2014 Fiscal Year Research-status Report
巨視的機能発現を目指した金属ポルフィリン・配位子導入ゲル集積システムの構築
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25620099
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山口 浩靖 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00314352)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ポルフィリン / 金属錯体 / ヘム / 酸化反応 / ゲル / 接着 / 配位結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き鉄あるいは亜鉛ポルフィリンを結合したポリアクリルアミドゲル並びにL-ヒスチジンゲルとの水中での接着現象に注目した。鉄ポルフィリンと軸配位子(L-ヒスチジン)のゲルへの導入率を可変させて、それぞれのゲル間の接着挙動を観察した結果、各機能性分子導入率の増大に伴って接着力の増大が観察され、再現性を確認できた。 本年度は天然酵素の一つである西洋わさびペルオキシダーゼ (HRP)を熱応答性合成高分子の一つであるN-isopropylacrylamide (NIPAM) に導入することで、天然高分子特有の機能に人工系による機能を付与した、新たな機能性高分子材料の開発を試みた。全モノマー濃度を1M とし、NIPAM (98 mol%), N,N'-Methylenebisacrylamide (1mol%) , アクリル酸 (1 mol%) から、架橋度1%のNIPAM-アクリル酸共重合ゲルを合成した。40 mM 1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl) carbodiimide hydrochloride(EDC)、40 mM N-hydroxysuccinimide (sulfoNHS) をゲルに添加したのち、HRPを加えて、HRP 導入NIPAM ゲルを合成した。合成したゲルは、20℃では0.21 g であったが、37℃では0.15 g に収縮する熱応答がみられた。ゲルに修飾した触媒の特性を評価するため、HRP 導入NIPAM ゲル、過酸化水素0.2 mM存在下、ピロガロール18 mM の酸化反応を観察した。HRP 修飾ゲルを浸した基質溶液の温度が20℃のときと37℃のときでは異なる反応挙動を示すことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は 接着したゲルが天然のカタラーゼやペルオキシダーゼのような酸化還元酵素と同様の触媒能を有するか、天然酵素とは異なる触媒能を有するかを検討する計画のもとで実験を行なった。共重合するモノマーとしてアクリルアミド以外に様々なモノマーとしてイソプロピルアクリルアミドを選び、触媒反応の基質となる化合物との相互作用を調整した。アクリルアミドとイソプロピルアクリルアミドではゲルに導入した酵素の反応性が異なることがわかり、予測通り、天然酵素に合成高分子を導入することで基質の酸化反応挙動が異なることを見出しており、計画通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本ゲル接着系ではゲルを構成しているポリマー鎖の密度と動きの自由度を変えることができる。構成成分(モノマー単位)や架橋剤の濃度を可変することにより、金属ポルフィリン近傍の活性中心・反応中心となる空間を自由に調整することができる。この空間は溶媒や温度、pH 等の外的要因によっても制御可能になると予想されるため、同一材料でありながら反応の種類に応じた最適化が可能になると考えられる。このように至適温度や至適pH を有する天然酵素とは性質を異にする「人工酵素」の創製を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度は天然酵素であるペルオキシダーゼを高分子ヒドロゲルに導入して天然高分子と合成高分子のハイブリッド化にともなう機能発現実験、ならびにこのペルオキシダーゼからヘムを抜き出し、アポタンパク質とヘムをそれぞれ別々の高分子ヒドロゲルへ固定することで、アポタンパク質と補因子のドッキングによる不均一触媒創製を行う実験を計画していた。研究の進展に伴い、前者のハイブリッド化における詳細検討により合成高分子の役割を解析することになった。一方、後者のアポタンパク質とヘムの各成分分離も同時進行しているが、現時点では少量を用いた試行実験である。今後、量産した上で合成高分子へ化学反応を介して固定することになる。そのアポタンパク質と補因子分離のための消耗品購入の費用を次年度に確保しなければならなくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ペルオキシダーゼのみならず、補因子を有する酵素に対してアポタンパク質と補因子への分離操作を行い、それぞれを高分子ヒドロゲルに導入する。この高分子ゲルも、今回検討したイソプロピルアクリルアミド以外に、様々な親水性・疎水性モノマーを使用することで、反応基質との相互作用が変化し、酵素反応の挙動が変わると予想される。そのため、次年度使用額は天然酵素の用意と成分分離・精製実験ならびに様々なモノマーからなる高分子ゲル合成実験に必要な試薬・消耗品の購入に充当する。
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