2014 Fiscal Year Research-status Report
聴覚障害児童の国語科教科書構文理解のための補助教材作成に向けた検討
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25590286
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
谷本 忠明 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (90144790)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 聴覚障害児童 / 国語科教科書 / 構文 / 物語文 / 説明文 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、聴覚障害児童が国語科の学習を進めるにあたり、まずは小学校国語科教科書に書かれている文の意味がわかることが出発点として必要と考え、教科書で用いられている構文の特徴を検討することにより、教科書理解につながる手立てを考える基礎的資料を得る事を目的としている。最終的には、教科書の基本構文は何かを明らかにすることを目指し、説明文と物語文について、全出版社、全学年の教科書単元中の文を文節ごとに区切る形で、構文の特徴を探ることとした。 これまで、構文をできる限り単純化するための手立てとして、主語-述語と、その補助成分から成る単文の形に分解し、出版社、学年、物語文と説明文ごとに各文の文節数の集計表を作成した。その際、複文(ここでは、複数の単文が接続助詞や連用形でつながって1文を構成している文を指す)は単文に分解し、単文と、複文の前部分と後部分の3つの種類に分け、各単元において多く用いられている構文を、頻度の高いものから上位3位を目安として抽出した。その結果、物語文と説明文に用いられている構文の形態的な特徴として、物語文では主語には補助成分が付かない文が中心であるが、説明文では中学年以降で主語に補助成分が付随する形が多くなること、述語については、説明文は低学年から、中学年以降では説明文、物語文ともに補助成分が増えることが示された。他方、用例から見た基本構文の検討については、抽出文数の総数がきわめて多数となり、基本構文の用例としてどのように集約していくかについては更なる検討課題が残された。今回、構文の形態的な変化が特に中学年以降で生じていることが示されたことを踏まえ、低学年段階の文例を中心として、基本構文と考えられる構文型と、そこで用いられている用例との関連について再度検討し、集約化のための視点を探ることが必要であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
聴覚障害児童が、国語科学習で、まず教科書の文の意味が理解できるようになるためには、そこで用いられている多様な構文を、主語と述語を同定しつつ構造を読み取れることが出発となるという考えに基づき、教科書で用いられている頻出構文を抽出し、各出版社および学年と、物語文、説明文ごとの集計作業を行ってきた。 また、一見複雑に見える構文も、単文という最小単位に分解する事で、意味の把握の手がかりとなると考え、単文に分解する作業を行い、構文をできるだけ単純化して集計する作業を行ってきた。その結果、抽出された構文に関して、主語と述語に付随する補助成分の文節数の側面からは、構文の形態には一定の傾向があることが読み取れた。 他方で、単元中で多く用いられている構文を抽出し、それを基本構文として集約化を図ろうとした際に、各学年で抽出された構文数が、物語文、説明文ともに複数の単元の集約となることから、当初の予想以上の数となるとともに、そこで用いられている用例も多様で、これらを集約していくための手立てについて、改めて検討する必要性に直面している。形態的な側面からは、基本的な構文としてどのような構文が用いられているかを挙げることができるが、構文の語彙や表現形態などを取りこんでどのように集約していくかについては、改めて検討が必要な状況である。当面は、構文型が中学年以降で変化する事を踏まえて、低学年段階での構文内容について、基本構文の選定を目指した作業を行うことで、次の段階への手がかりとしたいと考えている。 こうした状況から、上記の達成度としたものである。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、上で述べた低学年段階での構文の集約作業を進めることとする。その作業で得られた代表的な構文について、主語と述語にかかる補助成分として用いられている文節相互の関連性や用例について整理を行う。その結果として得られた内容を、中学年以降の集約化の手がかりに適用しながら、基本構文と考えられる構文の選定を行い、それに基づき、構文の構造と意味を理解するための手がかりを児童に与えられるような内容について検討していきたい。 上記の作業で得られた内容については、文の形態(主語-述語とその補助成分の関係がどうなった文なのか)について理解する手がかりとなる内容と、用いられている語彙(意味や活用、書き言葉でよく用いられる表現形態など)に関する情報との両側面から、構文理解につながる資料(試案)の作成に結びつけていきたい。特に、構文を構成する各文節のうち、述部に補助成分が付随する構文は低学年段階から多く見られており、構文理解の上でも重要となると考えられることから、文節相互の関連が捉えられるような視覚的な手がかりの示し方についても視野に入れつつ検討したい。
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