2013 Fiscal Year Research-status Report
複数回の被災経験が織り込まれた人生から学ぶ「災間期」の家族戦略についての研究
Project/Area Number |
25590108
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
竹村 祥子 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (20203929)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 家族戦略 / 岩手県 / 三陸沿岸 |
Research Abstract |
本研究は、岩手県沿岸地域で複数回の震災にみまわれていながら、岩手県沿岸に生活しつづける女性たちのライフヒストリーを収集し、分析することで、家族の再建や新たな家族形成とその再生に有効であった家族資源・地域資源を明らかにし、家族の生き残り戦略と地域社会の再生とがどのようにかかわっていくのかを考察するものである。とくに岩手県沿岸の地域で生きる人々の人生や家族にとって活かされた地域資源の特性を明確にする。それと同時に「災間期」に生きる日本の家族にとっても、必要となる今後の家族をつなぐための家族戦略を析出する。 上記の研究目的にしたがって、平成25年度は、昭和8年の津波の記録を起点に、岩手県沿岸地域の状況に関する資料を収集した。聞き取り調査は、宮古市田老地区、山田町、釜石市在住の女性を中心に15名分の話を収集した。昭和8年の津波の経験者の話を複数聞いてみると、「浜」ごとに違う地域特有の習慣や当該社会の出来事を前提とした話があり、地域の習慣等を知らないと解釈のむずかしい事柄が出てきた。そこで、地域の習慣や「浜」の事情に精通する宮古市および盛岡市在住の自分史や郷土史を作成していた女性たちから、岩手県や三陸地方の習俗・習慣、地域特有の出来事についての情報や知識の提供をうけた。加えて、聞き取った女性たちの話の中にある、女性たちに共有されている家族のエピソードについての感想も伺っている。 先行研究文献の収集と分析は、26年度も続行の予定である。地域社会発展の経緯や地域産業の発展と家族の生活を支える資源との関連からその歴史的展開を把握し、類型化を行うことについて、当初の研究計画では、ア.近海漁業中心地域、イ.養殖振興地域、ウ.遠洋漁業中心地域、エ.先進産業都市と4類型を考えたが、「近海漁業と養殖」といったような組み合わせが、「浜」ごとにあるようで、類型の分類を考え直す必要が出てきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
女性のライフコースとのかかわりの深い出来事を郷土史研究文献から析出することについては、25年度中に終了できるものではなく、26年度も継続すべき課題としている。 地域の特徴に即した聞き取り調査については、ア.近海漁業中心地域として宮古田老地区、イ.養殖振興地域として山田、ウ.遠洋漁業中心地域として大槌、エ.先進産業都市として釜石を予定していた。25年度の調査では、大槌地域の対象者からの聞き取りは1名しか行えず、26年度は当地区の対象者を捜して聞き取り調査を続ける必要がある。聞き取り調査を進めながら、類型の有効性についても検討する必要が出てきている。
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Strategy for Future Research Activity |
ひきつづき文献や資料を収集し、25年度に行った聞き取り調査データから事例の特徴を明確にする。さらに聞き取り調査をすすめ、特に今回の震災への対応とこれまで経験された震災の経験とのかかわりがどのように語られるかに注目しながらデータを取りまとめ、岩手県三陸沿岸地域特有の特徴や震災をのりこえて生きる女性の人生行路に共通する要素を明らかにし、長期間を見通した家族支援策作成に寄与する知見を析出する。
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