2014 Fiscal Year Research-status Report
歪みゲルマニウム二次元正孔ガスを用いた量子ドット単正孔デバイス開発
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25600079
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
澤野 憲太郎 東京都市大学, 工学部, 准教授 (90409376)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 歪みGe / 単正孔デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に開発した薄膜SiGeバッファー層の上に、歪みGeチャネル層を成長させ、2次元正孔ガスを形成し、ホール測定によって電気伝導特性評価を行った。ゲート制御に向け、ドーピングは行わず、Geチャネル上のSi/SiGe表面キャップ層を20 nm程度に薄くした。その結果、低温で5000 cm2/Vs、室温で2000 cm2/Vsに近い高移動度を得ることができた。この構造をもとに、原子層堆積法(ALD)によりAl2O3ゲート絶縁膜を形成し、ゲートを印加しながらホール測定を行った。広い温度範囲で、ゲートによる正孔密度の大幅な変調が可能となった。正孔濃度は低温で一桁程変調でき、キャリアを空乏化することに成功した。また、正孔移動度の正孔濃度依存性から、理想的な不純物散乱とフォノン散乱、ラフネス散乱が観測された。また、ゲートバイアス掃引時に、移動度と正孔濃度の関係にヒステリシスは全く見られなかった。これらの結果は、キャップ20 nmの構造において、Al2O3ゲート絶縁膜界面における界面準位、固定電荷等による散乱は無視できることを示している。 また、低温において、弱磁場領域での磁気抵抗を、ゲート電圧を変えながら測定することにより、スピン軌道相互作用がゲート電圧、つまり電界によって大きく変化することが示された。 さらに、歪みGeチャネルにAl2O3を直接形成した構造も作製し、ホール測定評価を行った。キャップ層のある構造と比較し、移動度が半分以下に減少してしまったものの、2次元正孔ガスの形成には問題がないことが分かり、ゲート電圧によるキャリア変調も確認できた。しかしながら、キャリア濃度増加に対する移動度の低下の傾きが、通常のラフネス散乱に起因するものよりも顕著に大きく、GeチャネルとAl2O3の界面特性の改善が必要であることを示す結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、SiGeバッファー層上に良質な歪みGeチャネル層を成長し、さらにALDによってAl2O3ゲート絶縁膜を堆積、ゲートバイアス印加による正孔濃度の制御を可能とした。正孔移動度の正孔濃度依存性を系統的に評価し、各種散乱要因を明らかにするとともに、正孔濃度を一桁減少させることに成功し、ゲート制御量子ドット形成に向けて大きく前進できたと言える。ただ、当初計画よりはやや遅れているので、今後早急にドット構造作製のプロセスに移る必要がある。なお、良質な歪みGe2次元正孔ガスのゲート制御実現により、スピン軌道相互作用にかかわる、物理的に興味深い結果を得ることができ、意義深い成果であると言える。この議論は、単正孔デバイスにおいてスピン制御を行う際に重要な知見となる。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、これまでにゲート制御に成功しているキャップ層20 nmの構造においてドット構造のプロセスに移る。それに加え、よりゲート制御のしやすい、キャップ層なしの構造の検討も並行して進める。これまでに明らかとなった課題として、GeとAl2O3の界面には、固定電荷、もしくはラフネス等のキャリア散乱要因が存在することから、当初計画通りに、薄膜のSiキャップ層の挿入効果を調べる。ここまで利用しているGe上にSiキャップ層を挿入し、その上にAl2O3膜を堆積することで、特性の改善、特に移動度の劣化抑制を目指していく。Siキャップ層の結晶成長、歪み評価、Al2O3膜の最適膜厚、成膜条件を確立する。 このプロセス技術の確立に続いてGeドット構造の作製、評価に移る。電子線描画リソグラフィー、ドライエッチング、オーミックコンタクト形成等のプロセス最適化を進める。パターンの決定は、先端デバイスシミュレーションにより、量子ドットの形成される最適構造を決定する。特に、トンネル確率、閉じ込め量子準位などにも影響する有効質量は、キャリア密度や歪みに大きく依存し、またゲートの誘電率は膜質、界面構造にも大きく影響されることから、実験との比較を通し、十分に検討が必要となる。 以上の検討を進めるのと並行し、作製した構造のデバイス評価を行う。最終目標として、低温測定においてクーロンブロッケード振動観測を目指す。
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Causes of Carryover |
年度末にアルバイトの謝金支払いが予定より少なく、残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
メタノール等の薬品に使用する。
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[Journal Article] Cubic Rashba Spin-Orbit Interaction of a Two-Dimensional Hole Gas in a Strained-Ge/SiGe Quantum Well2014
Author(s)
Rai Moriya, Kentarou Sawano, Yusuke Hoshi, Satoru Masubuchi, Yasuhiro Shiraki, Andreas Wild, Christian Neumann, Gerhard Abstreiter, Dominique Bougeard, Takaaki Koga, and Tomoki Machida
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Journal Title
Physical Review Letters
Volume: 113
Pages: 086601
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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