2013 Fiscal Year Research-status Report
有機地質学的分析を用いた縄文遺跡出土アスファルトの原産地推定
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25610147
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| Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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| Research Institution | Hirosaki University |
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Principal Investigator |
氏家 良博 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (50151858)
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| Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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| Keywords | アスファルト / 縄文遺跡 |
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| Research Abstract |
縄文遺跡から出土するアスファルトの原産地を推定するためには、天然で産出するアスファルトとの物理・化学的特徴の比較検討が必要である。そのために北海道の石狩油田産原油、青森県の前田野目産原油及び蟹田産アスファルト、秋田県の船越油田産原油、豊川油田産アスファルト及び駒形産アスファルト、新潟県の黒川油田産原油、新津油田産原油及び頸城油田産アスファルトを現地採取等で集め、人工的に加熱して揮発分を除去し、遺跡出土アスファルトと同様の固さのアスファルト試料を作成した。
縄文遺跡出土アスファルトとしては、青森県の川原平遺跡と大川添遺跡、秋田県の大鳥井山遺跡、神谷地遺跡、大畑台遺跡、延命寺台遺跡、漆下遺跡、白坂遺跡、向様田遺跡及び中山遺跡、新潟県の大沢谷内遺跡から採取した27試料を分析した。
アスファルトの分析法としては、石油根源石の評価法として確立されている以下の3種類を採用した。その起源物質に強く影響される元素組成とマセラル（顕微鏡的な石炭の構成成分）の組成、アスファルトが生成された時の地下の温度や時間に強く影響される反射率である。元素組成は元素分析装置で調べ、マセラル組成は反射顕微鏡で測定し、反射率は反射顕微鏡に顕微分光光度計を接続して測定する。 以上の3種類の分析結果をクラスター分析にかけると、天然アスファルトは4つのグループに分けられる。すなわち、人工的に加熱していないグループ、加熱したグループ、アスファルト鉱（揮発分がほとんどない固体）、採取状況や保存状況の不明なグループである。これらのグループは地域的または時代的な結びつきを直接示すものにはなっていない。その原因は天然アスファルトの地域的なデータ不足と思われる。
個々の縄文遺跡出土アスファルトの分析データをこれら天然アスファルトのクラスター分析に加えて、どのグループに所属するかを調べたが、原産地を特定するには至らなかった。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の平成25年度に予定していた三つの研究計画について個別に評価すると以下のようになる。
（１）天然原油を加熱して人工的にアスファルトを生成して、その物理・化学的特徴を調べること：6試料の原油を加熱してアスファルトを生成し、元素組成、マセラル組成、反射率を測定した。加熱条件による特徴の変化については、結論を導くには至っていない。
（２）従来、縄文遺跡出土アスファルトの原産地といわれてきた秋田県の豊川油田及び駒形に行き、試料を採集し分析すること：ほぼ完ぺきに実行できた。
（３）東北地方の縄文遺跡から出土するアスファルトの分析：11遺跡、27試料を分析したので、ほぼ計画通りと考える。
以上のような進捗状況であるので、順調に研究は進んでいると考える。
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| Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は研究実施計画に沿って順調に研究成果を上げることができたので、平成26年度も当初の研究実施計画に沿って研究を進めていく予定である。当初の平成26年度研究実施計画にないものとしては、追加的に天然アスファルトのさらなる調査と分析を行う。北海道、東北地方から近畿地方まで、さらには樺太地域の縄文遺跡から出土するアスファルトの原産地推定をより確実なものとするには、比較対象の天然アスファルトの試料数をさらに増やす必要がある。特に、地理的にできるだけ広い範囲の産地から天然アスファルトを採取して分析することが重要と考えており、平成26年度前半にこれらの調査研究を行う予定にしている。後半には、これまでの研究成果全体をまとめ、アスファルトからみた縄文時代の交易経路を解明することが最終目的である。
縄文遺跡から出土するアスファルトの研究はあまり前例のないものであるので、平成26年度はこれらの研究成果を積極的に学会等で公表し、研究精度の向上を図る予定である。
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| Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の分析は、申請者が従来行ってきた有機地質学の研究での分析と内容は同じであるので、使用する消耗品等はほとんど重なる。研究室に蓄えてあった消耗品を本研究の分析に利用することができたために、当初予定額より支出額が低くなった。
繰り越した額は56,312円であり、次年度配分額600,000円と合わせて、当初の予定通り旅費及び消耗品等に使用する。具体的には、分析用試料の採取や研究成果の発表のための旅費、及び元素分析と反射顕微鏡観察のための薬品・ガラス器具等の消耗品が主要なものである。
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