2014 Fiscal Year Research-status Report
電波観測実験用ウルトラコールドウインドウの開発研究
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25610064
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
田島 治 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (80391704)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 電波観測 / 超伝導検出器 / 極低温 |
Outline of Annual Research Achievements |
電波観測実験では、多数の超伝導検出器を搭載した大口径の受信機を用いる。大口径をもつことと、超伝導検出器を極低温状態で使用することは相反する要求である。受信機の窓(ウインドウ)材からの熱放射の影響で、検出器を十分に冷却できないという困難が生じている。対策研究として、熱放射を遮蔽する断熱フィルターの開発が世界中で精力的に行われているが、困難の解決には至っていない。本研究は、従来研究とは真逆のアプローチ「ウルトラコールドウインドウによって、熱放射を大幅に削減すること」に挑戦し、現状を打破する。 熱放射の大部分を担う赤外・可視光領域においてウインドウ材は不透明なので、ウインドウの受信機内面側が冷却されていれば良い。当初の計画では、ウインドウを2重構造にして中間層を液体窒素で満たして冷却する予定であった。液体窒素を長時間保存するために断熱方法を検討していたところ、新たなアイデア「Radio-transparent multi-layer insulation (RT-MLI)」を発明した。電波を透過する薄い材料を多重化することにより、真空多層断熱を実現する。本発明は、電波に対しては透明だが、赤外線を高い効率で実効的に反射する。つまり、冷凍機にかかる負荷をも劇的に低減するという副作用をも有する。 昨年度の原理実証に引き続き、本年度はその応用研究を進めた。具体的には、ウインドウの結露防止である。従来の受信機ではウインドウの外側も冷却されてしまうため、表面に水滴が結露してしまい、電波観測に障害をきたすことが多々あった。対応策として、感想空気を循環・送風などの策がとられていたが、屋外での使用を困難にしていた。RT-MLIは実効的に赤外線を反射するため、ウインドウ外側の過剰冷却を防ぎ結露防止策として有効であることを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で開発したRT-MLIを応用して実験装置の結露防止策などの新しいアイデアが生まれ、実証できた。よって、本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度におこなった応用例以外にも様々な応用のアイデアがある。例えば、受信機較正用の黒体放射源の冷却は従来は非常に困難であったが、本研究での成果物RT-MLIを使えば容易に実現できる。これらの実証実験をおこなう。
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Causes of Carryover |
本年度におこなった以外の様々な応用例(例えば、受信機較正用の黒体放射源の冷却)を実践するため、使用を控えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究での成果物RT-MLIを使い、受信機較正用の黒体放射源の冷却試験をおこなう。それに用いる治具等の製作や部品を購入する計画である。
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