2015 Fiscal Year Annual Research Report
内部競争の導入による地域伝統芸能の継承・発展のマーケティングに関する研究
Project/Area Number |
25590094
|
Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
藤村 和宏 香川大学, 経済学部, 教授 (60229036)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 地域伝統芸能 / 祭り / 競争 |
Outline of Annual Research Achievements |
地域伝統芸能は地域の歴史の象徴であるとともに、地域コミュニティの維持装置や地域に必要な人材の育成装置として機能する。さらに、地域活性化のための観光資源として活用可能なことから、継承・発展が必要とされる。しかし、地域経済の低迷、人口減少、高齢化などによって担い手が不足し、開催が困難になることで、地域伝統芸能だけでなく、コミュニティや経済も悪循環的に衰退している地域が多く見られた。このことから地域の内外から担い手を確保し、観光資源として活用しながら地域伝統芸能を継承・発展させていることが必要とされているが、そこにおいては地域伝統芸能自体のパフォーマンスを高め、魅力的なものにするとともに、担い手の組織も変革しなければならないことが明らかになった。 地域伝統芸能が“変容の許容性”を備えていることにより、担い手は競争心から創意工夫をこらして他の担い手や組織と差別化を図ることができ、パフォーマンスと魅力を高めるとともに、担い手を吸引することが可能になっている。さらに、時代の嗜好にあわせてパフォーマンスを改変することが可能なことによって、観客にとっても魅力が向上している。一方、“型の高度化”を備えていることによっても、他の担い手よりも高度な型を習得したいという動機が働き、担い手間の競争が促され、結果としてパフォーマンスと魅力が高めらている。しかし、この高度な型の習得においては、非常に高度な型を習得したベテランではなく、少しレベルの高い年長者が必要であることも明らかになった。さらに、地域外の人に担い手として参加してもらには、既存の地域内の担い手を中心とする組織を変革し、内外の人がその努力に応じて平等に扱われるようにする必要があることも明らかになった。一方で、競争の促進は、祭りの本来の目的を失わせたり、観客受けを重視するあまりに伝統の放棄につながる危険性があることも明らかになった。
|