2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25590118
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
片岡 えみ 駒澤大学, 文学部, 教授 (00177388)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
羽場 久美子 青山学院大学, 国際政治経済学部, 教授 (70147007)
渡辺 純子 京都大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (90261271)
井上 葉子 日本大学, 商学部, 准教授 (00339673)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 信頼社会 / 信頼 / ソーシャル・キャピタル / グローバル経営 / 寛容性 / 境界線 / 日系多国籍企業 / モンスター・ペアレント |
Research Abstract |
信頼社会の形成に関する学際的研究を目的に、社会学、国際政治学、経済学史、グローバル経営の各分野で協同して「信頼」概念の多様性と異同について検討すると同時に、各分野で信頼社会に関する以下の成果を得た。 1.信頼が必要とされる社会条件として、グローバル化と新自由主義経済の浸透による経済変動とそれに伴う格差拡大や労働の2極化、社会統合をめぐる諸問題を検討した。 2.信頼の定義と研究動向を理論的に整理し、信頼が合理性を根拠として展開したが、結果として矛盾を抱える。3.社会学の分野では、一般的な他者への信頼は、近隣住民とのソーシャル・キャピタルの強さや寛容性の価値によって醸成されていることを実証的に明らかにした。権威主義的な価値を背景とした別種の他者信頼ルートを見出すことはできなかった。4.国際政治における境界線をめぐる対立について、パリ、ベルリン、ボストン、東京、北海道、 京都、沖縄などで、欧州とアジア、ASEAN+3、米日中韓台湾などとの学術交流を重ね、境界線を巡る対立に対する各国の有識者政府関係者学者(トラック2)や大学研究者(トラック5)による平和的解決の課題を議論した。またゼノフォビアに関する知見を整理。 5.日系多国籍企業が海外で展開するグローバル経営について、中国社会での信頼形成ルートを現地調査し、資料を整理した。企業の海外進出の際の信頼関係の構築において、理論的サポートを検討中。6.教育分野での親と教師の信頼関係を阻害している要因の一つである日本の「モンスター・ペアレント」言説に関し、既存の親調査データを用いて、親の教師に対する要望と信頼感や価値態度を分析した。その結果、言説の示すところとは全く逆に、高学歴の親ほど教師を信頼・尊敬しており、教師への不信感からではなく信頼に基づいて親は学校への要望をだしていること、また親の教師に対する信頼感の規定要因を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.学際研究の共通の基盤である、信頼概念の検討にかなりの時間を要している。またそこから共通の課題を見出すことに時間を要している。各専門領域の知見をいかに統合できるかという点で、さらなる議論が必要である。 2.当初から研究費の不足を懸念していたが、実際に研究活動を始めると、欧米での調査旅費を支出するには研究費が不足しで実施できなくなった。その結果、この科研費のみでは海外研究者との交流が困難になり、活動の大半を国内での研究に切り替えざるをえなくなった。 3.テーマの範囲が大きいため、平成25年度は、信頼社会に関連する研究基盤を固めることを中心に、先行研究の動向と既存の調査データの再分析を実施し、一定の成果をおさめた。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.信頼と信頼社会をめぐる先行研究の検討を継続し、個人間の信頼、個人と国家の信頼関係、社会的弱者をめぐる信頼関係などをいくつかの類型に区分し、経済政策や社会保障政策、労働市場・労働政策をめぐる問題など具体的なテーマに即して実証的に検討する。 2.階層的、集団的、宗教的、国家的に異質な価値・文化・習慣をもつ集団間での信頼を醸成することを包摂と排除、バウンダリー研究、社会統合の観点から整理する。 3.寛容性の価値や文化資本が一般的信頼をいかに形成するのか、また信頼とソーシャル・キャピタルの関連性について、25年度の研究を継続して追及する。社会学分野でのグローバルエリートの調査は資金不足のため中止する。 4.グローバル経営の分野では、アメリカを中心に市民社会の信頼形成ルートを考察する。日系多国籍企業の米中における信頼関係の形成ルートについて比較研究を行い、市場参入戦略の策定および実行に寄与するモデルを構築する。 5.経済学史の観点から、個人間の信頼、個人と国家の信頼関係、社会的弱者をめぐる信頼関係などをいくつかの類型に区分し、経済政策や社会保障政策、労働市場・労働政策をめぐる問題など具体的なテーマに即して実証的に検討する。 6.国際政治学分野では、政府(トラック1)、実業界(トラック3)、 民間市民(トラック4)などのネットワークを国際的に確立し、対立の根源となる問題を分析し、解決方法を提示する。そしてお互いに対話を重ねていくことで、紛争の平和的解決の素地を確立する活動を実践的に展開する予定である。 7.教育における信頼形成のメカニズムの解明。 8.信頼社会とは何か、信頼社会を形成する社会的条件の検討を行い、整理する。9.信頼社会に関する研究プラットフォームの形成のための情報収集と調査を中心的に推進する。 代表者が以上を統括し、分担者は各専門領域の課題にもとづき研究を進展させる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費が少し不足し、アメリカやヨーロッパでの調査と資料収集を断念し、平成26年度の研究課題の遂行のために使用することにしたため。 信頼社会の形成に関わる研究を推進するために、年間3回の国内研究会を東京および京都で開催するとともに、研究代表者が海外のOECD機関への資料収集を行うために使用する。
|
Research Products
(9 results)