されることから、多くの祭りを対象として観察調査を行うことができなかったことから、交通費等の支出が予定よりも下回ってしまった。さらに、その結果として、インタビュー調査のテープ起こしや資料整理などのためにアルバイトを雇用する人件費の支出も少なくなった。 平成26年は、早い段階からインタビュー調査を行うとともに、計画的に国内の祭りの観察調査を行うことで、より多くの祭りについて観察調査を行う予定である。さらに、海外の祭りについても調査を行う予定であるので、前年度の交通費の残高はこれらの国内調査と海外調査の費用にあてる予定である。
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