2014 Fiscal Year Annual Research Report
「苦難」をめぐる北海道家庭学校寮長藤田俊二日誌の教育思想史的研究
Project/Area Number |
25590227
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
河原 国男 宮崎大学, 教育文化学部, 教授 (00204751)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 北海道家庭学校 / 藤田俊二 / 教育実践記録 / 罪な苦難 / 魂への配慮 / 留岡幸助 / ヴェーバー / ユーモア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、北海道家庭学校寮長藤田俊二(1932~2014)の日誌を中心にした厖大な実践記録を調査し、一覧にして整理するとともに、未発表原稿「誰れが悪いのでもない」のフルテキストを公表し、その内容の教育思想史的意義を究明した。 藤田が生前に残した厖大な記録が1)日誌、2)報告、3)著書、4)論説等、5)その他、として整理できること、とりわけその日誌は、実践践記録としての性格を持つものであり、対話的な性格を備えるものであること、在職中30年にわたって記された日誌は、留岡清男校長時と1969年以降の谷昌恒校長時を境にできること、後者については、「寮長20年のくぎりに」を発表した1983年を境にできることを明らかにし、初期・中期・後期の時期を区分できることを指摘した。 こうした実践記録の整理を経て、最終年度においては、中期に位置づけられる少年についての日誌を基に再構成された未発表原稿の主題とその意義を、該当する日誌の内容との比較検討によって明らかにした。その結果、少年の成長のありようが記述されるとともに、明白が罪過を少年に帰することが困難にもかかわらず引き受けなければならない「苦難」の心の様相が記述されて、いかにその心を配慮し、自立に向けて援助していくか、という問いが根本的次元で把握されてー藤田自身は明確な自覚は示さなかったがー教育の課題として提出されていることを究明した。そうした「罪なき苦難」に対する徹底した関心が、藤田において顕著であることを北海道家庭学校創始者留岡幸助、戦後の校長谷昌恒と関連づけながら明らかにしつつ、マックス・ヴェーバー「古代ユダヤ教」において提示されている「罪なき苦難」の概念を参照しつつ、普遍史的意義があることを指摘した。
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Research Products
(3 results)