2013 Fiscal Year Research-status Report
NGOとの協同によるタイの外国人子女教育の新展開‐「時間デザインの原理」の追究‐
Project/Area Number |
25590235
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
志賀 幹郎 電気通信大学, 国際交流センター, 准教授 (70272747)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 比較教育 / 教育社会学 / 外国人子女教育 / タイ / NGO |
Research Abstract |
タイでの学校調査と地域調査が平成25年度の研究活動の中心であった。学校調査については、予備調査結果について検討した後、タイのサムット・サコーン県スリスッタラム(Srisuttaram)校において聞き取り調査および参与観察を行った。比較事例調査として、サムット・サコーン県内の学校数校に対する聞き取り調査および参与観察も行うことができた。さらに、調査協力機関である外国人労働者支援団体LPN(Labour Rights Promotion Network Foundation)の尽力により、ラチャブリー県内でも聞き取り調査および参与観察を行うことができた。地域調査については、サムット・サコーン県のミャンマー人集住地区で聞き取り調査を行った。 これらの調査により、ミャンマー人の子どもの就学状況を把握することができ、就学においてNGOが果たしている役割を理解することができた。現状を総括すれば、タイでは、外国人の子どもの就学を根拠づける法整備は進展したものの、実際には就学が進まない状況にある。しかし、一方では就学を進めようとするNGOなど関係者の奮闘が見られるのである。今次の調査データは、タイにおける外国人の子どもの就学をめぐるダイナミズムを示すものとして重要性があると考えている。 また、LPNから、ミャンマー人の子どもの就学を進める上で教育行政、学校、NGOがどう連携しようとしたかを示す資料の提供を受けた。外国人の子どもを受け入れる際の問題の所在を具体的に明らかにする資料であるが、こうした教育現場での具体的な動きを示すローカルな資料は当事者からの提供によらなければ入手が困難であり貴重な資料である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は3年計画であり、平成25年度の第1年度が終わったところである。本研究に先立ち平成24年に予備調査を行っていたことから、第1年次のタイ渡航調査に際し、タイの研究協力者(Supawan Annanab キングモンクット工科大学ラカバン校 ほか)および研究協力機関のNGO(LPN: Labour Rights Promotion Network Foundation)から多くの便宜を図ってもらうことができた。そのおかげで、調査では概ね所期の目的を達することができた。 前項に記載したとおり、サムット・サコーン県に加えてラチャブリー県でも学校調査を行うことができたこと、外国人の子どもを受け入れる際の問題の所在を具体的に明らかにする資料を入手したことは当初予定を超える成果として考えることができる。一方、学校調査において教育行政関係者への聞き取りを十分に行えなかったことと、学校調査に比べて地域調査に割いた時間が短かったことは当初予定を下回る結果と受け止めている。こうした当初予定との若干の違いはあるものの、全体としては第1年度は予定どおり研究を進めることができた。 本研究は、第2年度に、タイでの調査資料および入手資料を分析するとともに、タイにおける外国人の子どもへの教育支援の推移をみるための渡航調査を行う。そして、日本での外国人の子どもへの教育支援に資する視点を提示するところまで進める予定である。最終年度には、NGOとの協同など教育体制整備に貢献できるように成果を広く公表し検討を加えていくこととしている。こうした今後2年間の研究計画を考え合わせると、現在までの達成度は、順調に25%ほど達成された段階ではないかと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究第2年度の平成26年度には、まず前年度の現地調査の際に記録したデータの分析および入手した資料の翻訳を行う。 それをもとに、外国人の子どもの就学(習)義務化について研究を続けている所澤潤(東京未来大学)らから専門的知見の提供を受け、NGOの教育支援について日本の状況と比較検討し、特徴を明らかにする。さらに、群馬県で外国人児童・生徒教育支援に関わっている連携研究者小池亜子(国士舘大学)らと協力し、日本での外国人の子どもへの教育支援に資する視点を提示する。 また、タイのNGOであるLPNの教育支援の特色を再検証しLPNの教育支援の継続性と変化を確認するために現地調査を行う。その際、前年度の調査では不十分だった教育行政関係者からの聞き取りや地域調査を行いたい。地域調査ではサムット・サコーン県出身で調査地域の社会状況に詳しい研究協力者サランヤー・マネーロ(Saranya Maneeroj チュラロンコーン大学)から知見の提供を受ける。調査結果は、NGOの教育支援の特徴や日本での外国人の子どもへの教育支援に資する視点を再検討するために用いる。 平成26年度中に本研究の中間的な成果を報告し、検討を加える。最終年度には、研究成果内容を深化させ国際学術研究会などで広く成果を報告する。現在、日本でもミャンマーへの関心は高まっている。教育学研究者だけではなくNGO関係者やタイのミャンマー人に関心を持つ方にも参加を呼び掛けて、タイから海外研究協力者やNGO関係者を招きタイにおけるミャンマー人の子どもたちの現状と教育支援策について講演をしてもらうことも考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
タイでの現地調査を行う調査者として予定していた日本在住研究者が、日程の都合で渡航できなかったことと、タイ調査での記録資料と入手文献資料が予想以上に多量にのぼったため整理に時間がかかっており、当該年度に行う予定だった翻訳作業を次年度に延ばさざるを得なくなったことにより、次年度使用額が生じた。 当該年度におけるタイ調査での記録資料および入手文献資料の整理が済み次第、翻訳作業および報告活動を行う。そのための翻訳料と報告活動にかかる諸経費に充てる。
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Research Products
(1 results)