2014 Fiscal Year Research-status Report
転換期の大学教育における学生支援の全体像と位置づけ
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25590250
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Research Institution | National Institute for Educational Policy Research |
Principal Investigator |
川島 啓二 国立教育政策研究所, 高等教育研究部, 部長 (50224770)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 憲司 東京工業大学, 学内共同利用施設等, 教授 (50225702)
橋場 論 福岡大学, 公私立大学の部局等, 講師 (50549516)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 学生支援 / ピアサポート |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度については、学生支援の全体像を、それを構成する諸要素の構造とともに検討した。学生支援の現状は、理念、目的、方法の異なる諸領域の混成となっているが、学生の位置づけ、施策の手法、担当者の役割といった指標ごとに、事例との突き合わせによる往還作業を通して、学生支援の総合的な構造モデルを構築するための考究を進めた。 学生支援の全体像を構成する核ともいうべきピア・サポートについては、全国の四年制大学を対象とした質問紙調査を行った。具体的には、取り組みを担当する組織の編成、学生スタッフの選考や研修といった運営方法など、組織運営的側面に着目した質問紙構成とした。回答した284機関のうち、ピア・サポートに取り組んでいると回答したのは136機関(47.9%)、取り組んでいないと回答したのは148機関(52.1%)であった。 次に、担当者調査に基づき、ピア・サポートによって実際に達成できたと考える成果についてまとめると、「学生ならではの効果的支援」や「学生スタッフの成長」については、9割近い担当者が成果を実感していることが看取できた。 本研究の最終的な目的は、学修成果を焦点とする現代の大学教育改革における、学生支援の位置づけを明らかにすることである。学生支援は、大学教育の基盤を支える手段的なものなのか、学修成果を展望できる目的的な教育関与なのか、はたまた、個別の能力に還元できない人間的成長を促す「場」の実現なのか、あるいは、これらの複合的なものであるならその相貌はどのようなものになるのか、ファンダメンタルな考究と理論的定位をめざすものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
学生支援を含めた大学教育改革をめぐる状況変化のスピードは加速度的に速さを増しており、本研究の課題設定時のままの問題意識だけでは不十分な点が出てきている。例えば、与党の教育改革実行本部の提言から、キャリア教育やインターンシップの強化が打ち出され、学生支援領域においてもキャリア支援の比重が増している。また、中小私立大学の学生募集に係る経営問題の深刻さも増しており、それらの大学群は経営的な動機から学生支援を強化・充実させている。そういった状況下での、学生支援の全体像を考える場合、単に多領域から構成される学生支援を、諸ディシプリンを越えて統合的に捉えるといった視点だけでは不十分になってきており、大学全体の教育システムや経営戦略からの観点が求められるようになってきており、研究枠組の再構成に時間をかけているため。
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Strategy for Future Research Activity |
大学全体の教育システムや経営戦略からの観点が求められるようになってきているので、国内の好事例のヒアリングを強化させたい。その際には、教育と学生支援をどのようなコンセプトや枠組みで統合的な展開を図ろうとしているのか、組織的な体制をどのように構築しようとしているのか、改革プロセスはどのようであったのかといった観点から、現在進みつつある新しい状況を明らかにし、モデル開発の精緻化を進めたい。研究成果のまとめの際には、近年の大学ガバナンス改革を視野にいれつつ、大学組織の在り方や大学教育への学生参加にかかる先行研究からの知見の取り入れも必要であると考えている。
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Causes of Carryover |
先述のように、大学教育改革と本研究を取り巻く周辺環境の急激な変化から生じた、新たな動きを受け止めて、研究グループ内での輻輳した議論をまとめ、それを研究枠組に取り入れる作業に時間を要した。その関係から、海外調査についても、スケジューリングがうまく噛み合わず、26年度中に実施することができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外調査の可能性を求めつつも、先述したように、大学全体の教育システムや経営戦略からの観点を踏まえた事例調査を、組織的に展開する必要がある。そのための調査旅費や会合のための旅費等に充当する予定である。対象が5校程度で、2名ずつ担当するとして、80万円程度、研究会の会合旅費・謝金として全体で70万円程度、残りを文房具等の諸経費に充当する予定である。
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