2013 Fiscal Year Research-status Report
巨視的機能発現を目指した金属ポルフィリン・配位子導入ゲル集積システムの構築
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25620099
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山口 浩靖 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00314352)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヒドロゲル / ポルフィリン / 配位結合 / マクロスケール / 接着 / 金属 / 軸配位子 / 可逆性 |
Research Abstract |
平成25年度は本研究において中心的な役割を果たす材料合成を行った。鉄ポルフィリン又はL-ヒスチジンをそれぞれ導入したポリアクリルアミドゲルを合成した。これら2種のゲルの合成は、最初にN-スクシンイミド誘導体をアクリル酸モノマーに修飾し、これをアクリスアミド、ビスアクリルアミドとの共重合により行った。鉄ポルフィリンゲルは、プロトポルフィリン鉄錯体内の2つのカルボン酸の片方にアルキルジアミンを反応させて末端にアミノ基を導入し、先に合成したプレカーサーゲルと縮合反応を行うことにより合成した。合成した2種類のゲルを水中で振とうさせて、2 種類のゲルが接着するか否かを確認した。鉄ポルフィリンと軸配位子(L-ヒスチジン)のゲルへの導入率を可変させたところ、両成分の導入料増大に伴い、ゲルの接着力が強まることがわかった。また、その接着力は、接触する2つのゲル界面の面積に比例することがわかった。一方、フリーベースポルフィリン(金属がポルフィリンの中心に無いもの)を固定したゲルとL-ヒスチジンゲルは接触させても2つのゲルが固定化・接着することはなかった。フリーベースポルフィリンゲル中のポルフィリンにメタル(ここでは鉄)イオンの導入反応を行ったところ、最初は接着していなかったゲルが、ポルフィリンのメタレーション反応が進行するにつれて接着するようになった。ポルフィリンの中心元素である鉄にヒスチジンが配位下結果、2種のゲルが接着したと考えられた。ゲルの集積体に過剰量のヒスチジン水溶液を添加するとゲル集積体は解離し、ヒスチジン水溶液を取り除くと再び2種のゲルが接着するという可逆性が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の計画段階における予測の通り、2種類のヒドロゲル間に特異的な相互作用がもたらされるような因子をゲルにそれぞれ固定することにより、これまで分子レベルで観察されてきた分子間の相互作用を材料の接着現象として利用することができた。配位結合を介した材料接着であり、可逆的に高分子材料が接着・解離することがわかった。これらの基礎研究結果をもとに、金属ポルフィリンと軸配位子との組み合わせに限らず、アポ酵素と補因子をそれぞれ導入した高分子ゲルや、合成配位子を固定したゲルを用いて金属イオン添加により高分子ゲルが集積するようなシステムの構築ができるのではないかと期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
本システムにおける2種類の高分子材料は配位結合、つまり非共有結合を介して接着している。この結合は競争分子(ここではヒスチジンの水溶液)を添加雨することで、可逆的にゲル集積体を剥離することが可能なシステムとなった。この可逆的な材料集積・解離は競争分子のような化学種のみならず、pHや光、温度等を可変することでも制御することができると予想される。これらの材料の接着・剥離を起こすことができる制御因子を調査することにより、高機能材料創製へと展開する予定である。さらに現在の鉄ポルフィリンとヒスチジンの組み合わせに限らず、金属配位結合を形成可能な金属種と配位子との組み合わせで、高分子材料の接着が起こるかどうかを観察し、高分子材料の集積後に期待される機能発現に注目する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、本研究に使用するポルフィリン誘導体、ならびにこのポルフィリンの金属錯体を導入したヒドロゲルの合成と、その量産には平成25年度交付金額のほとんどを投入する必要があると予想していた。しかし研究の進展に伴い、天然のプロトポルフィリンを原料として、ここに鉄イオンを挿入する反応を行うことで収率良く本研究に用いる鉄ポルフィリン必要量を得ることができた。さらにこのポルフィリンをヒドロゲルに導入する際の部分的アミノ化においても問題無く実験ができたために、本研究の初期に必要な材料への支出を抑えることが可能となった。しかし、量産をすることができておらず、次年度に様々な組み合わせの金属錯体と配位子を導入した高分子材料合成を行うことになった。そのために次年度に量産に必要な金額を確保しなければならなくなったため。 ポルフィリン誘導体を高分子材料に固定するときに、長さの異なるスペーサー分子を用いる。導入される金属ポルフィリンのヒドロゲル中での分子運動性(自由度)によってゲル接着挙動がどのように変化するかを観察する。鉄のみならず様々な金属種を導入したポルフィリンを合成し、配位子導入ゲルと接着力制御、および高分子材料の特異的接着に伴う機能発現に注目する。特に亜鉛ポルフィリン固定化ゲルを用いて、ゲル界面での光化学、電子移動反応を中心に研究を展開する。
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