2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25610163
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山中 千博 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10230509)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | メタン菌 / 誘電分光 / 嫌気雰囲気測定 / 嫌気性古細菌 |
Research Abstract |
地球深部には陸上・海洋の生物の10~200倍の嫌気性微生物が地下生物圏を形成しているといわれている。地下生物圏探査は掘削を行い、採取したコアを分析するのが一般的であるが、培養の難しい嫌気性微生物の実体はよくわかっていない。そこで、本研究は非破壊でその場観察が可能な誘電分光法に着目した。すなわち、試料に交流信号を与え、その応答信号の周波数特性を分析することによって、地下生物圏探査に応用することを考えた。 本実験では、まず嫌気状態を保持したまま温度可変誘電分光測定を行えるチャンバーを製作した。標準試料を用いた数回の試験のあと、4端子電極を試料にセッティングするための装置開発を合わせ行った。密閉容器に従来型の4端子電極を配置したもの4種、およびセプタムを介したガラス管内に微小電極を挿入する形式をテストした。また電極の構造と高周波ケーブルのセッテイングは、結果的に得られる誘電スペクトルに影響があるため、同一シリーズの実験で変化があることは好ましくない。そのため、微小4電極をガラス板に蒸着した電極を安定して保持できる治具を作成し、また電磁シールドを施した高周波伝送部を加えることにより安定的な測定が可能となった。 バイオリサイクル施設よりメタン菌を含む嫌気性生物の混合サンプルを採取し、測定試料とした。これを二酸化炭素、窒素および水素ガス混合雰囲気で試料処理し、嫌気性生物の混合サンプルとして測定を行った。100kHzから30MHまでのインピーダンス測定から600kHz付近で有機物に由来すると思われる誘電スペクトルのピークが見られた。また、15℃、30℃、55℃に保持した場合の系のインピーダンスの時間変化を測定することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のハードルは、嫌気雰囲気における試料操作と、温度環境を自由に設定できる誘電分光装置の成否にあった。このため、嫌気性の操作ができるグローブボックス および真空操作も可能な小型のグローブボックスを用意し、その内部で試料が操作できる環境を用意できた。誘電スペクトルもこのボックス内で測定できるが、今年度は、グローブボックス内で処理した試料を、4端子電極を装備した密閉容器、およびガラス管に充填し、誘電分光装置にとりつける治具、および電磁シールドを合わせることで安定的な測定が可能となったことが大きな成果である。また飼料供給に関してもメタン菌培養施設関係者と協力関係を結ぶことができ、必要な際に材料試料を手に入れることが可能となった。 ガラス4端子電極を装備した密閉ガラス管を用いれば、少ない試料量で、再現性の高いスペクトルを得られることがわかった。この方式では、温度環境も自由に設定できるほか、 高温状態でも試料水分の移動がない(測定される槽とリザーバーが同一)ために、安定的に測定が可能である。ただし、完全なバッチ処理系であるために、長期の培養は可能となっていない。実際メタン菌含有試料で2週間程度の連続測定が可能となり、活性が失われるまでの測定が可能となっている。ただし、菌の濃度や発生ガスの正確な同時定量はいまのところ可能ではなく、この点を踏まえておおむね順調であるとした。
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Strategy for Future Research Activity |
1)技術的問題:密閉容器を用いて温度可変な装置を作成したが、高温での測定では試料が蒸発して、水分がリザーバーに移動するなどの問題点が出てしまい、長時間の安定的測定は難しかった。一方で、ガラス微小電極を用いれば、少ない量の試料で、綺麗なスペクトルが得られるため、手間はかかるが、別の容器で温度を管理し、測定時のみ試料セル入りの密閉容器に移動して測定することは可能である。密閉容器と従来型電極を用いた装置は、常温常時測定は可能であるが、試料量が必要で、現状では、スペクトルの再現性にも問題がある。このため、さらなる改良が必要である。小型ピアース管と微小電極を用いた装置では、試料の電気化学測定以外にも、試料から発生するガスの発生量も測定できる。しかし高圧になると、電極を設置する際にセプタムに空けた穴から発生ガスが漏れ出してしまう欠点があり、2重管構造とする必要がある。 2)嫌気性菌の活動度との相関:現在までの測定は、試料を密閉容器に閉じたバッチ型としているため、2週間程度が限界である。酢酸や水素添加などを行えば、長期の培養も可能となる可能性があり、これを行うことにより、菌の活動度と誘電スペクトルの相関を明らかにする必要がある。また、遠心分離などで、メタン菌を単離した系をもちいて、メタン菌およびそれ以外の混合物系とのスペクトル差異を明確にする必要があろう。このための方策を検討中である。また構想しているFPGAを用いた可搬型誘電装置については、現在進めている実験測定条件を確定してから推進するべきと判断している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
サブテーマとして、可搬型携帯機器開発を予定して新しいFPGA基盤を購入予定であったが、実質のテストは既存のものを利用できたことと、計画進行の上で、メタン菌測定の測定条件を明確にしたうえで購入した方がよいと判断したため、その予算相当分を次年度繰越とした。 平成26年度は、\650,000のうち間接経費\150,000となり、くり越し\94,161と合わせた594,161を予算とする。旅費\120,000,人件費\55,000,投稿費用他\85,000,物品費\334,161を計上する。物品費は微小電極製作費、およびガス濃度検知管、薬品、窒素ガスなどに充当する。
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