2013 Fiscal Year Research-status Report
聴覚障害児童の国語科教科書構文理解のための補助教材作成に向けた検討
Project/Area Number |
25590286
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
谷本 忠明 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (90144790)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 聴覚障害 / 小学校国語科教科書 / 構文 / 説明文 / 物語文 / 単文 / 複文 / 文節 |
Research Abstract |
本研究は、聴覚障害児童における国語科学習上の困難の改善のために、国語科教科書に使用されている構文の特徴について検討する事を中心に、指導上の手立てを考える基礎的資料を得る事を目的として実施するものである。 本年度は、小学校国語科教科書における「読むこと」の単元である「物語文」と「説明文」を対象として、単元中で用いられている構文の形態的な特徴について明らかにすることとした。 5社(学校図書・教育出版・光村図書・三省堂・東京書籍:アルファベット順)の平成23年度版文部科学省検定済み国語科教科書小学校1年~6年までの計53冊に採択されている物語文と説明文(のべ数で物語文133単元、説明文103単元)を対象として、1文ごとの文節数を求め、集計を行った。各文の文節数を求めるにあたって、会話文については、文中に会話部分が「」で示されている場合は「」を1文節の扱いとし、単独の会話文は対象外とした。さらに、擬音語、擬態語などが単独の文として示されている場合や、主語などの文節の省略が見られる文において、省略語を補うと文の意味がかえって分からなくなる場合などの文についても除外した。 各文は、主語と述語の文節を最初に位置づけ、そこに付随している補助成分を文節単位で示した。各文は、まず単文と複文に分け、複文はさらに単文に分割し、必要に応じて文節を補った。複文は、複文前部分(単文に分けた際に、最後の文より前にある文で、複数の場合もある)、複文後部分(最後に位置する単文)の3種類に分類し、主語と述語に付随する補助成分の文節数を求めた。補助成分は0~4文節(5文節以上を含む)までとし、最大10文節までの形で各文について集計を行った。 主語および述語の補助成分の文節数から単元の種類、学年、文の種類による違いを検討した結果、主語と述語部分、文の種類、単元や学年で付随の仕方に違いが見られることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、教科書に用いられている構文を、主語と述語に当たる文節を含めて8文節までと9文節以上に分けて扱うこととしていたが、予備的に作業をしていく中で、多くの構文が複文として用いられており、接続助詞や連用形などで連結されていることから、これを形態上の1文として扱う事には、難しさがあると考えられた。 そこで、大きく構文を単文と複文とに分け、特に複文において主語の部分などで見られる語の省略がある場合には、それを補い、複文を複数の単文に分割して扱った。こうしてすべての構文を単文化し、主語と述語を修飾する補助成分に当たる部分を文節を単位として表計算ソフトに入力し、補助成分の数的な傾向について、単文、複文前部分(複文を単文に分割した際に、最後の文よりも前に位置する文で、複数ある場合は、いずれも前部分とした)、複文後部分(複文を単文に分割した際に、最後の部分に相当する単文)の3種類の単文について比較検討を行った。 その作業の過程において、補助成分を4文節、1文では10文節までの扱いとして、入力と集計を行った。 これらの作業は当初の計画とは幾分異なるものの、ほぼ当初の予定に沿ったものとして進めることができ、また、物語文と説明文の違い、学年ごとの傾向、単文と複文の傾向、出版社ごとの傾向など、様々な観点で検討できるような集計表の作成までを行う事ができた。さらに詳しい傾向については検討の余地があると思われるが、上記分析を通して、主語の補助成分が少なく、述語の補助成分は学年によって多くなる傾向があること、物語文に比べて説明文の補助成分が多くなる傾向があるという結果を得たことから、上記の達成度とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、教科書に用いられている各単元の構文については、1年から6年までの全出版社の説明文、物語文に関して、最大10文節までの形で、単文、複文前部分、複文後部分の形での分類入力が終了し、基礎的な形での集計を終えることができた。今後は、これらの結果のさらなる整理を行い、全体としての傾向をわかりやすくまとめていけるように作業を継続することとする。 あわせて、今後は、実際に用いられている修飾部分(補助成分)に目を向けて検討していくこととしたい。しかし、今回の集計過程からも、構文に使用されている語はきわめて多様であることが窺え、今後実際に作業を進めた結果として、一定の傾向が示せるかどうかは不明ではある。とはいえ、聴覚障害教育における国語科指導を成立させるために、聴覚障害児童が持っておくべき「基本構文」としてどのような構文を想定すればよいかを明らかにすることを視野に入れて、主語や述語に付随して使用されている補助成分の内容にも目を向けた形での国語科学習上の構文について検討することとしたい。
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